夜をくるむ温度


眠りに着くまでの少しの時間を共に過ごす。昔から変わる事なく自然と続けている兄妹での決め事を今日も律儀に守る凛月の表情が睡魔に敗北しかける。ここらで潮時かな、と思いベッドから立ち上がろうとする瑠璃の腕を凛月が掴む。
「るう…、今日はこのまま…」
そう一言呟くと、凛月の身体は重力に逆らう事なくベッドへと沈んでいく。腕を引かれた瑠璃の身体もスプリングの音を立てて凛月の隣へと沈んだ。むにゃむにゃと小言を述べる兄はもう既に夢の中だが、瑠璃の腕を掴む手はしっかりと力が込められいる。それが何だか面白くて、兄の寝顔を眺めながら笑みを浮かべた。
「ずっと一緒だよ、ね?凛月兄」
お互いの黒髪が混ざり合う。気持ち良さそうに寝息を立てる凛月の寝顔を目に焼き付けて、静かに目を閉じた。