ピアスホールに君の熱
 昔、私がまだ小学生だった頃、幼なじみのレーくんは当時高校2年生だった。
 レーくんには2歳年上のお兄さんがいて、私はシーくんと呼んでいたんだけど、その人がとっても優しくてレーくんとはまるで正反対な紳士だった。
 そんなお兄さんに比べて、レーくんはその頃からちょっと意地悪だった。私のことをすぐガキ扱いするし、口は悪いし、未成年のくせに煙草も吸っていた。絵に書いたような不良だった。
 だから当然、私はレーくんよりもシーくんに懐いていたし、シーくんのほうがずっと大好きだった。
 けれど、たった一つだけ。私は、シーくんにはないレーくんのピアス≠ノ憧れていた。
 それはとても輝いて見えて、大人びて見えたからだ。
 レーくんの見た目はすごくチャラチャラしていたけれど、ピアスだけはなぜかいつも髪で隠れてしまうような黒い小さなモノをつけていた。穴からぶら下がるようなものではなくて、ただキラリと耳元で控えめに光っていたそれが、私にはこれ以上なく綺麗なものに思えた。
 そんな私だから、一度だけレーくんに「ほしい」とねだったことがあったけれど「ガキには早い」の一言であしらわれてしまった。
 今思えば貰ったところで穴を開けなければ付けられなかったのだから、本当にレーくんの言う通りだったわけだけど。
 何度思い出しても、あの時のレーくんのふんぞり返ったような表情は腹の底から煮えたぎるものがある。

 なんて、もう何年も昔の思い出に腹を立てたところで仕方がない。
 だって私も、当時のレーくんと同じ歳にようやくなれたのだから。

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