お見合い狂想曲〜舞田類編〜



「プロデューサーちゃん!Matchmakingするってホント?」

このところ、315プロダクション内で囁かれる噂。
その噂のせいで落ち着かないアイドルが多数いるため、その噂の真偽を確かめるべく、類はプロデューサーを会議室に呼び出して、話を切り出した。

「まっち…?えっ、あっ、もしかしてお見合いのことですか…?」
「Exactly!事務所中のウワサだよ!」
「えええー…それは…お騒がせして申し訳ないです…私はしたくないんですよ?したくないんですけど…!!」

プロデューサーは不本意であることを強調したかと思うと、がっくりと肩を落とした…
と思うと、一瞬の間の後、ひらめいた!という風に勢いよく身を起こした。

「そうだ!類さん!!恋人のフリとかお願いできないでしょうか!彼氏がいることがわかれば、親も退いてくれるはず…!」
「Really?俺が?」
「…ダメですか?」
「Ummm....光栄だけど、恋人のフリは嫌だなぁ」
「あうう…そうですか…」

類ならノリよく引き受けてくれるのでは、と期待していたプロデューサーは、再びがっくりと肩を落とす。
しかし、類はにっこりと笑ってプロデューサーに近づいた。

「勘違いしてるみたいだけど…俺はね、『フリ』が嫌なんだよ」
「へ?」
「恋人の『フリ』じゃなくて、本当に付き合っちゃおうよ☆」
「えっ!?」
「俺は、プロデューサーちゃんのこと大好きだから、Not a problem♪」
「えっ、えぇっ!?」

いつものように、明るく笑顔でさらりと言う類。
突然のことに、プロデューサーはただただ驚くことしかできなかった。

「プロデューサーちゃんも、俺に恋人のフリを頼んでくれたってことは、俺のこと嫌いじゃないよね?」
「え、あ、はい、嫌いなわけないです!で、でも…」
「まずはお試しからでも構わないからさ!ご両親に挨拶に行くまでには、Perfectな君のHoneyになってみせるよ☆」
「ちょ、ちょっと待ってください。展開についていけないんですが…いや、恋人のフリをお願いしたのは私なんですけど…えーと…」

今までそんな風に考えたことなかったし、それにアイドルとプロデューサーなのに…とプロデューサーは、類を制した。
類はきょとんとしたあと、すぐに笑顔になって「それもNot a problem!!」と言い放った。

「俺はずっと前から、プロデューサーちゃんのこと可愛いなって思ってたし、女の子として好きだよ!」
「えええええ…!?は、初耳ですよ…!」
「確かに、初めて言ったけど…隠してたつもりもないんだけどなぁ」

ぼぼぼ、と真っ赤になるプロデューサー。
その様子に苦笑して、類はプロデューサーに向き直った。

「…じゃあ、改めて言うね。俺は、プロデューサーちゃんの事が大好きだよ。俺を、プロデューサーちゃんの恋人にしてくれる?」

さすがに少し頬を赤くしながらも、類は真っ直ぐな瞳で、プロデューサーを見て言い切った。
その視線に射止められたプロデューサーは、真っ赤なまま、しばし固まり、しばらく逡巡し……そして。

「よろしくおねがいします…」

と、消え入るような声で返事をした。
その言葉を聞いた類は、喜びに目を輝かせて、プロデューサーに抱きついた。

「やったぁ!!!Love you!!プロデューサーちゃん!!」
「わわ!!」
「久しぶりにこんなに緊張したよーー!!I'm so glad!!」

ぎゅうぎゅうと抱きつかれ、最初は戸惑って硬くなっていたプロデューサーも、類の喜びように嬉しくなって、そっと類を抱き返した。
それに気づいた類は、さらに強くプロデューサーを抱きしめた。

「く、苦しいですよ、類さん」
「Oh,sorry!嬉しくって、つい」

えへへ、と苦笑して、類は身を離した。

「それじゃ早速、Matchmakingは断ってね!」
「あ、は、はい…でも、いきなり会うのは難しいですし…言葉だけで信用してもらえるかな…」
「2ショットの写真を送ったら、納得してもらえるんじゃないかな?」
「なるほど!」
「Strike while iron is hot!プロデューサーちゃん、スマホ貸して?」
「はい、お願いします」

類さんの方が私より自撮得意だよね、と、言われるがままプロデューサーは自分のスマホを手渡した。

「ほら、もっとくっついてー!」
「は、はい」

画面に収まるようにぎゅっとくっつき、スマホを掲げて角度を調整する類。

「じゃ、行くよ!まいたー?」

S.E.M特有の写真撮影の掛け声を言う類に(あ、ここでもそれなんだ)と少しおかしく思いながら、プロデューサーはスマホを見つめ、掛け声の続きを口にした。

「るー…いっ!?」

パシャリと音が鳴る前に、スマホに視線を向けていたプロデューサーの頬に、柔らかな感触が触れた。
撮れた写真をチェックした類は満足気だ。

「ふふ、可愛くとれたよ、My baby!これなら納得してもらえるんじゃないかな♪ほら見て!」
「こっ…これを両親に送れと…!?」

写真を見て再び真っ赤になったプロデューサーは、その写真を両親に送るまで、類に離してもらえないのだった――




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