結局なまえまでチアガールの服装に着替えて、見事に峰田と上鳴の思う壷。でもまあ、さっきまでらしくない程に落ち込んでたなまえが楽しそうにポンポンを振り回してるからまあいいや。何があったのかは知らないけど、間違いなく爆豪絡みだと踏んではいる。いつからなんて忘れたけど、あの子が自然と目で追っているのはいつも爆豪。そこにどんな感情が込められていたとしても、自分で気付かないと意味が無い。切島も気付いてるっぽかったな、そういえば。

「うわ、みょうじシード枠じゃん」
『おー!すごい?』
「すごいすごい、てか1戦免除とか羨ましい」
『あ、そういうかんじなのか、ざんねん』

発表されたトーナメント表、最終戦に勝ち上がった人数が奇数なせいで生まれた唯一のシード枠。そこに名前がある意味をよく分かってなかったなまえが、上鳴の言葉にしゅんと犬耳を垂れ下がらせていた。

「え、なんで落ち込んでんだよ!体力温存出来るじゃんか!」
『がんばるってきめたのに』
「2回戦から頑張れよ!」
『なんかい勝ったらばくごうくんとあたるかな』
「ええええ、爆豪と戦いたいのかよ・・」
『うん』

絶妙に上鳴の話を聞いてない辺りがなまえっぽいなあ。どんまい上鳴。

「なまえ、初戦で爆豪がお茶子ちゃんに勝ったらソッコー当たるよ」
『・・そっか、ありがときょんちゃん』
「お茶子ちゃんのこと心配?」
『ちょっとだけ』
「その気持ちも分かるけどね、あんたは自分の心配だけしてな」
『・・うん』

そんな神妙な顔似合わないよ、なんて笑い飛ばせる雰囲気でもない。放課後にあの爆豪がわざわざこの子の個性磨きを手伝ってるなんて、最初は驚いた。でもたぶん、USJの件もあったからこそ。絶対爆豪は認めないだろうけど、アイツは興味のない人間のために時間を割いたりなんてしない。そこにどんな意図や思考が混じってるのかは分かんないけど、少なくとも"特別"なポジションにはいるはず。

「とりあえず、チアやるんでしょ?」
『あい』

気を張り続けててもしょうがないよ、どうせあんた2回戦まで出番ないんだから。そんな意味を込めていつものように頭を撫でれば、笑顔で見上げてくるなまえにほっとした。





「みょうじかわいいなぁ」
「お前ほんとそういうの好きだな上鳴」
「いやだって見ろよ!無邪気な笑顔でポンポン持って飛び跳ねてるわんこ!」
「指差すなって上鳴」

女好きのイメージが定着しつつある上鳴と峰田は、鼻の下を伸ばしまくってチアガール姿の女子たちを見てる。いや、まあ、確かに俺だってかわいいとは思うけど。でもこいつらみたいに邪な感情は一切含んでない。

「でもみょうじはどっちかって言うと愛玩動物ポジっていうかさ?見てるだけで癒されるってのに近いけど」
「まあ、それなら分かる」
「ンだよ切島、お前も好きなんじゃん」
「すっ!?ちげーって!癒されるってとこに賛同しただけだ!」
「おやおや?顔が赤いですぞ切島くん」
「めんどくさいな上鳴お前・・」

ていうかみょうじ関連で俺に絡むな。とばっちりはごめんだ。会話には一切参加してないけど、ちょっと離れたところでしっかり聞き耳立ててる独占欲の塊みたいな奴がいるから!なんなら段々機嫌が悪くなってることに気付け馬鹿!

「上鳴甘いな・・」
「あん?なんだよ峰田」
「愛玩動物?癒し?みょうじの魅力はそんなところに有らず!」
「なんか始まった」
「峰田もうやめとけって、な?」
「あの純粋無垢で何も知りません!って顔してるみょうじは狼なんだぜ?あるに決まってんだろ・・!!」
「まさか!!」
「そのまさかよ、見てみてぇなあ、みょうじの発情期・・!」

やっぱりそういう話かよ。思わず手のひらで額を押さえた。ほんとにそろそろ辞めとけ、死ぬぞお前ら。そう声を掛けるより先に、眉間のシワをぐっと深くした爆豪がゆっくりと近付いて来ているのが見えて諦めた。

「やべぇ、発情期って言葉がもうやべぇ」
「向こうから誘って来るなんてもう最高でしかなぶべらっ!!」
「うぉー!?峰田ぁ!?」
「・・百回死ねクソが」
「ば、バクゴー・・」

てっきり怒鳴り散らして爆破するのかと思ってたのに、峰田の頬を直殴りした爆豪。吹っ飛んだ峰田はとりあえず上鳴に任しておくことにして、なあ、その表情を自分で鏡で見てみろよお前。怒ってるって言うよりは、困惑に近い。みょうじをエサに碌でもない話をされてたのが気に入らないって、そう思った自分自身に戸惑っているように見えた。そんな顔しといてまだ気付かねぇのかよ、逆にすごいわ。

「・・クソ髪」
「お?おう、切島な!」
「ブドウ頭とアホ面の視界にアホ犬入れさすな」
「無茶言うなよ」
「イライラすんだよ、なんでか分かんねえのがさらにイラつく」

いや、だから独占欲ってやつだろそれ!相変わらず楽しそうなみょうじに怒りの矛先を向けて、クソが、とだけ言い残して離れていった爆豪。なんか間違った解釈してそうでハラハラしちまう。麗日には悪いけど、恐らく2回戦に勝ち上がるのは爆豪だ。そうなりゃみょうじの希望通り二人は一戦交えることになる。容赦無くイライラした気持ちをぶつけそうな爆豪に、みょうじのやつ大丈夫かな、なんて心配になってきた。

「切島ファイト!」
「瀬呂!助けてくれ!」
「あの爆豪からの重大任務だぜ?頑張れよ」
「逃げんなって!」

全部見てたらしい瀬呂が同情を含んだ目で笑う。いや、マジでどうしたらいいんだこの状況。言ってる間に峰田は復活するだろうし、視界に入れさすなって言われても。とりあえず事情を分かってくれそうな耳郎にだけは話しとくか。ああもう、なんで俺こんな損な役回り押し付けられてんだろ。瀬呂の言う通り、他人を頼ろうとしない爆豪の頼みだしやれるだけはやるけどよ。ほんと頼むから爆豪もみょうじもさっさと気付いて自覚してくれ。


20180920