白くいられない
好きな人が出来たの。
弾む様な声と共に心底嬉しそうな笑顔を見せた撫子、その恋心が本物である事は嫌でもわかる。それに肯定できない程、情けなくはない。大切な双子の妹の恋路を応援してあげるのが姉として今出来る事なんだろう。そう分かってはいるものの、頭と心がバラバラになりそうなぐらいに感情は乱されていた。
「薫子、ちょっといいかしら?」
掛けられた声にふと、我に帰る。嵐の声に誘われて、そのまま席を立つ。付いて行った先はKnightsの根城となっているスタジオ。確かに、此処なら今は人が居ない。嵐はそれを察して連れてきたのだろうか。
「どうしたの、心ここにあらずって顔してるみたいだけど」
「……あの」
「…薫子?」
ふらふらとした足取りで嵐との距離を詰める。そのまま倒れ掛かる様に自分の身を嵐に預ける。何も言わずに受け止めてくれる優しさが心に痛い。このぐちゃぐちゃのままでいる想いを吐露してしまってもいいのだろうか。
「…撫子が、好きな人が出来たんだって」
「あら、撫子ちゃんが?」
「それって嬉しい事なんだけど、でもわかんなくて。素直に祝ってあげられなかった自分が情けなくて、嫌で、嫌で…」
嵐のシャツを掴む両手に力が篭る、皺になってしまう申し訳なさを思いながらも、離す事が出来ない。
「私から離れて行って欲しくない、姉として失格なんだ…」
じわりと、視界が歪む。情けない、本当に。
「お姉ちゃんは辛いわねェ、薫子は優しすぎなのよ」
「…んなんじゃ、ない」
「幸せになって欲しいのよね、撫子ちゃんに。妹の為に泣いてあげる事が出来るのも優しさだと、アタシは思うわよ」
大好きな、大好きな妹。幸せになって欲しい、あの子が好きになった人と。あんなに優しくて大切な妹なのだから。
「アタシはあなたのお姉ちゃんで、彼氏なんだからね。こういう時ぐらい頼りにさせて頂戴?」
頭に乗せられた手が優しく髪を撫でる。ずっと耐えていた涙がぼろぼろと零れ落ちる。その優しさに縋って、泣きつくことしか出来なかった。