Dodgy Santa claus〜鷹城恭二◆〜



クリスマスもバイトなの!?
…なんて、友達には驚かれたけど。
他に予定もないし、店長が「クリスマスのイブと当日はサンタ服を着て仕事したら特別ボーナス出すよ!」って言ったから…
私はボーナス目当てで、クリスマスもコンビニバイトに勤しんでいた。
――ぺらぺらなサンタ服を着て。

自主的にこういうものを着るタイプじゃないけど…ボーナスをいただけるのであれば、喜んで着ますよ。
ちなみに昨日も着たので、2日目である。

肝心の仕事の方は…クリスマスとは言えど、客足は大きくは変わらず。
変わった服は着ているものの、変わったことは起きなくて、淡々と仕事をこなしていった。

あ、でもたまにくるちっちゃな子に、キラキラした目で「サンタさんだぁ…!」と言われるのは、まんざらでもないかな。



さて、シフト終わりまであと1時間だ。
今やらなきゃいけないことは特にないし、お客さんも落ち着いてきたので、ぼーっとレジに立つ。
…そうだ、チキンくらいは買って帰ろうかな。
そんなことを考えていると、見知った顔がお店にやってきた。

「いらっしゃいませ〜」
「…マジ、か…」

む、開口一番なんなんですかねその顔は、鷹城さん。
鷹城さんは、このバイト先の元先輩。
…と言っても、ほとんど入れ替わりくらいのタイミングで辞めて行って、今はアイドルをしている人だ。

「なんですか、私がサンタ服着てるのがそんなにお気に召しませんか」
「別にそういうわけじゃ…アンタがそういうの、着るタイプだとは思わなかったっつーか」
「ボーナスのためですもん」
「え、俺のときそんなのなかったぞ」

そうなの?
去年のクリスマスは、まだバイトしてなかったから知らないけれど。
今年は男子にも声をかけていたから、女子に特別に…ってこともないし。

「今年からじゃないですかね?いいじゃないですか、鷹城さんはお仕事でもっと色んな服着て、お金もらってるんですし」
「いやそういうことじゃなくて…」

目の前の人は、こんなペラペラな安物じゃない、綺麗な衣装を着て歌って踊ったりするのが仕事の人だ。
本来ならこんな気やすく話しちゃいけない気もするけど…距離を保って会話をしたら、綺麗な顔を歪めて嫌がられたので、これまで通りの態度で接している。
そういえば、アイドルの仕事が忙しいのか、久しぶりに会った気がする。

「これはこれでありかも、なんて、思ったりもしたんですけどね。まぁ、あともう30分くらいで着納めですけど」
「…ずっとこれで仕事してたのか?」
「そうですよ。昨日もだから、ボーナス2日分ゲットです」

2日分、という意味も込めてピースして言うと、なぜだか鷹城さんは深くため息をつき…
それとともに、鷹城さんがぼそりと呟いた一言はよく聞き取れなかった。

「え?なんですか?」
「なっ、なんでもない…!」
「ならいいですけど…ところで鷹城さんは、何のご用ですか?公共料金の支払い?明日の朝ごはんでも買いに来たんですか?それだったら、新商品のパンがオススメですけど」

あ、でも鷹城さんはおにぎりが好きなんだっけ?
うーん…消費期限的にオススメし辛いな。

「そうじゃなくて…みょうじ、あと30分くらいでシフトあがるんだな?その後の予定は?」
「え?特になにも…家に帰ってご飯食べて、家事やって寝るくらいですけど」

冬休みはほとんど課題が出なかったし、わざわざ交通費のかかる時期に帰省をする気もないから、バイト漬けの年末年始な予定なのだ。

「じゃあ、終わるの待ってるから、飯行かないか」
「え…?なんでです?クリスマスなのに、予定ないんですか?…って人様に言えた義理じゃないですけど」

アイドルなんだから、クリスマスにはお仕事が…って、時間が時間だし、それは終わったのかもしれないけど。
その他にも予定が入っていそうなものだけど…そうでもないのかな?

「…嫌か?」
「別に、嫌じゃないですけど。なんでわざわざ今日、私となんだろって」
「…アンタってほんと、正直過ぎないか」
「んん?ええまあ、よく言われますけど」

はぁ。と再びため息をつく鷹城さん。
なんなんだ、ホントに。


とかなんとかやっていたら、扉が開いて冷たい風が入り込み、入店音が響いた。

「いらっしゃいませー!…とりあえず、今は仕事中なので、あがったらご飯ついていきます。そこで色々聞きますので」
「…あ、ああ」




そうして、仕事を終えて、ご飯を食べに行った。
頼んだ食事を食べ終えると、鷹城さんは意を決したように、話し始めた。
…今までになく饒舌に。

「今日、会いに行ったのは、みょうじがサンタ服着てるって聞いて心配になって」
「心配?…酷い姿をお客様に晒すなってことですか?」
「違う。見に行ったら、すげー可愛いし、こんな格好で仕事してたのかと思うと不安で溜まらなくなって」
「はい…??可愛い…?不安…?」

誰が?なんで??

「だから!みょうじの可愛い姿見たら、誰かにとられちまうんじゃないかと思って」
「…ちょっと待ってください。つまり、鷹城さん、もしかして私のこと好きなんですか?」

間違っていたら自意識過剰この上ないが、鷹城さんの言動が導き出す答えを、これしか思いつかなかった。
目の前の鷹城さんは、耳まで真っ赤にして、小さくコクリと頷いた。

「…え。ほんとですか。随分変わった好みですね…」
「アンタな…!」
「なるほど〜…ふむ…」

鷹城さんのことをそんなに知ってるわけではないけれど、悪い人ではないと思う。
話してると面白いし…主にからかいやすいという意味で…

突然のことに驚きはしたけど…嫌ではないし…
というか…うん、嬉しい。
自分の中にこういう気持ちがあることの方が、驚きかもしれない。

「お気持ち、ありがとうございます。嬉しいです。でも…そうですね、さっきのだとよくわからないので」

鷹城さんの目を見て、悪戯っぽく笑ってみる。

「鷹城さんの口からはっきりと告白していただいて、結果私はこれからどうしたらいいのか、教えてもらえますか?」
「はっ…?」
「私、色恋に縁がなかったですし、曖昧な空気読むとかできないんですよね。なので、はっきりと言葉で伝えてもらえればと。あ、もちろんご要望はできる範囲でお応えしますので」
「え…」
「例えば…そうですね…鷹城さんが望むかはわかりませんが、サンタ服を鷹城さんのためだけに着る〜とかは全然大丈夫ですよ」
「ばっ…!!」
「さあさあ、どうしますー?」
「みょうじっ…アンタ、なんでそんなに楽しそうなんだよ…!?」
「え?…そうですね、なんだかよくわからないですけど、今とっても楽しいです」

狼狽える鷹城さんを見ていると…とても嗜虐心を煽られるというか…
なんだかとっても可愛く見える。

…鷹城さんも厄介な人間を好きになったものだ。
でも、私は間違ったことは言ってないと思う。
これも私なりの乙女心ってやつだ。たぶん。きっとそう。

「特にないようであれば、帰りますけど」

そう鷹城さんに詰め寄ると、首まで真っ赤にして、視線を彷徨わせ、なんだかよくわからないことをぶつぶつと呟いたあと…
覚悟を決めたようにまっすぐと、私の求めていた言葉をくれた。




…でもサンタ服はいらないらしい。残念だ。




Merry Christmas with 315Production!!




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