迷いも美学


「零と出会えなかったら死んでたかも」
そう一言軽く零した瞬間、割と強い力で頭を叩かれる。
「痛いんだけど!?」
「冗談でも言うんでない」
全く、と呆れたような表情を浮かべる零に対して、相良は口を尖らせる。
「…冗談じゃなくて本気だったんだけど」
零には分からなくて当たり前の事に対して、理解や同意を求めるのは間違っている事は分かっている。それでも、一度終えた人生から授かった御陵相良としての生き方の道標となったのは紛れもなく朔間零と言う存在だ。それだけ彼の側にいる事で狭い世界で生きてきた相良にとって、与えられ広い世界から得た知識は多い。
「お主が本気なら、我輩と共に長生きしてもらおうぞ?」
「嫌というまで生きてあげるよ」
その分、色んな世界を見せてね。死ぬまで生きるから。