「騎馬戦!?個人競技じゃねーじゃん」
近くにいた上鳴くんが不思議そうに声を上げた。ほんとだ、一人じゃ騎馬戦は出来ないよね。そのあとすぐに得意気にミッドナイト先生が説明を始めて、なるほどそういう事かと納得した。わたし四位だったから、195ポイントかな?たぶん。誰と組むのが一番楽かなあ。とりあえず緑谷くんは無しの方向で。爆豪くんだけじゃなくて、全騎馬から狙われるなんてしんど過ぎる。
「なまえどうすんの」
『うーん、かんがえちゅう』
「緑谷は止めときなよ」
『うん』
「・・爆豪と組んだら?」
『ちょくせつぶちのめすせんげんされてるからたぶん組んでくれない』
「何その物騒な宣言」
ね、そう思うよね。才能マンな爆豪くんと肩を並べられる程の実力はまだ無いのに、なんでそこまで躍起になってくれるんだろ。無関心よりは嬉しい気もするけど。
そんなことより今は騎馬戦。わたしが馬になっちゃうと、足早すぎて他の馬の人たち付いてこれない気がする。かと言って騎手は出来れば避けたい。うーん、どうしようかなあ。
「みょうじさん、だよね」
『ん!?そうですが!』
「俺普通科の心操人使」
『しんそうくん』
「・・俺と組んでくれない?」
『いいよ!』
「ちょっ、こら!あんたね、せめてこの人の個性ぐらい確認しなよ!」
『いっぱいかんがえたんだけどね、もうだれと組めばいいかわかんなくなった!』
「自信満々にバカ晒してんじゃないよ」
『てことでよろしく!』
「うん、ありがとう」
紫色の髪と、なんだか目付きが不健康そうな心操人使くん。よく分かんないけど時間も無いし、考えてもいい案なんて浮かばないしってことで乗ってみることにした。きょんちゃんは透ちゃんに声を掛けられたみたいで、気を付けなよって言いながらもう一回頭を撫でたあとに離れていった。
『さて、わたしうま?』
「出来れば」
『いいよ!お、おじろくんもいっしょ!』
「・・・」
『あれ?おじろくん?おーい?』
「ごめん、個性使ってるからそいつ話せない」
目の焦点が合っていない尾白くん。はて、心操くんの個性とは。
『こせい?』
「・・うん、洗脳」
『へー!すごいね!』
「え」
『え?』
「・・気味悪いとか思わないの」
『なんで?』
洗脳かあ。なんかいろいろ使えそうだよね。でもおかしいな、わたしには掛かってないよ。心操くんの誘いを断らなかったからかな。
「・・君には使ってない、使うとアイツが厄介そうだったし」
『あいつ?ああ、ばくごうくんか』
「付き合ってんの?」
『まさか。おにきょうかんです』
「教官?」
『こせいみがきてつだってくれてる』
「へえ・・あいつそんな面倒見いいこと出来るんだ」
『いや、たぶん気まぐれ』
「そっか、まあ、いいや」
気まぐれ、というか、完全にUSJの暴走がきっかけなんだけどそこは言わなくてもいいか。話長くなるし。ってことで割愛した。
『わたしにも掛ける?せんのう』
「え?」
『こううごけって言ってもらったらうごくけど、ばかだから』
「・・・」
『あやつったほうがらくならかけてもいーよ!』
「君、ほんと変わってる」
『よくいわれます!』
「試しに掛けてみてもいい?」
『どぞ!ちょっとわくわくする!』
呆れ笑いみたいな、やっと分かりやすく表情が変わった心操くん。いやだってさ、洗脳なんて掛けてもらえる機会そうそう無いもん!気になるじゃん。
「みょうじさん」
『はいはい!』
「・・あれ、」
『え?』
「掛からない」
『なんで!?』
「なんでだろう」
首を傾げた心操くんに釣られて、わたしまで首を傾げてしまう。めちゃくちゃ楽しみに待ってたのに、なぜ。
『ちなみにわたしの個性はおおかみだから、せんのうをはねかえすとかはできないはず』
「うん、知ってる」
『もいっこ吸収操作もあるんだけど、いまはつかってなかったよ』
「・・謎だね」
『ね』
まあ、とりあえず、悠長に話してる時間もそんなに無い。早めにメンバーが決まったから、多少の余裕はあるけど。洗脳が掛からないんならもう、わたしはわたしのままで頑張るしかない。合わせたことの無い心操くんからの指示通りちゃんと動けるかな。足引っ張らないかな、ちょっと心配。
「心配しなくても、派手には動かない」
『あ、そなの?』
「俺は強固性のヤツらと渡り合えないし、隙を衝くのも一つの手だと思うから」
『ほう』
「みょうじさんはどっちかって言うと正面突破の方が好きそうだけど、」
『うん!でもそういうやり方もべんきょーしないとね!あとなまえでいいよしんそーくん』
「え」
『しじだすときに名字にさんづけだとよびにくくない?』
「・・わかった、じゃあ、なまえ」
『あい』
やると決めたからには、従う。頭では役に立てないならせめて、足と個性で役に立つ。あととりあえず最終戦までは行かないと。
「じゃあ、行こう」
『がんばりまっす!!』
前騎馬は尾白くん。ほんとはわたしが前騎馬になる方が効率良いんだろうけど、身長の問題で断念した。わたしが右翼、左翼は庄田くん。スタートの合図でほとんどのチームが緑谷くんに総攻撃を仕掛けていた。
「とりあえず、離れよう」
『なんで?』
「轟の範囲攻撃と、上鳴だっけ?あいつも範囲攻撃あるから」
『ああ、ぴかちゅうみたいなやつか』
「・・混戦すればするほど、隙は生まれる」
『りょーかい!』
周りを警戒しつつ、いろんなチームが好き放題に動き回っているのをじっと観察する。おー、確かに騎手はみんな結構背中がガラ空き。心操くんすごいね。
「誰か行けそうなヤツいる?」
『わたしがえらぶの?』
「そういう勘と目はなまえの方が得意そう」
『うーん、えっとね、あのひと』
指を指した先には、確か鉄哲徹鐵って人の騎馬。めちゃくちゃ名前が言いにくい。あの人の背中のガラ空き具合は、たぶん騎馬の女の人の個性に信頼を置いているから。油断は出来ないけど、なんとなく行けそうな気はする。
「鉄哲か・・オッケー」
『あ、ほんとにいくんだ』
まあ、とりあえずポイント取らなきゃ最終戦には進めないし、動かずにポイント稼げるほどリーチも無いし。てことで!突撃あるのみ!
20180920