3
君に逢えるような気がした
「マジで超嬉しい・・・」
天を仰ぎながら、そう言って顔を両手で覆い、涙を流して喜ぶ上鳴。一緒のクラスになれたのが相当嬉しかったようだ。
これだけ喜んでくれるとこちらも嬉しくなる反面、ちょっと、いや大分恥ずかしい。悪い気はしないけど、いちいちリアクションが大袈裟過ぎるんよ。思わず知らない振りをしかけたわ。
「大袈裟だよ」
「全っ然大袈裟じゃないから!」
そうかなあ?いまいち納得がいかない。
だって一緒のクラスじゃなかったとしても、合同授業等があれば、一緒に授業を受ける事も出来るし。同じ高校に通う事になるのだから、お昼を一緒にする事だって出来る。今朝も登校中、上鳴にこれから一緒に登下校しようなと、ちゃっかり約束も取り付けられていて、疎遠になるような事柄ではないはず。
そう言ったら凄い剣幕で上鳴は私に詰め寄ってきて、わかってない!マジで分かってないな、春霞は!とむしろこちらが叱られた。目がマジだった。こわ。
彼の剣幕に若干戸惑いつつ、引き気味に頷く。私の返事に満足したのか、上鳴は離れていった。胸を撫で下ろし、足を止める。なんとか目的地の教室まで辿り着いた。
廊下に張り出してあった座席表を確認してから教室へ入る。厳密には入ろうとし、開口一番にメガネを掛けた、いかにも真面目そうな男の子から、いきなり「おはよう!」と大きすぎる挨拶をされた。
「お、おはよう」
び、びっくりした・・・。驚き過ぎて思わず後ずさっちゃったよ。あ、ぶつかってごめん上鳴。
しかも足まで踏んじゃってごめんね。
・・・あ、もしかして足痛かった?すごく痛がってるね?今のは本当にごめん。
「私立聡明中学の飯田天哉だ!これから同じヒーロー科として切磋琢磨していこう」
「丁寧にありがとう。春霞佐保といいます。こちらこそよろしくね。・・・えっと、一緒にいるのが、」
「ううっ、上鳴電気ですぅぅぅ」
「あ、あぁ。よろしく頼むよ。・・・春霞君。彼は何故泣いているんだ?」
飯田君にそう尋ねられて、とりあえず誤魔化す様に笑っておいた。
・
・
・
無事飯田君との挨拶を終え、自分の席へと向かおうとして足を止める。
あれ、席どこだったかな。自分の記憶力のなさに慄く。上鳴に聞こうとしたら、いつの間にか喜色を浮かべた笑みで、俺の席はここかー!と元気に自分の席へと向かっていた。気持ちを切り替えることが出来たらしい。情緒が不安定すぎる。泣き止んでよかったけど。
だけど薄情にも私を置いてスタスタと自分の席へ向かってしまったのは許せない。恐ろしく冷たい男である。(理不尽)
諦めてもう一度座席表を確認してこよう。
そう思って廊下に出ると、丁度誰かが席を確認していたのか。その人とぶつかりそうになった。
あっ。思わず小さく声が漏れる。ぶつかりそうになったからではない。その人物を、彼を、私は知っていた。
受かっているだろうなとは思っていた。思っていはいたが、まさか同じクラスとは。
白と赤のツートーンの髪色をしたサラサラ髪に、左目の方に火傷の痕があるが、それでも目を惹く端正な顔立ちの男の子。
前髪の下から覗く、左右で違う色をした気だるげなオッドアイが、緩やかな動作でこちらを見た。視線が交差し、彼の瞳に私が映る。一瞬だけ、彼の瞳が私を捉えて、目を見張った気がした。もしや彼も私の事を覚えている・・・?
冷めたように見えるが、その瞳の奥で何かしらの強い光を帯びている気がして。不思議と視線を奪われる。
「お前、・・・入試の時の、」
「ひ、久しぶり?って言えばいいのかな?お互いに受かってよかったね」
まさか覚えられているとは思わなかった。ちょっと感動。覚えているのは私の方だけだと思っていた。
正直入試の時の彼は、・・・なんというか鬼気迫るものがあったというか。周りに関心を示していなかったように見えたから。
「同じクラスなんだね。名前聞いても良い?私は春霞佐保」
「轟焦凍だ」
た、端的〜。確かに名前を聞いたけど、本当に名前だけ言うとは。そっけなさすぎてびびるわ。
初対面だとこんなものなのかな?私の周りにいる人、コミュ力高い人ばかりだから、このタイプの人は初めてでちょっと戸惑う。私も人見知りでコミュ糞だからね。相手に話してもらえないと会話広がらないのよ。仲の良い人だったら平気なんだけどね。
「轟君か。教えてくれてありがとう。これからよろしくね」
「あぁ、よろしく」
挨拶は交わせたから会話はとりあえずこれで終了で良いだろう。時には諦めも肝心だ。
そんな事よりはやく席につきたいしね。彼もきっとそうだろう。
そう気持ちを切り替えて、いそいそと席順を轟君の隣で確認する。
えーっと、私の席は、窓際の前から2番目か。轟君は、・・・残念、私の席からは遠いな。入試の時とは違って雰囲気的に優しそうだし、挨拶した感じ静かだけど物腰も柔らかいから、席が近かったら助かったのにな。平和そうで。まあでも席は覚えた。もう忘れないぞ。
意気揚々と再度教室へ入る。そしたらまた飯田君に勢い良く挨拶をされ、びっくりした私は、今度は轟君の足を踏んでしまったのだった。
Back Top