【3位鉄て・・アレェ!?オイ!!!心操チーム!!?】

『やっほーーーい!!』
「なまえ、お疲れ」
『しんそーくんも!ありがとね!』

マイク先生の実況に変な笑いがこみ上げる。みんな大体ド派手な爆豪くんか、真剣勝負をしてた緑谷くんと轟くんを見てたんだと思う。目立たず、でも確実に、心操チーム最終戦進出決定でしょこれ!

「え、何が起こった・・」
『おじろくんやっほ!』
「みょうじ?なんか記憶があやふやなんだけど・・」
『うん』

不思議そう、と言うよりは気分が悪そうな尾白くんにちょっと心配になってきた。洗脳なんてされた事ないし、心操くんの個性も掛からなかったわたしにはどんな感じなのか分からないけど、許可なく掛けられてたっぽいしなあ。気付いたら騎馬戦終わってました、ってそりゃ混乱もするよね。

「・・みょうじは?大丈夫なのか?」
『なんかわたしには効かなかったらしい!』
「マジか」
『だいじょうぶ?あたまなでる?』
「エッ、いや、大丈夫ありがとう」

驚いた顔をしたあとに、遠慮されてしまった。そういえば尾白くんに頭を撫でられたことは無かった気がする。尻尾で撫でられたらどんな感じなんだろう。

「なまえ、こっちおいで」
『あ、きょんちゃん』
「行っておいでよ」
『おじろくんむりしないでね』
「うん、ありがとう」
『しんそーくんも!またね』
「うん」

尾白くんに手を振ったあとに、少し離れたところにいた心操くんにも手を振ってみたら控えめに振り返してくれて、ちょっと嬉しかった。

「まっさかあんな急ごしらえなチームで三位入っちゃうと思わなかった」
『わたしも』
「勝つ気マンマンだったくせに」
『そりゃあきもちはね?でもみち過ぎてじしんはなかったよ』
「ん、でもまあおつかれ」
『きょんちゃんも!』
「ありがと」

ちょっと照れたように笑ったきょんちゃんのかわいさがつらい。落ち着くし、めちゃくちゃほっとする。手を握ったら、しょうがないな みたいな顔しつつも頭を撫でてくれるお決まりの流れ。しあわせです。そのままとりあえず休憩に入ることになった体育祭、きょんちゃんとご飯を食べようと思ってたのに。

「クソ犬」
『!』
「あーあ、お呼びだよ」
『ばくごうくん・・』
「ちょっとツラ貸せ」
『きょひけんは、』
「ねェわ」
『ですよね!』

分かってたよ。分かってたけど一応聞いてみただけだよ!だからそんなに睨まないでほしい。呆れつつも背中を押してくるきょんちゃん、全力で引き止めて欲しかった。

「また後でね」
『、うん』

めちゃくちゃ寂しいわたしと比べて、ひらひら手を振るきょんちゃんに泣きそうだ。体操服の首の後ろ辺りを掴まれたままズルズル引きずられて、どこに連れていかれるんだろうなあなんてぼんやり思う。てか歩かなくてもいいって楽だねこれ。

「ちったァ自分の足で歩こうとしろや!!」
『わぁ!』
「逃げたらぶっ飛ばす」
『にげないにげない』
「・・ついて来い」
『あい』

薄らとそんな気はしてたけど、やっぱり怒られた。障害物競走も騎馬戦も、爆豪くんの思い通りの結果じゃなかったもんね。完膚無きまでの一位、勝ち方に拘りが強すぎて機嫌がえらいこっちゃになってる。



「個性婚、知ってるよな」

『!』
「・・黙ってろ」

不意に聞こえたのは、轟くんの声。いつもよりずっと真剣で、怖いぐらい冷たい声だった。呑気に声を掛けちゃ駄目な事ぐらいわたしにだって分かる。だから、口を覆った手を離してほしいよ爆豪くん。

「実績と金だけはある男だ・・親父は母の親族を丸め込み、母の個性を手に入れた」

なるほど、だから左の炎は使わないって言ってたのか。ていうかこんな重要そうな身の上話を盗み聞きしてていいのかな。いや、良いわけ無いよ。わたしも爆豪くんも、面白おかしく茶化したり噂話として話したりはしないけど。匂いで一緒にいるのが緑谷くんだってことは分かってる。二人の大事な話、わたしに聞く権利は無いよね。

「・・なにしとんだ」
『・・』

後ろから抱き締めるみたいに腕を回されて、ゴツゴツした手で口を押さえられているこの状況。でも手は自由に動かせたから、両耳を押さえてみた。でもダメだ、犬耳の方で聞こえてしまう。すぐに犬耳をしまったけど、元々の聴覚が良すぎて手で押さえていても微かに聞こえてしまうのはしょうがない。わたしの意図を分かってるのか分かってないのか、後ろから聞こえた小声には呆れたような色が含まれていた。





『・・ぷはっ!』
「お前、途中からなんで耳押さえた」
『大事そうなはなしだった、きいちゃだめだとおもった、から』
「・・聞いちまったもんはしょうがねェし、聞かれたくない話ならあんなとこで話す方が悪い」
『うっ、まあ、そうかもしれないけど、』

言ってることは確かに正しいのかもしれないけど、ヒーロー志望のセリフじゃない気がするよ爆豪くん。轟くんと緑谷くんの会話は、結局ほぼほぼ聞いてしまった。罪悪感がすごい。どうしようこのどんよりした気持ち。

「つーかお前、」
『ん?』
「さっきの騎馬戦、なんで騎手やらなかった」
『え、しんそーくんがこえかけてくれて、できれば馬になってっていわれたから』
「・・誰だしんそうって」
『ふつうかの、しんそうひとしくん』
「あぁ!?普通科!?なにしょうもない奴と組んでんだアホかテメェ!!」
『ええ!?』

いきなり爆怒りきました。しょうもないってなに。普通科ってしょうもないの?でもちゃんと三位通過したよ!

「普通科と組んで三位通過ってどんな技使いやがった!」
『え、すきだらけのひとねらった』
「ンな勝ち方で満足してんじゃねェぞ!!」
『だってしんそうくんがきょうこせいのひとにはかてないからって!それに、そういうたたかいかたも学ばなきゃって、おもった』
「心操心操うるせぇ!!!」
『どこにおこってるのばくごうくん!?』

「・・言ったよな、本気でやれって」
『・・いわれました』
「それがお前の本気かよ?わざわざ時間割いて教えてやった事を生かした結果かよ」
『・・こじんきょうぎなら、まっこうしょうぶしたよ』
「・・」
『でも、ばくごうくんチームくんでくれないとおもったし、わたしがくんだあのチームだとしょうがなかった』
「いっちょ前に言い訳か」
『さいしゅうせんは、ちゃんとがんばる』
「当たり前たクソが、これ以上イライラさせたらマジでぶっ飛ばすぞ」
『あい』

鬼教官はあの勝ち方じゃ納得してくれないらしい。わたしはわたしなりに頑張ったんだけどな。ちょっと拗ねてたけど、怪我ねぇだろうな、なんて言葉を掛けられて一瞬で気持ちが晴れた。心配してくれてたのかな、だから怒ってたのかな、そう考えるとちょっと嬉しいな。なんて言ったらまた怒られるかな?


20180920