轟の話を立ち聞きして、衝撃が無かったかと言えば嘘にはなる。でも、だからなんだ。個性婚だろうがなんだろうが、俺が目指すのは完膚無きまでの一位。そのためには、クソデクもアホ犬も、半分野郎もぶっコロス。半端は許さねぇ。ガチでぶつかって叩きのめしてこそ意味がある。


「てかその心操って野郎の個性なんだ」
『せんのうっていってた』
「あ?」
『せんのう!』

笑顔で答えたアホ犬の言葉に、一瞬聞き間違いかと思った。せんのう、洗脳か?何をちょっと嬉しそうに答えとんだアホかこいつ。

「操られて手にした三位がそんなに嬉しいかよ!?あぁ!?」
『あ、ちがっ!ちがうの、わたしはあやつられてない!』
「は?」
『なんかね、わたしにはこせい効かないっていってたよ。かけてみたけど効かないって』
「・・吸収操作で洗脳防げる訳ねぇよな」
『うん、だからなぞだねって』

なぞだね、じゃねぇわ。それ結構重要な話だろうが。洗脳が効かない、もしそれがどんなタイプの洗脳系個性でも同じなら強みでしかねぇ。

「発動条件聞いたか」
『ううん』
「・・お前」
『だってほら、そういうのってきかないほうがいいのかなって』
「洗脳され無かったっつっても一回は掛けられそうになってんだろが!変なとこ遠慮してんじゃねェ!」
『うっ、うううう』
「唸んなウゼェ!!」
『あ!』
「ンだよ」
『おじろくんが、声かけられてこたえてからのきおくないって!いってた!』
「声掛けられて・・」
『わたしも、掛けてみていい?ってきかれて、へんじしたらすぐに掛からないっていわれた』
「・・声に反応して返事したら掛かるタイプか」
『たぶん、わかんないけど』

だとしたら、だ。その心操ってやつに答えさえしなけりゃ何の問題もねえ。それだけ頭に入れてりゃ、最終戦で当たったとしても問題ねぇかもな。つーか、心操ってあの髪紫色のヤツか。騎馬戦の間、アホ犬を見てる余裕なんざほとんど無かったが、終わったあとにコイツを名前で呼んでいたヒョロい奴が脳内に浮かぶ。

「普通科と馴れ合ってんじゃねェぞ」
『なれ・・?』
「名前で呼ばせてただろうが」
『あ。うん、しじだすときに名字にさん付けだとよびにくいかなっておもって』
「関わんな」
『ええ、なれあうとかじゃないよ、ふつうになかよくしようねって』
「それが馴れ合いだっつってんだ」
『・・』

珍しく、不満そうな目でじっと見てくるアホ犬の頭の中なんて簡単に読めた。なんで俺がそんなとこまで制限掛けんのか、そういう意味だろ。そんなん普通に考えて、

・・普通?頭の中に浮かんだのはアホ犬以外のA組女子共。例えばだ、耳郎が普通科の人間と親しくなってたり名前で呼びあってるのを見て、わざわざ馴れ合うななんて声掛けるか?いや、掛けねえな。むしろ耳郎が誰と仲良くしてようがどうでもいいわ。

じゃあなんで、このアホ犬にだけはこうもイライラすんだ。

「くそウゼェ・・」
『!?』

この訳の分からねえ感情も、俺の言葉に挙動不審になるアホ犬にも、とんでもなくイライラする。そんなに俺が怖いンか、だから従ってんのかよ、じゃあさっきの不満気な目はなんだ。考えても答えなんて出てこねえ。思い通りに行かないアホ犬にどんどん苛立ちが募るだけ。無意識にグッと握った拳、苛立ちを乗せて振るえたらどんなに楽か。今のコイツにそれを出来ない自分にも意味が分からなかった。
とりあえず、落ち着け。振り回されっぱなしは性に合わねえ。深く息を吐いたのとほぼ同時に、間抜けな腹の音が聞こえた。

「・・お前な、」
『うっ、ごめんばくごうくん、』
「はァ・・もういい、飯行くぞ」
『! うん!』
「・・嬉しそうにすんなクソが」

そんな言葉は、自分にも宛てていた。アホ犬の意識が自分に向いている方が苛立ちが少ない、その事実はさらに難解。ぎゃんぎゃんうるさいアホ犬に慣れて、絆されてんのか?勘弁しろや。

零れたため息が何度目かなんて、もう数える気にもならなかった。


20180920