これまで紅白陣営にわけて部隊編成を行なっていた。しかし今回が初の連隊戦である我々からしたら敵の強さは未知数。
相手の強さが分からない以上、様子見も兼ねてまずは陣営関係なく、うちの最高戦力をもって挑む。というのが連隊戦初陣にむけての私の考えだ。
各陣営、平等に出陣してもらっていたがやはり古参者と新参者とでは練度差が大きい。
ただでさえ陣営内での練度格差もあるのにこれでは練度バランスの良い部隊は組めないだろう。
巷では部隊の中で一番練度の高い者に合わせて合戦場に稀に出現する検非違使なる者が存在していると噂で聞いた。姉からも「奴等はポエミーな強敵だ」と聞いているが、うちではまだ出会ったことがない。
連隊戦でも検非違使のように練度により強さの変わる敵がいるかもしれない。ならば部隊内の練度は同じくらいの者達で構成するのが良いだろう。どんな敵か分からないのだから用心するに越したことはないと混合編成について説明する。


「だから連隊戦においては紅白陣営なしで全員一丸となって臨みましょう!」
「そーね。まずは練度高い奴等で様子見しよう」
「いぎなし、です!」


両側の2人がすぐ頷いてくれたことに胸をなでおろす。流石は初期刀と初鍛刀。2人が同意してくれると安心感がやばい。
主がそう言い、頭領も異議ないのであれば…と結果的に混合編成については全員の同意を得れた。


「初めてのことだらけでわくわくしちゃいますね!」
「主君、編成案はもうお決まりですか?」


特に短刀達は肯定的でどんな編成になるのか楽しみだと顔にでている。


「一応ね。皆から了承得てから編成しよーって思ってたから正式な発表は明日の朝します。連隊戦では第一部隊に太刀や大太刀以上の皆さんに入っていただきます。主に通常戦合戦担当です。」
「拝命致します」
「オーケー。白刃戦は任せて」


行儀よく会釈する小狐丸。その向かいに座っている光忠は握りこぶしでとんっと自身の胸を叩いた。


「第二部隊は夜戦専属部隊。室内戦も担当して頂きますので夜目が利いて尚且つ素早い短刀の皆さんに入っていただきます。」
「わかった…」
「任せとけ大将!」


隣の秋田と共に強く頷く小夜。少し離れた場所から厚の気合の入った声が聞こえる。

「第三部隊はどの戦況でも頼もしい打刀と脇差の皆さんにお願いしたいです。戦場が大きく変化したときや刀装が硬い敵が現れたとき、必殺!二刀開眼で相手をやっつけちゃってください」
「わしらにどーんと、まーかせちょき!」
「高まってくるね…。士気のことだよ?」


両隣の蜂須賀と宗三の肩に腕を回し、歯を見せて笑う陸奥の正面で妖艶に微笑む青江。
私の一言に必ず誰もが頼もしく反応してくれるのが嬉しくて目を細める。
口角が緩むのを感じる。うちの子達が頼もしすぎて尊い。


「手入れに関しては心配ないみたいだけど疲労は溜まるから疲れたら交代制度をとろうと思ってます。無理しなくていいからちゃんと報告して下さいね」


あちらこちらから了承の声が上がる。うん、全員素直でよろしい。


「主…」
「はい、江雪さん。なんですか?」
「第四部隊については、いかがなさるおつもりですか?」
「第四部隊については今のところ日課の遠征と京都市中攻略部隊にしようかなと考えてます」


他には練度上げメンバーの出陣とかですかねと言えば、「なるほど…」と返された。連隊戦中に池田屋を制覇したいと軽い目標を呟くと前の方に座る短刀達の顔つきが変わった。


「主君の願い、必ず叶えてみせます」
「あるじさまが…お望みならば」


栗色のおかっぱとふわふわとした白い髪が頭を垂れるのに比例して揺れる。


「各々、目的がより明確になって気合が十分入ったところで」
「こたびのぐんぎ、これにてしまいにしましょう」


加州と今剣が上座に身体を向け、前田と五虎退のように頭を下げる。そこから順々に個性豊かな髪が揺れ私に向けて下げられていった。列の後ろに座る鶴丸と岩融がやり遂げるまで見届けると私も膝の前に手をつき、一呼吸おいてからゆっくり頭を下げた。


