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「はーー…」
プロデューサーはスマホの家計簿アプリを開いて、深いため息を吐いた。
ご祝儀貧乏とはこのことか。
今年に入って、もう3回目。
同じドレスを着まわすのは許容するとして、ご祝儀はケチれない。
出産祝いも何件かあるから…私の財布は大ピンチなのだ。
…そして同時に、そういう年齢に自分がなってしまった、という事実が重い。
――と、独り言ちて、再び重い息を吐く。
しかし、プロデューサーは手帳を開いて気を取り直した。
明日はオフ…そして、プロデューサーにとって、大事な勝負の日なのだ。
「うーんと、うちから帝都ホテルまでの行き方は…っと…」
「プロデューサーちゃん!」
「わっ!…四季〜〜驚かさないでよ」
「ええっ、そんなに驚かせちゃったっすか?ごめんなさいっす!」
明日の作戦を色々考えているところに、いきなり話しかけられてびっくりしたプロデューサーは、つい責めるような口調になってしまったが…
担当アイドルである四季に素直に謝られたことにより、とっさの自分の反応を反省した。
「こっちこそ、ごめん。ちょっと考え事してて…」
「考え事?」
「大人には色々あるのよ…」
「えーっ、そんな言い方されたら気になるっす!!」
「それより、私に何か用事だった?」
「あっ、そうっす!明日はプロデューサーちゃんもオフっすよね?オレたちとカラオケ行かないっすか?」
「ごめん、明日は用事があるから無理だわ。また今度ね」
即答するプロデューサーに、四季は不満そうに唇を尖らせた。
「なんか最近、プロデューサーちゃん付き合い悪いっすー……もしかして、彼氏…とか…?」
「違う違う。前回も前々回も、本当に友達の結婚式だったんだって」
「明日もっすか?」
「明日は違うけど」
「なんなんすか?大事な用事なんっすか?」
「…お見合い」
「お見合いーー!!???」
「ちょっ、四季うるさい」
ぐいぐいと押してくる四季に、つい答えてしまったプロデューサー。
その答えに四季が大きな声を出したせいで、その場にいた他のHigh×Jokerメンバーの視線がプロデューサーに集まった。
「え、なに?お見合い?」
「もしかして、プロデューサーが?」
「お見合いって!なんでっすか!?」
前のめりでプロデューサーに尋ねる現役高校生たち。
その反応に、言うんじゃなかった、とプロデューサーは苦虫を噛み潰したような顔になる。
「そういうことを考えざるを得ない年齢ってことですぅー」
「…大変、なんだね」
(夏来のそのフォローもつらい!)と、プロデューサーはますます渋い顔になっていく。
そして。
「青春真っ盛りの男子高校生に、ご祝儀貧乏アラサー独身女子の気持ちなんてわからないわよー!!」
と、プロデューサーは目の前の5人に捨て台詞を放って、事務所から飛び出た。
「あー!プロデューサーちゃんが逃げたー!!」
「放っておいて差し上げたらどうですか…」
プロデューサーを見送った旬が呆れたようにたしなめるものの、四季は納得がいかないようだった。
――そして、翌日。
「みんな集まったっすね!これから、プロデューサーちゃんのお見合いを尾行する会を始めるっす!」
「あれ、カラオケじゃなかったのか?」
「そんなことをするなら僕は帰ります」
カラオケに行くために集合していた5人だったが…
昨日の話を引きずっている四季がそう宣言すると、旬がくるりと身を翻した。
「わー!ダメっすー!帰らないでジュンっちー!!プロデューサーちゃんが結婚して仕事辞めちゃったらどうするんすかー!!」
「うーん、プロデューサーは結婚しても仕事続けると思うけどなぁ」
「俺も…そう思う」
「でもでもー!プロデューサーちゃんが結婚しちゃうなんて嫌っすーー!!」
「シキはプロデューサー大好きだもんなぁ」
