Jealousy〜case04:渡辺みのり



「プロデューサーってモテるよねえ」
「わっ!…みのりさん、どうしたんですか、藪から棒に」

仕事から帰ってきて、食事を済ませ、スマホをいじりながらぼんやりとテレビを見ていると、なまえはみのりに背中からのしかかられた。
いつもと違うみのりの様子に、なまえはテレビを消して、スマホも置き、みのりに向き合った。

「…藪から棒じゃないよ。ずーっと思ってたんだ。うちのアイドルにはもちろん、テレビ局のスタッフさんとか、スポンサー会社の人たちとか…今日行ったカフェの店員さんだって、ずっとなまえのことを見てたよ」
「うーん、そんなことないと思いますけど…」

まあ座ってください、とぽんぽんとソファの隣を指すと、みのりは素直にそこに座り、こてんと頭をなまえの肩に乗せた。

「ふふ、今日はなんだか甘えん坊さんですね」
「だって…改めて、なまえはモテるんだなあ、って思って」
「アイドルやってるみのりさんが、それ言っちゃいます?そんなこと言ったら、みのりさんの方がずっとずっとモテてますけど…まあ、そのアイドルであるみのりさんをプロデュースしているのは、私なので…モテてもらわないと困るんですけどね」

そう言うと、なまえは苦笑した。

「…なんか、ごめんね。かっこわるいなあ、俺」
「ふふ。いいえ、そんなことないですよ。こちらこそ不安にさせてごめんなさい。でも、ヤキモチ焼いてくれて嬉しいです」
「……はあ、俺の恋人は、なんて出来た人なんだろうなあ。自分が恥ずかしくなってきちゃうよ」

珍しく弱気なみのりが可愛らしく思えて、なまえはその手を取り、頬を寄せた。

「……大丈夫ですよ」
「どうして?」
「私がモテてるんだとしたら…みのりさんのおかげですから」
「え?」
「みのりさんとお付き合いをさせてもらってから…友達によく『綺麗になったね』って言われるんですよ。自分で言うのも、どうかとは思いますけど…確かに、身の回りのもののセンスが、よくなった気がするんです。みのりさんとお付き合いをする前は、清潔感があって、最低限身だしなみが整っていればいいと思っていたので、割と適当でしたし」

綺麗に整えられた自分の指先を眺めて、なまえは過去の自分を思い返しながら話を続けた。

「あと、最近は精神的に余裕が出来て、穏やかに過ごせるようになりましたし…それもこれも全部、みのりさんのおかげなんです。だから、私がモテているのだとすれば…その理由は、みのりさんが隣にいてくれてるから…ですよ」

少し照れながらも、そう言いきったなまえを、みのりはがばっと抱きしめた。
なまえはそれを黙って受け入れて、ぎゅっと抱きしめ返した。

「ふふ、だから、心配無用ですよ。私は、みのりさん一筋です」
「…ほんと、俺の恋人にしておくのはもったいないかもしれない…けど、誰にも渡せないし、渡さないよ」
「はい、手放さないでもらえると嬉しいです」

どちらからともなく抱きしめ合っていた腕を解くと、2人は額を合わせて見つめ合った。

「ありがとう、なまえ」
「こちらこそ、ありがとうございます。これからも、何かあったら遠慮なく言ってくださいね」
「うん。なまえも…ね」
「はい。プロデューサーとしても…恋人としても、遠慮なくいかせていただきます」
「ははっ。本当に、頼もしいな」

みのりがなまえの頬に手を添えると、なまえも同じようにみのりにそっと触れた。

「…大好きだよ、なまえ」
「私も、だーい好き、です」

額を合わせて微笑むなまえに、みのりはたまらなくなり、柔らかいキスを何度も繰り返し…
そうしてそのまま、2人は甘い夜に落ちていった――




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