――サンタさん、サンタさん。
どうか私の枕元に採用通知をください。
少なくとも私が働いている間は、倒産しない会社からのものがいいです――
街には賑やかなクリスマスソングが流れ、楽しそうな人たちばかりが目に入る。
転職活動用の地味なスーツに身を固めた私は、世界に置き去りにされているようだ。
あーダメダメ!
自分がこんな状態だからって、他の人を妬むのはよくない…!
私はふるふると首を振って、暗い感情を振り払った。
先日働いていた会社が倒産し突如無職になってしまった私は、クリスマス当日にも関わらず、今日も転職活動中である。
なんとか、年を越す前に決めたいよぉ…!
今日は面接が2件あって、1つは先ほど終わった。
けれど、面接官がイヤな感じで…
正直、採用されたとしてもここではちょっとな…と思ってしまったので、次にかけたいところだ。
早く決めたいのは山々だけど、慎重に行かないと…
また転職活動しなきゃいけなくなっちゃうもの…!
そうして私は、2件目の面接に指定されたビルに着いた。
目的の会社…今回はアイドルの事務所だ。
次は長く働きたいから、条件を厳しめに考えているけれど、代わりに業種はあまり絞らずに幅広く探してる。
芸能人だ、アイドルだ!って舞い上がっちゃって仕事が手につかないとか、そういうことはない…と思う。たぶん。
階段を登って呼び鈴を押すと、大学生くらいの物腰柔らかな人が会議室に通してくれた。
バイトの方だろうか。
お茶まで出してもらって「少々お待ちください」と1人にされると、私はそっと息をついた。
あーー緊張する〜〜〜…面接にはなかなか慣れないなぁ。
慣れるほどの回数を繰り返したくはないけどね…!
しばらくすると、先ほどの人とは別の優しそうな人がやってきて「お待たせしました。この事務所でアイドルのプロデューサーをやっている石川、と申します」と丁寧な挨拶をもらい…面接が始まった。
――トントン拍子、というのはこういうことを言うんじゃないだろうか。
今回の面接は、今までの面接と違っていた。
目の前にいる石川さんは、初対面、しかも採用面接なのに、全然堅苦しくなくて、かと言ってラフすぎていたり、偉そうなわけでもなく、とても話しやすい人で…
いくつかの質問をされて、気付けば具体的な条件や、働き始められる日の相談になっていた。
普通、こんなスピード感で決まるのは、それはそれで危機感を感じるべきところなんだろうけど…
仕事は忙しそうだけど、提示された条件は申し分なかった。
そして何より、面接を受けていて初めて「この人と一緒に、ここで働きたい」と思ったのだ。
なんだろう…安心感?包容力?
私とそこまで年は離れていなそうな気はするけれど、年齢以上のものを、目の前の石川さんには感じた。
この人となら、辛い仕事でも乗り越えられそうな…そんな気がする。
私がここで働きたいと感じたように、石川さんにも採用したいと思ってもらえたようで、気付けば雇用契約書まで手元にある。
さすがに、ハンコを持ち歩いてはいないので、その場で即…とはならなかった。
気持ちとしては完全に働き始める方向だけど、一晩考えた方がいい気もするので、明日正式のお返事をさせてもらうことになった。
…多分、この気持ちは変わらないけれど。
「なんだか急かしてしまってすみません。僕としては、ぜひみょうじさんに一緒に働いていただきたいので、ご検討よろしくお願いします」
「はい、ありがとうございます!こちらこそ、ぜひ働かせていただきたいと思いますので、明日改めてご連絡させてください」
サンタさん、ありがとう。
おかげさまで、無職のまま年を越えずに済みそうです。
よーし!帰ったらまず、所属アイドルの勉強だー!!
きっと年越し系の特番とか、イベントとかもいっぱい出てるよね…頑張ってチェックするぞー!!
Merry Christmas with 315Production!! 