「プロデューサー!」
「んー?なにー?」
「ニューヨーク行く仕事ないかな!?」
事務所に興奮した様子で入ってきた春名は、開口一番そう言った。
…なんでニューヨーク?
「えらく具体的だね。なにが目的?」
「これ見てくれよ!」
そう言って差し出された春名のスマホには『ニューヨークで話題沸騰!スパゲッティドーナツ』という記事が映し出されていた。なるほど。
「さすが春名…でもごめん、ないわ」
「だよなぁ…」
「まぁこうやって記事になってるってことは、そのうち日本にも来るんじゃない?」
「そうかもしれないけどさー。まだ店舗販売はやってないらしいし、結構時間かかると思うんだよなー…存在を知ってしまったからには、少しでも早く食べたいんだ…!」
がっくりと肩を落とす春名に軽い気持ちでフォローしたものの、ドーナツへの情熱は抑えられないらしい。
High×Jokerがもっと実力をつけてきたら、もしくはうちの事務所に資金力があれば、ニューヨークでレコーディングをすることもあるのかもしれないが…どちらも今のところ、難しい。
ニューヨークにHigh×Jokerが行くのと、日本にスパゲッティドーナツが来るの、どっちが早いだろう…
「う、うーん。じゃあ甘党会で再現してもらうとかは?あ、でもボロネーゼとかカルボナーラとか…味は限りなくスパゲティなんだね。甘くないのか…」
自分のスマホで検索して、いくつか記事を見てみると、ドーナツなのは形だけな気はするけど…
でも、そういう問題ではないんだろう。
イタリアのナポリ地方の家庭料理の具入り厚焼き卵のレシピをもとに…とかあるし、作れないことはなさそうな感じがするけどなぁ。
「でもお願いしてみたら?」
「そうだよな…なければ作ればいいんだよな!ありがとう、プロデューサー!」
未知なることに挑戦する男、といった感じの顔になって、春名は東雲さんを探しに行った。
いい顔だった…が。
「その情熱を勉強に向けられればなぁ…」
この間もテストやばいって言ってたじゃないの。
…大丈夫かな。
×××
それから、甘党会だけに留まらず、315プロ内の料理得意なメンバーを巻き込んでの再現がはじまった。
再現と言っても、そもそも誰も正解を知らないわけで…かなりの試行錯誤が繰り返されたらしい。
負けず嫌いな人多いしねー…
そして数週間後、315プロの総力を結集して作られた『スパゲティ・ドーナツ(仮)』はとても美味しかった。
もうお店出したらいいんじゃないかな…と思ったら、Café Paradeで試しに出してみるそうだ。
うちの事務所、やっぱりすごい人たちの集まりだわ…
「オレ、この事務所に入ってよかったよ…!」
「うん、嬉しいけど、そのセリフは別なところで聞きたかったな!」