雲一つない抜けるような青い空。ワビサビを知らない、堂々と佇む太陽。相変わらず今日も最悪な天気だ。
「そういえば咲耶、二宮隊に入ったんだな」
二宮隊に入って二日目の放課後。余りの暑さにどこかで涼もうということになった。ファミレスに行く方向で話が進んでいたのに雅人の所持金が百円しかなくて、結局はいつも通りコンビニになった。所持金百円って中学生か。
暑すぎる外に出たくなくて四人して馬鹿みたいにどのアイスにするか悩んでいた。
「マジか」
「はあ? ついに頭までイかれたか」
「雅人までじゃないけどね」
雅人は犬飼が嫌いだから嫌味を言われることくらいは想定済みだ。まあ入ってしまったのだから今更抜けるつもりはない。未来が戻ってきたらまた隊を作ればいい。それまで、それまでの間だけだ。
「犬飼が毎日頑張っていたからな」
軽快に笑った鋼に言い返すのも面倒で軽く睨んだ後一番安い袋を掴んでレジに向かった。
「ねえ咲耶聞いてるー?」
わざと無視していたのに視界に映り込んでまで話しかけてくるこいつの神経はどうなってるんだ。聞こえるように舌打ちした後ニコニコしながら方杖をついている目の前に座る犬飼の足を蹴ってやった。
「痛いってー。咲耶が任務忘れてるから呼びに来てあげたのに酷くない?」
「……は?」
任務ってなんだ。昨日の防衛任務には忘れずに参加したはずだし私の中では今日は非番なはずだ。
「混成部隊組んだって昨日言わなかったけ?」
「はああ?」
「俺と咲耶と当真と王子!」
こいつ絶対断れないように当日に言うようにしただろ。当真なんて今日は会ったんだから普通なら一言くらいあっても……ああ違う、全員グルだ。
「あっはは! 咲耶すっごい顔!」
「さいっ……あく」
犬飼がいる時点で最悪なのに王子が加わるとか拷問かなにかか。
「俺先行ってるから早く来てねー」
ひらひらと手を振って去って行く犬飼は近界民にやられて緊急脱出でもすればいい。そしたら散々馬鹿にしてやるのに。
気分は最悪だがサボるわけにもいかない。重たい腰を上げてトリオン体に換装した。
「あっ」
声が聞こえた方に目線をやれば制服姿の辻がいた。学校が違うし制服は新鮮な気がする。
いつも通り逃げられるのかと思えば何か用事でもあるのか、こちらを見てあたふたしたまま動かない。辻の顔がどんどん赤くなっていく。
「あーごめん。私今日防衛任務あってさ、悪いんだけど今度でいい?」
「えっ……犬飼先輩…ですか?」
おずおずと尋ねる辻に思わず本心とは真逆のことを言ってしまった。
「そうだけど全然嫌じゃないから!」
今のは無理があった。多分、予想と真逆の返答に戸惑っている辻に慌てて言い直す。
「ってのは嘘なんだけど。……まあ、辻のせいじゃないし。気にしないで」
「あっ……ち……じゃ…て」
「……ごめんもう一回」
犬飼はうるさすぎるし辻は女の人限定だけど静かすぎるし、犬飼と辻を足して二で割ればいい感じになると思う。
俯いたままの辻には悪いが、これ以上は不本意であるが当真達に悪いので今度にしてもらおうと声をかけようとした。
「辻ほんとに悪いんだけど」
「橘先輩は二宮隊の仲間なので気にかけるのは当然です!」
「……へ?」
「犬飼……先輩には俺…から言っておきます……」
だんだん小さくなっていったが、リンゴみたいに真っ赤な顔で叫んだのは紛れもなく辻だ。
驚きすぎて正直ここから支部までどうやって行ったかはあんまり覚えてない。
「ねえ当真」
「あん?」
「後輩っていいものだね」
「あー……いいんじゃね?」
バムスターから視線をずらして当真の方を見る。少し悩んでいたけど当真がユズルと出穂ちゃんを可愛がっていることくらいは知っている。
「なになに咲耶年下好きなの?」
「それは知らなかったよ」
「柚于通信切って」
「ダメ〜」
犬飼が「酷い酷い」とうるさいので悪態をついた後、苦笑いをする当真に気づかないふりをして視線をバムスターに戻した。
分かっているのだ、皆が私のために色々としてくれていることくらい。それに気づかないほどバカではない。
一人の帰り道、辻に言われた「二宮隊の仲間」という言葉について考えていた。
同じ隊なんて言っても入ったのはついこの間だし二宮隊の狙撃手は未来の場所だ。私のことなんて放っていて構わないのに。優しいんだ本当に、二宮さんも辻も犬飼も氷見ちゃんも鋼も王子も当真も皆優しすぎるんだ。
「どうして揃いも揃っていい人しかいないかなあ……」
見たくない現実から目を逸らして、いつまでも駄々をこねているのは私だけだ。