始まりの音
昨日、いつも行く公園の近くで二匹の子猫を見つけた。二匹ともサビ猫で、近くで見れば見るほど綺麗な猫だった。その時は、いつもの猫たちの分しか猫缶を持ってなかったから、「また明日来るからな」と頭を撫でて帰った。
今日はサビ猫二匹の分も猫缶を持って公園に向かう。
昨日見つけた場所には、サビ猫二匹を抱きかかえている女の人の姿があった。「よしよし、可愛いね君たち」とそう言いながら二匹の頭を撫でていた。
その姿を俺は後ろからじっと見ていることしかできなかった。
すると女の人は後ろにいた俺に気づいて少し驚いた顔をした。
うわ、どうしよ。完全に俺ヤバイ奴だろ。普通ならここで声かけるんだろうけど俺には無理。初対面の人と話すこと自体無理だってのになんで女の人なんだよしかも美人じゃねぇかよ無理無理燃えないゴミのクソニートには美人と話す権利なんてないですよ。
「あの、この子たちに餌をあげるんですか?」
「えっ、は、はい。」
「ごめんなさい、お邪魔してしまいましたよね」
その人はそう言い、膝に乗せていた二匹を下ろした。買ってきた猫缶を開け、二匹の前においてやると勢いよく食べ始めた。やっぱり腹減ってたんだな。
「猫お好きなんですか?」
「は、はぃ。」
「私もです。この子たちのお母さんは近くにいないみたいですね。はぐれちゃったのかな」
「さ、さぁ…」
これ会話になってるのか?緊張して上手く声が出ない。とりあえず返事だけでもちゃんとしないと、本当に変な人に思われる。
「お兄さん、よくここの公園に来てますよね」
「えっ、な、なんで」
「私この公園の近くに職場があるんです。帰りに見かけたことが何度かありましたから。猫がすごく好きな方なんだろうなって」
彼女は笑って俺の目を見つめる。そんな顔で見られたら恥ずかしいって顔が熱くなってきた。俺は目を逸す。
て言うか俺のこと見かけたことがあるって、どんだけ俺浮いてるんだよ、もう前から変な人確定だったのかよ。
「私ずっと声かけようか迷ってたんです。でもよかった、この子たちに感謝ですねっ。」
は?今なんて言ったこの人。俺に声かける?なんで?いやいやいやこんな可愛い人が俺と話したかったなんてありえないでしょ、でもこの人確かに今そう言ったよね?
「あ、私みょうじなまえって言います。よかったらまたここでお話ししてくれませんか?」
そう言って彼女はまたあの反則的な笑顔で俺に笑いかける。
キュン
ん?キュン?
「あ、はい…え、ま、松野一松です」
俺の、恋の始まりだった。
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