とあるPの一日。(後編)



‐their homework‐

電話をあちこちにかけたり、メールをもりもりと書いたり返したりしていたら、いつの間にかもふもふえんの3人が事務所に来ていた。
静かだなと思ったら、今は学校の宿題中のようだ。

「みんな、お疲れ様ー宿題の進み具合はどうー?」
「あっ、プロデューサーさん。ボクはもう少しで終わりそうです」
「かのんも〜!これが終わったら、みんなで台本の読みあわせだよね!」
「うっ、オレも、もう少しだし…!うう、この問題がなー…」

志狼くんががしがしと頭をかいて悩んでいたので、どれどれと問題を覗き込む。
「ここは…こんな感じで…」とちょっとだけ口出しをすると、ひらめいたようでぱっと表情が変わり、残りはするすると解いていっていた。

…そして、しばらくすると。

「やったー終わったぜ!!あー宿題したらハラ減ったー!」
「机の上を片付けたら、少し休憩してから台本読もうか」
「さんせーい!かのん、のど乾いちゃった」
「そういうと思って、お茶淹れておいたよー。東雲さんが持ってきてくれたお菓子もあるよ」

そう言ってお茶とお菓子を出すと、テンションの上がる3人。
可愛いなぁ。

「いえーい!いっただっきまーす!!……うめー!!」
「わーい、そういちろうくんのお菓子大好き!」
「ありがとうございます、プロデューサーさん。今度、そういちろうさんにもお礼言わなくっちゃ」

美味しそうにお菓子を頬張る姿に、さっきとは違うまったり感を感じる。
これもまた癒されるわ〜

それから私は、3人の台本の読み合わせを見守った。
もちろん、気になるところは口出しするけど…みんな幼いながらプロ意識の塊だし、ある程度演技プランは固まってきているから、そんなに私が口出すこともないのよね〜
本当に、うちのアイドルたちはみんな優秀で助かっちゃう!
その分、私は仕事持ってくるの頑張るからね!



‐meeting‐

さてと。
もふもふえんのみんなを賢くんに託して、私は来客の準備だ!
給湯室に向かうと、既に涼くんが準備をし始めてくれていた。

「準備してくれてたんだね、ありがとうー!」
「えへへ、どういたしまして!大吾くんと一希さんは、会議室の準備をしてくれてます」
「みんな気が利いてて助かる〜」

その場を涼くんに任せて会議室に向かうと、こちらも準備は万端だった。

「おーボス!お疲れさん!ここの準備はできとるぞ!」
「…お疲れ様です。今日も、よろしく頼む」

そしてすぐに、お客様がやってきた。
F-LAGSの次のお仕事は新作のスマホゲームの宣伝隊。
ゲームが好きな大吾くんは特に気合が入っているようだ。
撮影用に専用の衣装を作ってもらえる、しかも好きなキャラを選んでいいと聞くと、みんなのテンションが一段と上がった。

「ど、どうしよう…カッコイイキャラクターがいいなぁ…!」
「涼は、このキャラなんてどうじゃ?先生は…こっちのキャラはどうかのぉー?」
「…それなら、大吾はこのキャラクターだろうか。プロデューサーは、どう思う?」
「ふふ、迷っちゃうね。一旦、社内で相談させていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい、もちろんです。来週の金曜日までにお返事いただけると助かります」
「承知しました」

来週の金曜日ねーメモメモ。
前日に相談の時間とっておこうっと。

その後も打ち合わせは順調に進み…
次回は先方の制作現場に伺って、テストプレイをさせてもらえることになった。

「テストプレイでどれくらいできるのかわからんが、楽しみじゃのぉ」
「…それまでに、貰った資料を読み込んでおこう」
「キャラクターも決めなきゃですよね!」

3人には、それぞれやりたいキャラクターを考えてきてもらい、次の打ち合わせの時に相談して確定させようと伝え、その場は解散になった。



‐their homework again‐

打ち合わせが終わって一息つくと、今度は神速一魂の2人とCafe Paradeの巻緒くん、咲ちゃんの高校生組が宿題に頭を悩ませているようだった。
…と言っても、悩んでいるのは朱雀くんと咲ちゃんで、玄武くんと巻緒くんはそれぞれに教えているみたい。
ちなみににゃこは、少し遠い場所でくつろいでいる。

「サキちゃん、この問題は、さっきの応用でね…」
「…あー!わかったよ!ありがっとー、ロール!」
「朱雀、ここ抜けてるぞ」
「へっ…あ、ああー…1つずれちまったのか…」

宿題は大事だけど…そろそろ出ないと、この後のレッスンに間に合わなくなってしまうのでは。
今日はこれから、神速一魂とCafe Paradeは合同でダンスレッスンがあるのだ。

