幼い光


客席から見るValkyrieの姿は、いつも側にいるのに全然違った様に目に映る。
キラキラと、輝いていた。格好良い、口から零れ落ちた言葉は感嘆の息と共に溶けていく。

舞台後、姿を消した義兄を探しに行く。みかの静止を振りきってしまったことは悪いとは思うが、帰ってくるのを待っていられなかった。
熱気冷めやらぬ盛り上がりを続けるステージから少しでも離れると、静寂と夜風が心地良い。少し歩いた噴水の所、探し人を見つけた。
「宗兄」
座り込んでいた宗が顔を上げる。一人で出歩いた事を怒られるかな、と少し思ったが、実際はそんな事もなく、りくの名を呼んだ。
どうやら噴水にいた先客は舞台に連れて行かれたのか姿が見えなかった。今ならいいかな、そう思い義兄の隣に腰を下ろす。
「格好良かったよ、宗兄もみかも」
もっと見たかったのが正直な意見、おんなじ舞台に立ちたいと思ったのも本心。それだけ人を惹きつけ魅了する持ち主である事を再確認させられた。
義兄からの返事はないが、ぽつりぽつりと感想を呟く。別に、ひとりごとでいい。この想いが少しでも伝われば。
こつん、とりくの肩に宗の頭が触れる。表情は見えないが、普段守ってくれている頼れる義兄がこうして寄りかかってくれている。例えどんな事でも、少しでも、力になれたらいい。