1÷2だって1以上!



うだるような暑さが続く、夏のある日。

買い出しを済ませて戻ってきた315プロ事務員のなまえと、ソロでの仕事のために、珍しく1人でやってきた315プロ所属アイドルの悠介は、事務所の近くでばったり鉢合わせた。

「あ、おっはよー!なまえさん!」
「おはよう、悠介くん」
「その荷物…買い物してきたの?」
「うん。文房具とか、細々したものが足りなくなっちゃって」
「そっか、暑いのにお疲れさま!あとちょっとだけどさ、オレ荷物持つよ!」

そう言って悠介は、なまえの持っていた荷物をさらった。
そんなに重たい荷物ではなかったけれど、なまえは有難く悠介の厚意に甘えることにして、微笑んで礼を言った。

「ありがとう、助かります」
「どういたしまして!それにしても、今日もあっついねー」
「ほんとだね…ちょっと外出ただけでバテちゃう…」

そんなやりとりをしながら、2人で並んで歩いていると、あっという間に事務所に着いた。
ビルに入り、ようやくジリジリと肌を焼く太陽の光から逃れられたなまえは、ふう、と息をつく。

「おはようございまーす!」
「ただ今戻りましたー」
「はー涼しい〜〜」

事務所の涼しさに「生き返る〜〜」と言うものの、暑さは簡単には治まらず、各々でパタパタと手であおぎ、タオルで汗を拭う2人。
持っていたペットボトルのドリンクを飲み干したものの「うう、ぬるい…」と顔をしかめる悠介を見て、なまえが何かを思い出したように「あっ」と声をあげた。

「昨日プロデューサーさんがたくさん買ってきてくれたアイスがあるんだった!まだ冷蔵庫に残ってたと思うんだけど…ちょっと待っててね!」

そう言って、なまえは冷蔵庫を覗いた。
しかし…

「ありゃー…もうこれしかないや…」

中には、チューブ型のアイスが2本セットで入っているタイプのアイスが1袋しか残ってなかった。
食べ盛りのアイドルだらけのこの事務所では、あっという間に食べ物がなくなっていくのが日常茶飯事だ。
むしろ、1つでも残っていたのが奇跡かもしれない。

「ごめん悠介くん、これしかなかったんだけど…半分こしない?」
「え…半分こ?」
「うん…って、やっぱり半分じゃ少ないよね。新しいの、買ってこようか」
「ううん!それ半分こしようよ!」
「そう?じゃあ…」

食い気味に返事をしてきた悠介を微笑ましく思いながら、アイスの袋を開けて、2本を切り離し、1本を悠介に手渡しすなまえ。

「はい、どうぞ」
「ありがと!」

悠介はキラキラとした目でそれを受け取り、大事そうにそのアイスを眺めた。
そして何故だか上機嫌で、両手の中でコロコロとアイスを転がしている。

その様子を(普通のアイスだよね…?これ、好きなのかな?)と、なまえが不思議そうに見ていると、それに気付いた悠介は、はにかむように笑った。

「へへ、享介以外の人と半分こするの、初めてなんだ!」
「ああ、なるほど」
「初めてがなまえさんとで嬉しいな!」
「えっ」

悠介の言葉と表情に、一瞬、なまえは動きを止めた。
けれど、悠介からのそれ以上のアクションはなく、アイスに口をつけはじめていたので、なまえは、考え過ぎか、と苦笑して、自身もアイスを食べたはじめた。

「美味しいねー」
「うん。冷たいのが、熱い体にしみ渡る感じ!」
「ふふ、ほんとだね」
「それに、なまえさんと半分こしたから、もっと美味しいのかも!」

そう言ってまた、へへ、と笑う悠介。
――そこに深い意味があるのかないのか、わからないけれど。
とりあえず悠介くんが嬉しそうだし、アイスも美味しいから、いいか!と、なまえも自分の分のアイスを堪能するのだった。




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