これは暖かな陽光が降り注ぐ春の麗らかな日のことだった。眼前に広がる緑を見据え、洗濯物を取る手を止める。
「なんだか、寂しいなあ」
喧騒と賑わいをもつ都会から車で1時間以上走らせた場所に私の家はある。隣の家は車で10分ほど道なりに走らせた所にある。遠いご近所さんだ。
両親が遺した思い出と、生きるための術。これらを胸に秘めながら、一人でこの地に留まり続けている。
「…一人だから寂しいのかな」
友人もいない、知人は少し離れたご近所さんくらい…。今は問題なくほとんど誰とも会うことの無い毎日を送っている。生活に関して特にこれといった不満も無いのだが、最近になって寂しさを強く感じるようになってきたのだ。何故かは分からないが月に一度、胸の奥がキュウと苦しくて息がしにくくなる。
こんな風に少しでも負の感情が芽生えてしまうのなら、作ればいいじゃないか。友好関係を築いた先にあるものを私も得てみたい。
洗濯物を再び手に取り、干し竿にかけながら頭を巡らす。このまま、寂しさを募らせるのも良くない。打開策を練ろう。寂しい気持ちを打ち消すためには、やはり相手が必要だろう。他者との関わりや友達の存在が、きっと人生を豊かなものにする。ようは寂しさを埋めるために誰かと仲良くなればいいのだ。つまり友達を作るということ。こんな風に少しでも負の感情が芽生えてしまうのなら、作ればいいじゃないか。
ご近所さんには今更照れくさくて言い出せない。
友好関係を築いたことがない私に、友達を作る手段はーー
「よし、手紙を書こう」
文通だ。そうだ、文通をしよう。
そうと決まれば善は急げ。市内まで出れば図書館があるから、そこで本を借りて勉強しよう。便箋代わりならあるし、ちゃんとペンも家にある。手紙って何を書けばいいのだろう。まずは礼儀正しく『初めまして』からかな?これを受け取って中を読んでくれたことへの感謝も忘れずに書かないとね。そして私と文通友達になってくれないかって聞いてみよう。
洗濯物を全て干したら、早速実行だ!
思いの外、進み始めたペン先は止まることなく最後の一文まで書き上げた。一度言葉に表してみたら、言葉の引き出しが豊かに膨らんでいくような感覚だった。
追伸まで書き終えた私は、便箋を2枚重ねて鳥型の紙飛行機になるように折った。さて、誰に届けよう。……そうだな。
「友達が欲しいなって思ってる者に届けてほしい」
そう届け先を告げて力を注げば、紙でできた羽で南へ羽ばたいていった。
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