「みんなー、宿題中ごめんね。そろそろ、時間大丈夫?遅れそうなら、連絡しておくけど」
「ああ、もうそんな時間か…すまねぇな、番長さん」
「最後の一問だから!あとちょっとだけ待って〜!」
「オレも、これで一区切りつくからよぉ、待ってくれ…!」
「頑張って、2人とも!俺たちが片付けておくから」
「タイミング悪くてごめんね…!」

うーん、やっぱり学業との両立は大変だ…スケジュール見直した方がいいかなぁ。

4人がバタバタと支度をしはじめると、にゃこがぴょんと朱雀くんの肩に飛び乗った。
さすがだ。

「気にしないで、プロデューサー!宿題も終わったし、パピッとレッスン頑張っちゃうよ☆」
「それじゃ、いってきますね、プロデューサーさん!」
「朱雀のは自業自得…小テストの結果が悪かったせいで追加の課題を出されただけだから、番長さんは気にしなくていいぜ」
「うぐっ、それは言うなよ…!まあ、終わったからいいけどな!」
「宿題お疲れ様!レッスンも頑張ってね、いってらっしゃい!」

そうして慌ただしく4人は出て行った。
そうだ、今度のテスト期間聞いておかないと…それにあわせてスケジュール調整しよう。



‐TV station‐

私は事務所からテレビ局にやってきた。
JupiterとWが、スポーツ系バラエティ番組に出演するのだ。

スタジオに着くと、既に5人共着替えも準備運動も終わっていた。

「お疲れ様〜今日は優勝目指して頑張ってね!!」
「モチロン!オレたち任せてよ!」
「過去の放送回を見て、作戦もバッチリ考えてきたからね!」

私が発破をかけると、Wの2人が元気に笑った。

「俺たち5人なら、楽勝だぜっ!」
「優勝賞品、最高級のお肉だもんねー。当然、僕たちが優勝しちゃうよ」
「ふふ、みんなやる気満々ですよ。もちろん俺もです」

と、Jupiterの3人からも頼もしい返事が返ってくる。
…うん、衣装も靴ヒモも、みんな大丈夫なようだ。

スタッフさんから「そろそろ本番です」と声がかけられると、5人は冬馬くんを中心に円陣を組んだ。

「やるからにはてっぺんとりにいこうぜ!We are―」
「「「「「315!!!!!」」」」」

ふふっ、ライブと同じくらい気合が入っているみたいだ。

「怪我には気を付けてね!頑張って!」
「監督、サンキュ!いってきます!」
「オレたちの活躍、見ててよね!」
「僕も本気出しちゃうから、期待してていいよ♪」
「プロデューサーに勝利を捧げますね。それじゃあいってきます。チャオ☆」

様々な競技にチームで挑んでいく番組なんだけど…みんな、実力を遺憾なく発揮していて、チームワークもばっちりだ。
結果ももちろんだけど、何より5人共楽しそうで、目を奪われる。
さすがはうちのアイドルだ!

そうして、順調に勝ち進み…最後の競技でも、5人は見事勝利を収めた。
みんなが嬉しそうに、コメントをしていく。

「うっしゃー!これが俺たちの実力だぜ!」
「みんな、僕たちのカッコイイところ、見ててくれたー?」
「エンジェルちゃん、エンジェルくんたちの応援のおかげで優勝できたよ。ありがとう!」
「優勝できたのはもちろんうれしいけど、それ以上に、サイッコーに楽しかった!」
「サポーターのみんな、応援ありがと!これからも俺たちから目を離さないでよね!」

あと少し撮影は残っているけれど…
5人が優勝する瞬間は見届けられたし、私は次の現場へと向かうことにした。
事前にそれは伝えてはいたし、みんなにアイコンタクトしたら伝わったみたいだから、大丈夫だろう…!!
みんな、おめでとう!
また改めてお祝いしなくっちゃね!



‐photo shoot‐

Altessimoがすぐ近くでグラビア撮影をしているから、そちらへ向かわなくては。
麗くんは未成年だから、22時までに絶対に帰さないといけないのだ!

ダッシュでスタジオに入ると、どうやら撮影は終盤のようだった。

「お疲れ様です、都築さん!遅くなってすみません!」
「プロデューサーさん、お疲れさま。大丈夫だよ、すごく順調に進んで…あとは今撮っている麗さんの写真で終わりだって」

何度か撮ってもらってるカメラマンさんだからとお任せしてしまったけど、大丈夫だったみたい。
よかったー

それからすぐ、麗くんの撮影も終わった。

「来てくれたのだな」
「お疲れ様!うん、なんとか…終わり際でごめんね」

撮り終わったデータを3人で確認してみると…うんうん、いい感じ。
2人共、ホントに表情豊かになったなぁ…
特に2人で笑いあっていたあの写真、あれは絶対使ってもらおう!
お披露目が楽しみだ!

