お見合い狂想曲〜ピエール編〜



ダンスレッスン前の準備体操の、ストレッチ中。
Beitの3人はぐぐーっと体を伸ばしながら雑談をしていた。

その中で、そういえば、と思い出したように、みのりが話を変えた。

「プロデューサーが、今度お見合いをするんだって」
「お見合い…マジっすか」
「おみ、まい?」
「『お・み・あ・い』だよ、ピエール」

うへえ、と嫌そうな顔をする恭二。
それに対して、意味が分からず、きょとんとするピエール。
みのりが意味を説明しようとしたが、そこでダンスの先生が入ってきて、レッスンがはじまったため、ピエールは意味がわからないままに終わってしまったのだった。


そして、その次の日。
プロデューサーと2人きりで雑談している最中に『おみあい』の意味をみのりに聞きそびれていたことを思い出したピエール。
わからないことをわからないままにしておきたくない!と、ピエールは直接プロデューサーに尋ねてみることにした。

「プロデューサーさん!」
「んー?なぁに、ピエール」
「『おみあい』って、なに?」
「うえっ!?ま、まさか…ピエールの耳にまで入っちゃったの…」

ピエールはごく素直に、プロデューサー本人に『おみあい』の意味を尋ねたのだが…
プロデューサーがどんよりと表情を曇らせて「したくないんだよ…する気はないよ…お母さんが勝手に暴走してるだけで…」とうつろに言うので、ピエールは心配そうに覗き込んだ。

「『おみあい』…よくない、こと?」
「う、うーん…場合によりけりだと思うけど…今の私にとっては、あんまり喜ばしくはないかな…え、えーと…お見合いって言うのはね…」

かくかくしかじか。
できるだけわかりやすいように、端的に説明すると、ピエールは目を丸くした。

「結婚…?プロデューサーさん、結婚しちゃうの!?」
「いや、そんなお見合いしたからってすぐには…ていうか、お見合い自体したくてするわけじゃないし…!」

結婚と聞いて、驚いた後に、寂しそうにしょんぼりと肩を落としてしまったピエール。
申し訳ないことをしてしまった…と思う反面、そんなに寂しがってくれるなんて嬉しい、とプロデューサーは心の中でそっと喜んだ。


しばらくして、自分の中で気持ちの整理がついたらしいピエールは、すっと顔をあげた。

「…プロデューサーさんが『おみあい』しちゃうの、寂しい…けどボク、応援、する!」

そう言って、けなげに笑って見せるピエールに、プロデューサーの心は射抜かれ――色々なものが、鷲掴みにされた。


そんなことには気付かないピエールが心配そうに、ぶるぶると震えるプロデューサーに手を伸ばすと…

「しないよ!!!!」
「わっ!?」

プロデューサーは勢いよく顔を上げたかと思うと、その手をがっと掴んで、そのままピエールを抱き寄せた。

「しない!ていうか、できるわけないし!!私はピエールの、Beitのプロデューサーなんだから!!!結婚なんてしない!!お見合いも断ってくる!!!」

ぎゅうううとピエールを抱きしめながら、プロデューサーは決意を固めた。
そして。


「私には、生涯を捧げた人たちがいるの!!守らなきゃいけない天使がいるの!!!!!」

お見合いを勧めてきた母親に電話でそう言い放ったプロデューサーは、多くの誤解を生み、ちょっとした騒動を起こしながらも、なんとかお見合いを回避することに成功したのだった――




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