君の熱



とある真冬の日。

「うー…明日も寒そうだなぁ…」

私は一日の最後に、テレビの天気予報を確認して呟いた。
明日も一日中、一桁の数字が日中の温度として並んでる。
冬ってそういうもの、とは思うし、北の方に比べたら、都内なんて大したことないんだろうけど…寒がりの私には、ツラい毎日だ。
いっそ雪が積もれば、テンションあがるんだけどな…なんて。
もちろん、積もったら積もったで、通勤が大変になるし困るけど…
そんなことを考えながら、私はテレビを消して、ベッドへと向かった。


ベッドでは、既に恋人である恭二が微睡んでいた。
出来るだけ外の冷たい空気をいれない様に、するりと布団にもぐりこむ。
…が。

「つめて…」

私の足の冷たさに、恭二は目を覚ましてしまったようだった。
…寝起きの悪い恭二が目覚めるんだから、私の足の冷たさは相当のものらしい。

「ごめんごめん」

そうは言いつつ、暖をとろうと、私は冷たい足を恭二に絡めた。
すると、恭二は眉を顰めながらも、ぎゅっと抱きしめてくれた。
はあ、あったかーい…いつもは、冷たい布団が暖まるまでなかなか寝付けないけど、今日はおかげさまですぐ寝れそう。
せっかく恭二といるんだから、そんなすぐには寝たくないけどね!


「風呂入ったんだろ?なんでこんなに冷たいんだよ…」
「そうなんだけど…冷え性だからさぁ。いつもこんなもんだよ」
「マジかよ」

恭二はもぞもぞと、長い足で私の足を包んでくれる。
そして、思いついたように私の手に触れると、手も冷たいことに気付いて、指先を絡めてくれた。
恭二は私よりずっと大きいから、全身が幸せな暖かさに包まれていく。

「えへへ、ありがと。恭二、あったかーい」
「…俺は湯たんぽか?」

私は、そう言って苦笑する恭二の胸に顔を埋めた。
ふふ、恭二のにおいだ。落ち着くなー…

「…今度、一緒に布団乾燥機見に行くか。布団、暖められるし」
「んー…恭二がこうやって暖めてくれれば、大丈夫だよ」
「毎日そうしてやれればいいけど…そうもいかないだろ。女の人は、身体冷やさない方がいいって聞くしな」

そう言ってくれるだけで幸せだよーー!
私が嬉しさでぎゅうぎゅうと抱き着くと、恭二は笑って抱き返してくれた。

「恭二とこうやって抱き合って、冬眠出来たらいいのになー…」
「なんだそれ。…まあ、わからなくはないけど」
「それか、冬は沖縄で、夏は北海道で過ごすの」
「はは、贅沢だな」


そんな風に話していると、冷たかった手足がぽかぽかと暖まってきて、同時に瞼が重たくなってきた。
うう…もっと、恭二とたくさん話したいのに…

「…暖まったか?」
「うん…」
「眠い?」
「ん…」
「そのまま寝ていいんだぞ」

この暖かさに溺れていきたい気持ちと、恭二ともっと話していたい気持ちが相反する。
その様子が面白かったのか、恭二はふっと笑って、私の頭を撫でて、優しく髪を梳いていく。
その心地よさに、ますます私は眠気に引きずられてしまう…うー…ね、む…

「せっかく、きょーじといる、のに…もったいな…」
「…今日だけじゃないんだから、さ。明日も早いんだろ?」
「んー…」

そう、なんだけど…
だめだ、もう…

「俺、明日も来るからさ。だから、今日はおやすみ、なまえ」
「ほんと?うれし………おや、すみ…」

それだけなんとか返すと、私は幸せな暖かさに包まれて、眠りへと落ちたのだった――




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