この世界には人間とモンスターという二つの種族が存在する。お互い地上で共存していたが、二つの種族の間に起きた戦争によって生活環境は大きく変わってしまう事になる。人間よりはるかに弱いモンスターは恐るべき武力に屈し、地底へと逃げ生き延びる道を選択した。そのため今現在地上で生活しているのは多くが人間ということになる。モンスターがどこの地下に行ってしまったのか、それは未だに分からないままだ。

昔の血気盛んだった時代とは変わり、今では平和を謳い安全を優先する穏やかな時代になった。そうでない地域や環境も悲しいことにあるのは事実だ。だがモンスター達が安心して暮らせる安住の地が今では多い。何が言いたいかと言えば、モンスターと人間がまた、共に地上で暮らせる世界になればいいのになとふと思うのだ。

なぜそのような事を突然回想するかと言えば、それは仕事に関わってくる。パピルスから初めて手紙が届いたその翌日、依頼を受けて私はこの1週間仕事漬けの毎日を過ごしていた。その依頼はなかなかに厄介で、苦戦したものだ。そして今、仕事を終え、くたくたの体に鞭打ってようやく家の前までたどり着いた。

そろそろ来てる頃合だと胸を弾ませながらポストを確認した。

「ふふ、開けるのが楽しみだ」

お目当の手紙を手に取り、家に入る。とりあえずこの疲弊しきった状態で彼の手紙を読むのはマナー違反だ。手紙はちゃんと体調も心の準備も万全な状態の時に、胸の高揚を静かに感じながら封を切る。文通相手からの返事を自ら楽しめない状況で読もうとするのは、相手を蔑ろにしているようなもの。精一杯楽しみながら手紙を読んで返事を書いて送る、これが私なりの文通マナーだ。

そういう訳で、無事に届いた紙飛行機はテーブルの上に置く。私自身も早くこの疲弊を癒したいので、すぐさまシャワーを浴びて寝床に着いた。

依頼の内容は、呪われてるらしい物を回収して来てほしい、とのことだった。それは分厚いアルバムで、中にはモンスターの家族写真がたくさん貼られていた。そして呪いはこのモンスター達の残留思念だった。
どうやらモンスターは死後、とても思い入れの強い物に塵をかけて供養する弔い方が一般的だったらしい。そのおかげで複数の強い残留思念が残っており、浄化するのに精神的・体力的負担を大きく伴っていた。

浄化したアルバムは、このまま家に置いておくつもりだ。このアルバムに限った話ではないが、浄化した後の行き場を失った物達は、あるべきところに返すため私が預かっている。このアルバムもあるべき場所へ、求める者がいる場所へ、無事辿り着けたらいいな。

気づけば意識は睡魔に呑まれていた。

『メメへ

ごめんなさいが多いぞ!メメはとっても謝りやさんなんだな!だがこのパピルス様に対して恐れ多さを感じてしまうのも無理はない。そんな哀れなメメに、この寛大なパピルス様は

オレ様がいるところはずっと雪景色だ!常に雪は積もってるから、いつでも雪だるまが作れるぞ!……ただ、パズルを作るときに雪を退かさなきゃいけないのが、ちょっと面倒なだけだ。

あとオレ様には兄のサンズっていう兄弟がいるな。オレ様と違って怠けてばかりで、ちゃんと仕事をしないんだ。人間が来ないように見張りをしないといけないのにいつも寝てるし、オレ様が叱ればジョークばっかり!……オレ様は立派なロイヤルガードにならないといけないのに、どうしてこんなに苦労ばっかりしてるんだろう。

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