2

笑い話であればよかったのに

「それでさー、」


良く話題が尽きないなあと、隣で楽しそうに話す上鳴を見てぼんやりと思う。
駅のホームで偶然彼と居合わせてからずっとこの調子だ。会話が途切れないのが凄い。

話の内容は実にくだらないが、つまらない話ではなく、むしろ聞き専でも楽しく聞けるもので、どうやら私の反応を確認しながら興味のありそうな話題を提供してくれていることに気づいたのは、つい先程だ。素直に凄いと思う。

そういえば普段から彼の周りには人が集まっている事が多かったなと思い出した。

彼と知り合ったのは中学の入学式の日だったが、話をするようになったのは中学3年生の同じクラスになってからだ。それまでは駅のホームであった時や、廊下などですれ違う時に挨拶を交わす程度の間柄だった。

クラスメイトになってからは、休み時間の時、大体彼の周りには誰かしらいて、楽しそうに話したり、時折巫山戯あったりして、笑顔に溢れていたのをよく見かけたっけ。

話の引き出しの多さといい、相手に合わせた会話といい、コミュ力が高いというのもあるだろうが、人を良く見ているんだなと感心した。上鳴自身の明るい人柄の良さもあり、非常に話しやすい。私も見習わねばなるまい。

まあ、だとしても朝から元気過ぎるかなとは思うが。


こちとら早起きでめちゃくちゃ眠いんやけどな。何時に起きたっけかな。・・・いや思い出したくないな。登校にかかる時間を調べ、起きる時間を逆算して出した時、え、この時間に起きんの?まじで?正気か?と戦慄したし。思い出したら寒気してきた。


・・・やばい、気を抜いたらすぐにでも欠伸がでそう。

1人だったら躊躇うことなく欠伸をするが、残念な事に今は上鳴が私の為に会話を振って話をしてくれている途中なので、みっともない姿を見せる事は出来ない。

そんな姿を見せたら、話がつまらなくて欠伸をしてまったのか?と誤解を生んでしまうかもしれないし、話をしている相手に対して失礼だ。それだけは避けねば。


「・・・春霞、もしかして眠いん?」


問われた言葉に瞬きする。本当に良く人を見ているんだな。頑張って欠伸を噛み殺していたのに秒でバレてしまった。

というかなぜバレたし。基本的に仲の良い友達以外には猫をかぶっているので、出来るだけ笑顔で相槌うってたし、眠そうな顔をしてたつもりは全然なかったんだけど…。

猫をかぶっているというと誤解を生むかもしれないが、別に好きで被っている訳では無い。単に私が人見知りなだけだ。

普段は無気力に生きているので、無表情でいる事が多いのだが、人見知りを発揮すると、笑顔を浮かべて当たり障りなく会話してしまうのだ。コミュ障が憎い。

人との関係を円滑に進めるにあたり、笑顔や少しの八方美人さは必要だと思ってるから、取り繕うのがたまに面倒ではあるものの、この癖に忌避などはない。個人的な意見ではあるけど。人によってはそれって上辺だけの関係じゃんって思われそうだけど。

上鳴からの鋭い指摘に内心びっくりしつつ、特に隠すことでも無いので、力無く笑って肯定する。


「すっごい早起きしたからね。ちょっと眠いかな。上鳴君は?眠くないの?」

「ん〜そんな眠くはねぇかな?むしろ楽しみが勝って落ち着かない」


ずっとそわそわしてるもんな。言わずとも分かったよ。

遠い目になりそうだったが、その気持ちを抑えて、そっか、と微笑んだ。すると上鳴の表情があからさまに緩む。


「はー・・・まじで笑った顔可愛い」


声に出てるよ。上鳴。









上鳴と話していたら、いつの間にか雄英高校に到着した。ずっと話していたからか、なんだかんだであっという間だった気がする。退屈せずに済んだし、眠気も割とどこかへとんで行った。

それにしても、受験しに来た時にも思ったけど、校舎ほんとでっかいなー。ヒーローになる為の設備やらなんやらで色々あるんだろうけど、だとしても高校の校舎にしてはめちゃくちゃでかい。てかでかすぎるし、校舎に見えない。

今日から毎日ここへ通うことになるのか。・・・早起き頑張らないとな・・・。早起きは苦手だ。


「はーっ、まだ信じらんねぇ・・・!今日からここの生徒だなんてさ。夢なら覚めないでほしいぜ」

「本当にね。私もまだ信じられないや」

「だよな〜。・・・はぁ、なんか緊張してきた。さっさとクラス分け見に行くか」


一瞬だけ上鳴は表情を強ばらせたが、すぐに切り替えて、陽気に校舎の方へと足を進める。

切り替え早いなあ。

行こうぜ!と朗らかに笑う彼のその後ろを、私は頷いてついて行った。