そう伝えると、麗くんは少しはにかみ、都築さんは柔らかく微笑んだ。

「ありがとう。自分ではよくわからないが…わたしが変わったのなら、貴殿のおかげだ。貴殿のおかげで、わたしの世界は広がった」
「そうだね…プロデューサーさんが居なければ、麗さんとも出会えなかったし…これほど様々な音を聞くこともなかったと思うよ」

ふふ、そう言ってもらえると嬉しいなぁ…って、ゆっくりしてる場合じゃなかった!
サクサク撤収しなくてはいけないんだった!

「ごめんなさい!急かして申し訳ないけど、麗くん、着替えて!都築さんも、うとうとしないでくださいー!」
「あ、ああ、そうだったな。都築さん急ぎましょう」
「んん…わかったよ」

そうして着替え終わった2人をなんとかタクシーに乗せ、スタッフさんたちのお礼をして、私は本日最後の現場へと向かった。



‐dinner time‐

ふわぁ…っていけないいけない。
これが今日最後の現場なんだから、しゃっきりしないと!!

「プロデューサーちゃん、good evening!お疲れさま!」
「もしかしなくても、もう撮影終わっちゃいました!?すみませんー!!」
「問題ない。とてもスムーズに撮影が進行した結果だ」
「予定よりだいぶ早いもんねぇ。気にしないでよ」

現場につくと、S.E.Mの3人が気を抜いてまったりしていた。
予定だと、あと1時間以上はかかったはずなんだけどな。

メイクを落とす3人に、今日の撮影の報告を聞いた。
ふむふむ…ドラマも終わりが近いからチームが出来上がっており、結果、スムーズに進んだということのようだ。
それならよかったー


「よし、忘れ物はないな。帰宅しよう」
「プロデューサーちゃん、dinnerは食べた?まだだったら、俺たちと一緒に食べようよ!」
「ぜひー!」
「それじゃ、みんなでご飯に行きましょうかね〜」

スタッフさんたちに挨拶をして、私たちは最寄り駅へと向かった。

「何がいいですかねー。食べたいものあります?」
「うう〜ん、夜遅いから、おじさんは軽めなものがいいなぁ」
「明日も早い時間から撮影がある。脂ものは控えた方がいいだろう」
「そうですねえ…和食がいいかな…あ!この近くに美味しいおうどん屋さんがあるんですよ、そこでどうでしょう?」
「I agree!!Let's go eat Udon☆」

そうして、4人で今日の撮影のこと、これからの仕事のことを話しながら、まったりとうどんを食べた。
夜遅い大人の夕食に最適だな〜
特にこのお店は、ほっとする味なんだよねぇ…

食事の後は、さくっと解散して帰宅した。
送ってくれると言ってくれたが、遠回りになってしまうからと固辞した。
代わりに、帰宅報告をすることになったけど。
そこまで遅くもないし、今日はお酒も入ってはいないのだけれど…心配してくれるのは有難いことだ。



‐midnight‐

ただいま我が家!
S.E.Mの3人へ帰宅報告とおやすみ連絡をし終わって、私はソファーにどかっと座り込んだ。

ふわ〜今日は特に予定がみっちりだったから、つっかれたーー
ねむ…

……いや!あと1件!残ってる!

すると、すぐにスマホが震えた。
輝さんから電話だ!
DRAMATIC STARSの3人は今、地方で映画撮影中なのである。

「お疲れ様です!」
「プロデューサー、今大丈夫か?」
「はい、大丈夫ですー!さっき家に帰ってきたところです」
「遅くまでお疲れさまです、プロデューサー」

翼さんの声も聞こえるが…あと1人の声が聞こえない。

「薫さん、居ますー?起きてますー?」
「…居るし、起きている」

そんなめんどくさそうに言わなくても〜電話なんだから、喋ってくださいよぅ。

「今日の撮影はどうでした?そっちは、天気があんまりよくなかったみたいですけど」
「ああ。だから、予定を変更して、室内撮影を進めたんだ」
「昼すぎには晴れたので、そこからは外での撮影になったんです」
「なるほど。臨機応変に進めてもらえるのは有難いですね」
「予定の変更はあるものの、全体の進捗としては悪くないそうだ」
「よかったです!そちらでの撮影期間は限られてますもんね〜」

戻って来たら、またすぐ別の仕事が入っている。
今日も新しいお仕事が来たのだ。
有難いけど、お休みもしっかり確保しないとなぁ。

それから、色々と話をしていたのだけど…大きなあくびがこらえきれず出てしまった。

「…ふわぁ…っとと、すみません」
「いや、長々と悪いな。今日はここまでにしとくぜ。おやすみ、プロデューサー」
「今日も一日お疲れさまでした。おやすみなさい」
「夜は冷えるから、体を冷やすなよ。明日また連絡する…おやすみ」
「はいーみなさんもしっかり睡眠とってくださいね!おやすみなさい!!」


…これにて、本日のプロデューサー業務終了〜〜〜!!
お疲れ、私!!

さ、お風呂に入ってさっさと寝て、明日もまた頑張るぞー!!
えーっと明日の予定はー…




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