「ありがとうございました」


全員の声が同様に大広間に響き、これにて軍議閉廷。座布団など大広間の片付けを始めれば、軍議開始前の和やかなムードがすぐさま戻ってくる。
うちの本丸はスイッチのオンオフが激しいと常々思う。


「いち兄!明日ボクと鍛錬して〜」
「僕達もご一緒してよろしいですか?」
「いち兄、お願いします」


一期の周りに集まる粟田口。俺も僕もと口々にする弟達を撫でながら「いいよ。全員みてあげよう」と爽やかに笑う。はしゃぐ弟を見る一期の目は慈愛に満ちている。彼は本当に良いお兄ちゃんだ。私の姉とは月とスッポンである。いやそもそも比べること自体、烏滸がましいか。
仲睦まじい粟田口を見ていると後ろから軽く肩を叩かれた。


「あ〜る〜じ!お疲れ」
「お疲れ様」


肩を叩いたのは加州のようでその後ろには温和な笑みを携えた安定がいた。


「お疲れ様。連隊戦での活躍楽しみにしてるね!」
「もちろん。いっぱい誉とるからちゃんと見ててよね」


八重歯を見せて自信満々に笑いながら私に抱きついてくる加州。普段はこんなにも愛らしいのに戦うときは勇ましい。そのギャップがたまりません。世界一可愛いよ。
うん、と抱き締め返そうと加州の背に腕をまわそうとしたとき右腕を引かれる。


「ぼ、僕も…」


ぎゅっと引っ張られたときより強い力で右手を握られる。
少し俯向いている安定の表現はよくわからないが声が震えてる気がした。


「安定?どうした?」


様子の違いを疑問に思い、問うと顔をあげた安定と目が合う。美しい浅黄色の瞳に私の顔が鏡のように反射しているのが分かるほど、一気に彼の顔が近づいてきた。


「清光以上に活躍してみせるから、僕のことも…!」
「ハァ?お前が俺に勝てるわけないじゃん」


私に対するときより、1オクターブ下がった加州の声が安定の言葉を遮る。
続きを紡ごうとした口は開いたまま安定の間が止まったのは一瞬のことで次の瞬間には顰めっ面になった彼が加州に向けてガンを飛ばしていた。


「あ``ぁ?」
「事実じゃーん。俊敏性も練度も俺の方が上だしー。ね〜主!」


加州は上機嫌に私の首に腕を回し、同意を求める。加州の言うことは事実だがこの流れでは肯定しづらい。
うーん、と濁していると首に回されていた加州の腕が安定にぱっと払われた。


「…なにすんのさ、安定」
「主、困ってるだろ。軽々しく触るのやめなよ」
「お前も触ってたじゃん」
「お前みたいに過度じゃない!大体、練度とか大差ないのに威張ってんじゃねーよ!」
「威張ってないし!事実を言っただけだろ!」
「なにが事実だよ!勝負したわけでもなく、ただ練度差でしか判断してないのに口先だけ野郎!」
「うっさい!ブス!だったら勝負する!?ボコボコにしてやんよ!」
「上等だ、オラァ!勘違い野郎の天狗っぱな綺麗に落としてやる!」


そう言って同時に大広間から飛び出して行った。どたどたと2人の足音が遠ざかっていくのが聞こえる。


「結局、安定は何が言いたかったんだろ…」


加州に煽られたとはいえ、すぐに伝えてこなかったところをみるに急ぐ話ではなかったのかなと思う私の横を抜けた歌仙の「廊下を走るな!」という怒号はヒートアップしている今の2人にはきっと届いていない。