夢むすび
日が昇って間もない薄暗い空を眺めながら、縁側に一人座りぷらぷらと足を揺らしてみる。差し込むまでは無いにしろ朝の空気と時折吹く風は優しいものではなく、半纏を布団に残してきたのが悔やまれた。まだ冴えないふわふわしたままではわざわざ取りに戻るのも億劫で、寒さでその内目が覚めるだろうなんて悠長に考えていると、
「珍しいですね、こんな時間に。」
背後からの声に徐に振り返ると、戦闘装束に身を包んだ堀川がいた。昨晩寝る前に見送った遠征部隊が帰る時間だと気づき、時計を見ていなかった私はここでようやく今の時間を知った。行く前に仮眠を取っただけだろうにその目は爛々としていて、朝日に反射した浅葱色は少しばかり眩しい。
「お帰り、堀川くん。」
「ただいま。もしかして起こしちゃいましたか。」
しゅるりとマフラーを外しながらこちらへ歩み寄った彼は私の隣へ腰を下ろした。これが内番服であればもう少しくっついて座れるだろうに、今は装束分の数センチがもどかしい。
遠征部隊が帰る前から起きていた旨を伝えると、自分が起こしてしまったわけではない事にほっとした表情を見せる。外したマフラーを私の首にゆるりと巻き付けながら改めて尋ねてきた。
「眠れなかったの?」
「何回も目、覚めちゃって。」
寝つきが悪いから起きてきたと言うと、そっかと呟いた彼がこちらを覗き込み視線が交わった。相変わらず目は煌々としていて、でも今度は日が差す方から見ているから反射しているなんてことはないはずなのに、それでもやはり眩しく見える。寝ぼけ眼にはそれが少しきつい。伸びてきた彼の手から逃げることもせず、するりと目元を撫でられた。手甲をつけたままの手はひんやりとしていて、思わずぷるりと震える。
「クマ出来ちゃってますよ。」
「えぇほんと……?」
完全なる寝不足の様にますますテンションが下がった。
「朝ごはんまでひと眠りするつもりだけど、主さんも一緒に寝る?」
「うん。」
じゃあ行こうか。そう言って先に立ち上がった彼がこちらに差し出した手を取る。
「うわ、手冷たい。一体いつから縁側にいたんですか」
「わかんない。一時間くらい?」
「もう、風邪ひいても知らないですからね!」
あたたかくして布団に入ってくださいね、という彼が一緒であれば安眠できる。その安心から段々と押し寄せるご無沙汰な睡魔と闘いながら、手を引かれるままに自室へと歩き出した。