聖人の魚


代わり映えのしない日常を変えてくれる何かが欲しい。些細な変化を望んで入った学園も輝かしい煌めきもなく、腐敗を辿る一方。此処にも求めていたものは何もない、同じ様な日々が続いていくのにはもう飽きてしまった。
つまらない、夜の砂浜を歩く。一定のリズムで寄せる波が、一度大きな音を立てた。なんの気もなく視線をそちらに向けると、先程迄は其処になかった海の中に立つ一つのシルエット。
「え…」
人、確かに人がいる。
「こんばんは」
月明かりが襟元にまで伸びた濡れた髪をキラキラと照らす。格好からして同じ学校の制服を身に纏う彼から視線が逸らせない。その存在に引き寄せられるよう、海辺へと足を進める。この人の事を知りたいと、そう心の中で想いが募っていく。