「なんでっすか!?みんなプロデューサーちゃんのこと好きじゃないんすか!?」
…そんなこんなで、カラオケに行くはずだったHigh×Jokerの5人は、四季が駄々をこねまくった結果、プロデューサーのお見合い場所であるホテルにやってきた。
「…これ、そもそも尾行じゃないですよね」
「そ、そこはどうでもいいんすよ!」
「とりえず、ホテルまでは来たけど…このホテルのどこなんだ?」
「うっ、そこまではわからないっす…」
まず目星をつけよう…とホテル内を確認するため、案内図を見る5人だったが…
「レストランとかカフェとか、10個以上あるよ…!?」
「さすがに、お見合いでビュッフェはないんじゃないですか?」
「…バーも、まだ開いてないみたいだよ」
「それでも全然候補絞れないな…」
そして、色々なレストランを覗いた結果――
「どこもめちゃくちゃ高い…!」
「コーヒーが1300円!?ドーナツが10個以上買えるぞ…!?」
「さすが、有名ホテルっす…!」
「ちょっと!恥ずかしいから、そんなことで騒がないでください!」
「あそこのカフェなら…どう、かな…?」
ハイジョーカーの面々が入れるのは、ギリギリカフェのみ…だったが、カフェにはプロデューサーが見当たらなかったため、5人はロビーで行きかう人を眺めることにした。
「お見合いが何時からかは知ってるんですか?」
「…知らないっす…」
「ここを通るかもわからないよなー。入口いっぱいあったし」
「あんまり、ここに長く居ても…邪魔になっちゃう、かな?」
「そうだなぁ…」
と、みんなが諦めかけた頃――
「き〜み〜た〜ち〜〜?なんでここにいるのかなぁ〜〜〜?」
「ひぇっ」
思わず、隼人が小さく叫ぶ。
普段とは違う、綺麗に着飾った格好とは裏腹に…仁王立ちするプロデューサーが、聞いたことのないほど低い声で5人に声をかけたのだった。
ホテルの中では他の人の迷惑になるから、とプロデューサーと5人はホテルから少し離れた公園にやってきた。
「で?言い訳があるなら聞いておくけど?」
(綺麗な格好で凄むと、いつもより迫力があるな)と春名は思ったが、黙っておいた。
「ごっ、ごめんなさいっす!オレがワガママ言って、みんなに着いてきてもらっただけで…!」
「…まあ、着いてきた時点で俺たちも同罪、だよな。ごめんなさい」
「すみません、僕が止めるべきでした」
「ごめんなさい…」
「ごめん、プロデューサー」
素直に謝る5人に、これ以上は…とは思ったものの、プロデューサーは心を鬼にして、苦言を呈した。
「あのね、君たちはアイドルなの。普通の高校生よりずっと注目されてるの。高級ホテルで騒いでましたーなんて週刊誌にでも書かれたらどうするの。しかも、場所が場所だし…噂には尾ひれがついていくものなんだからね!」
(年齢とホテルの格的に、ないとは思うけど…何があるかわからないし)
と、頭に浮かんだ下卑た単語だらけの週刊誌のあおりを打ち消し…
改めて謝る5人を見て、プロデューサーは、ふう、と息を吐き、眉を緩めた。
「――はい、お説教終わり!四季、今からだったらカラオケ付き合ってあげる!」
「ほんとっすか!?やったー!!」
「…お見合いは、終わったの?」
「終わった終わった!あんなのと結婚するくらいなら、一生独身でいーや!」
「プロデューサーがそんな風に言うなんて、相当ヤバい奴だったのか…?」
「そうなったら、High×Jokerに養ってもらうので!よろしく!」
「えぇっ!?それってどういう…!?」
「その場合は、それに見合うプロデュースをお願いしますね」
「もちろん!」
そう言っていたずらっぽく笑うプロデューサーに、さっきまで感じていた距離――着飾った姿に感じてしまった疎外感のような…プロデューサーが、自分たちよりも年上の『大人』の『女性』であること――それを忘れ…5人はプロデューサーを囲んで、カラオケに向かうのだった。