凛
なにも上手くいかない日はある。上司に怒られるわ、何も無いところで躓いて怪我しちゃうし、電車が遅れて帰りもぎりぎりになっちゃって自己嫌悪してたら、帰ってきた凛が顔を見た瞬間「飯食いに行くぞ」と言うからびっくり。
プロとしていつもは食事にも気を使ってるのに。凛に手を引かれるまま近くのフレンチへ行って、凛の運転する車でよくお兄さんと行ったという海辺へと行った。凛の隣に腰かけて、そっと肩に頭を乗せる。いつもは「ちけえ」とか悪態をつくくせに、今日は何も言われなかった。穏やかな月明かりに照らされた海面が揺らぐ。生温い潮風が気持ちいい。
「凛、ごめんね。こんなだめな彼女で」「……お前がだめなのは元々だろうが」「ひどいなあ」「だめでもゴミでもなんでもいいから、お前は馬鹿みたいに隣で笑ってりゃいいんだよ」「……へへへ、うん。凛すき」「……ん、」「あ、照れた」「照れてねえ殺すぞ」「きゃーこわーい」