▽2020/09/09（Wed）
財前と図書委員（tns）
□■□
「財前くん、ちょっと」
「なんですか。今忙しいんですけど」
「ツムツムしとるだけやん。英頻持っとる？」
「教室ですわ」
「持って帰らんの？」
「今日はええわ」
「えー、2年て連休の宿題出とらんの？」
「英頻は別に」
「いいなあ」
「……お、マレフィセント」
「え！？ 見して！」
「……近」
「えっごめん。うわーーーほんまにマレフィセントやん……ええな……ちょおこれちょうだい」
「あほ。自分で出してください」
「出んもん。ちょお使てみて」
「はー。しゃーないすわ」
「……おわ、え、すご、ど、ちょ、えっ手はや、こわ」
「こわ言うなや」
「えーーすっご。ええなあ」
「……ご利益あげましょか」
「ご利益？」
「手ぇ出してください」
「ん。…………、えっと」
「なん」
「え、これ、手握っとるだけちゃうの」
「ご利益分けとるんです」
「う、うん……？」
「あるやろ、午前0時に回すと当たりやすいとか、トイレで回すと出るとか。あんな感じですわ」
「ああーーあるけど。これは？」
「当たった人の手を握っとると当たる」
「なるほど。……あの、なんや恥ずかしんやけど」
「指ほっそ」
「ちょっ、と、からめんといて、」
「ご利益ご利益」
「もうたくさんもろたわ！おおきに！っぐぬ、離れんのやけど！」
「もう離すんです？ 俺と手繋げて嬉しいくせに」
「うれしかない」
「顔赤いで」
「見んな！」
「かわええ」
「……あんな！財前くん、誰にでもそういうのするのあかんと思うわ！」
「はあ？」
「前から思てたけど、なんかこう、誤解を招くというか、勘違いするというか、かわええとかあんま言わんほうがええで、」
「……俺も前から思ってましたけど、それ勘違いじゃないんで」
「えっ」
「なんで自分の勘違いだって思っとるのか、そっちの方が不思議ですわ」
「え？ まって？」
「じゃ連休楽しんでください」
「ここで引くん！？ うそやろ」
「閉館時間やろ」
「いやタメ口な、て、ちょお待、」
「窓閉めといたんで、あと鍵頼んます」
「いや、うん、ええ……」