なまえちゃんの個性は"狼"の筈なんだけど、普段の子犬感の方がイメージが強すぎてつい忘れてしまう。体育祭の順位はベストエイト。運悪く爆豪くんと当たってしまって早々に敗北はしたけど、それでも凄かった。だってあの爆豪くんが物凄く戦いにくそうにしてたもん。

「いやでもそれはさ、相手がなまえだからってのもあると思うよ」
「それはもしや!?」
「分かった!惚れた弱みってやつだ!」

響香ちゃんの含みある言い方に俄然盛り上がる三奈ちゃんと透ちゃん。確かに、爆豪くんは普段の乱暴さからは想像出来ないほどなまえちゃんに優しい時がある。もちろん常にそんな感じな訳じゃないし、教室でのやり取りはまるで飼い主とペットって感じ。

「んー、でもそんな理由であの爆豪くんが手を抜くとは思えないんだよねえ」
「まあそれも一理ある」
「だからなんか、やっぱりなまえちゃんって凄いんだろうなあって」
「ふつーに強いよね、動き早いし野生の勘も働くし、五感も鋭い」

狼としての本来の本質、野生を生き抜くために培われた体の特徴はそのまま受け継がれてるって前に話してくれたのをぼんやり思い出す。

「あとはやっぱアレだよね」
「うん、複合タイプだから」
「狼の個性と、吸収操作」
「でも吸収操作の方はあんまり上手く使えないって言ってた」
「今は、でしょ?これからどんどん伸びていくよあの子」
「んー!負けてらんないね!」

そんな話をしていたら、爆豪くんと購買に行っていたらしいなまえちゃんがクリームパン片手に上機嫌で戻ってきた。

「お帰りなさいなまえちゃん」
『ただいま梅雨ちゃん!みて!クリームパン!』
「どしたのそれ」
『んへへ、ばくごうくんが買ってくれた』
「また餌付けされてるし・・」
「あら、でもなまえちゃんはコロッケパンの方が好きじゃなかったかしら」
『・・売り切れてたの』

しゅんと項垂れたなまえちゃんの頭にはもはや見慣れすぎた犬耳。同じようにしゅんと垂れ下がってしまっている上に、尻尾までパタリと力なく落ち込んでる。

「あ、じゃあほら、お昼休みに食堂でお肉食べよう!?ね?」
『うん!』
「てかそれ素直に買ってくれたの?バクゴー」
『え、うん』
「なんか言ってた?」
『なんか・・それ食っていつもみたいにアホさらしとけとかなんとか言ってたような気はする』
「素直じゃないにも程があるな・・」
「さすが爆豪ちゃんね、期待を裏切らないわ」
「でもなまえちゃん嬉しそうだね」
『うん!だってあたま撫でてくれたよばくごうくん』
「・・懐柔されてる」
「ちょっとやばいよ!これは由々しき事態ですよ!」
「取られちゃうのも時間の問題なんじゃ・・」
『え?なんのお話?』

きょとんと目を丸くするなまえちゃんはかわいいけど、私達はそれどころじゃない。

「爆豪のこと応援しない訳じゃないけどさ」
「そう簡単に私達の癒しを譲るのは、ねえ」
「釈然としないわ」
「それだ梅雨ちゃん!」
「ダメー!あげない!」
『え、ほんとになんのお話?』
「なまえさんの話題でしたら私も参加させてください!」
『あ、もも』

突如始まった作戦会議。相澤先生に呼ばれて教室を離れていた百ちゃんも交えて、盛り上がる話の当人であるなまえちゃんだけが置いてけぼり。悪意は無いの!ただそう簡単に私達の癒しを譲りたくないってみんなの利害が一致しちゃっただけ。こういう時の謎の結束力は女子の方が何十倍も強いんですよ、男子諸君。

『えええ・・なんかはじまっちゃった』

とりあえずなまえちゃんはクリームパン食べててね、そう言ったら手に持っていたそれの存在をようやく思い出したようで笑顔で頷いてくれた。


20180921