Jealousy〜case02:秋山隼人



「あ、プロ…」
「プロデューサーさん!」

事務所に来て、プロデューサーに声をかけようとしたら、他のアイドルに先を越されてしまった。

今日も、プロデューサーはみんなに囲まれてる。
プロデューサーは事務所にいると、難しい顔でパソコンの前に座っている時や電話の時以外、誰かしらがそばにいる気がする。

…俺だけのプロデューサーじゃないことは、わかってる。
いつも俺たちのために、遅くまで忙しく働いてくれていることも、知ってる。
だけど…もっと俺のこと見てほしいし、もっと話したいって、どうしても思ってしまう。
自分の子供っぽさがいやになるよ…


プロデューサーたちから離れて、1人でラウンジのテーブルに突っ伏す。
う〜〜もやもやする……はぁぁ。
……特大のため息が出ちゃった。
情けないなあ、俺。
ちょっと時間をおいて、落ち着いたらまたプロデューサーのところに行ってみよう。
あ、でも、外出しちゃわないかな…予定だけでも確認してくればよかったな。


そうやって、うじうじと考えこんでいたら。

「はーやーとっ!」
「わっ!?」

いきなり声をかけられて、椅子から転げ落ちそうになった。
しかも、プロデューサーのことを考えてた時にプロデューサーから呼ばれたから、心臓がバクバクいってる。

「ご、ごめんごめん。そんなに驚くとは思わなくて…」
「う、ううん、大丈夫…なに?プロデューサー」

体勢を立て直すと、プロデューサーはなぜか腕を広げていた。

「おいでー?」
「えっ、な、なんで」
「いいからいいから」

そう言うプロデューサーの意図がわからないまま、立ち上がっておずおずと近づくと…
ぎゅっと抱きしめられた。
柔らかい体温に包まれて、ドキドキして慌ててしまう。

「ちょっ…プ、プロデューサー!?」
「最近ちゃんと話せてなかったし…見てあげられてなくて、ごめんね。隼人がいつもリーダーとして頑張ってくれてるから、つい安心しちゃって…」

…なんで、わかったんだろう。
もしかして、さっき気付いてたのかな。
それとも俺、そんなにわかりやすかったかな…

「何か気になることとか、不安なこととかあったら、相談してね。仕事のことだけじゃなくて、それ以外のことでもいいし。私もまだまだ未熟だし、頼りないかもしれないけど…サポートできることは、なんだってするからね」

頭をぽんぽんと撫でながら、プロデューサーが優しい声で話してくれる。
それだけで、さっきまでもやもやして、うじうじしていた心が、ふっと軽くなるようだった。
その優しさに、つい甘えたくなって…おそるおそる抱きしめ返したら、思った以上に柔らかくて、ドキドキしてぱっと離れてしまった。

「えっと…その…ありがと、プロデューサー。プロデューサーは頼りなくなんかないよ!いつも頼りにしてるから」
「そうかな?そう言ってもらえると、嬉しいけど」
「もし、今時間があるなら…次の曲のことで相談があるんだけど…」
「もちろん、いいよ!」

プロデューサーは笑顔でそう言って、また俺の頭を撫でた。

…嬉しい反面、子供扱いされてることに、ちょっとひっかかるけど。
子供なのは事実だし、それをプロデューサーに対して怒るのは筋違いだよな。

いつかこのひとに「かっこいい」って思ってもらえる、大人の男になりたい。
それで、俺がプロデューサーを支えられるようになれたら、もっといいな。

――そっと胸に灯ったあたたかいものがなんなのか、今の俺にはわからないけれど。
これは大事にしていていいもの。それはわかるから。
このあたたかいものを…今は、俺の胸のなかだけで大事にしていこう――




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