「おかえりなさい、圭さん!」
「ただいま、なまえさん」
お仕事が終わって帰ってきた圭さんから、コートを受け取ったのだけれど…
触れた手がとっても冷たい。
「圭さん、ここに座ってあったまっててください!もうちょっとでご飯出来るので…!」
着る毛布で圭さんくるんで、私はご飯の準備を再開した。
――さて、今日の夕食はと言うと。
クリスマスとは言え、そもそも食のとっても細い都築さんと、料理が上手でない私。
いわゆるクリスマス!なチキンとかのメニューは向いてないかなと思い、悩んだ結果――
「今日は鍋パーティーです!」
パタパタと用意しながら、圭さんに話しかける。
「ちゃんとクリスマスは意識してるんですよ!トマトベースで、ブロッコリーは緑だし、ツリーっぽいかなーって入れました。あと、チキンってことで、鶏肉入ってますし、ニンジンも星の形にくりぬきました!あと、ドイツっぽいかなと思ってソーセージも入れてあります!」
あまり食べることに興味がない圭さんだけど、せっかくのクリスマスだし、季節感を楽しんで欲しい。
あれもこれもと矢継ぎ早に話す私に、圭さんは笑みを浮かべた。
「ふふ、たくさん考えてくれたんだね。ありがとう」
「えへへ、考えるのも楽しかったですよ!お鍋の〆はどうしましょう?リゾットでいいですか?」
「なまえさんに任せるけれど…そんなに食べられるかな」
「その時は明日の朝ごはんにしましょう!」
「へえ、そんな方法があるんだね」
具だくさんにしたら、総量も増えてしまったので…
圭さんと私で食べるには量が多くなりすぎちゃったと思うし、多分明日の朝ご飯かな。
パンもあるし、スープとして食べてもいいかも。
なんて、色々考えながら、手を動かしていく。
「なまえさん、今日は一段と楽しそうだね」
「もちろんですっ!圭さんと一緒に過ごすクリスマスですもん」
そんなに得意じゃないお料理だけど、今日は思わず鼻歌が出てしまうくらい楽しい。
「あっ、そうだ、ケーキも買ってきました!小さめなやつですけど、ケーキの分もお腹空けておいてくださいね!」
「うん、わかったよ」
そしてしばらくして、用意が終わって、圭さんと向かい合ってテーブルに座った。
「圭さん、このくらい食べられそうですか?」
スープ多めで、全部の具、かつ小さめのものが1つずつ入るように、器にとって圭さんに差し出す。
結構煮込んだから、一部の野菜は溶けたし、スープだけでもそれなりに栄養があるはず!
「うん…たぶん、大丈夫だと思う」
「よかった、じゃあこれどうぞ」
自分の分も適当に盛り付けてっと…よし。
「それじゃ…」
「「いただきます」」
「あっ、綺麗にハモりましたね!」
「本当だね、ふふ」
今日のお仕事の話を聞きながら、2人でご飯を食べる。
最近お互いに仕事が忙しくて、一緒にゆっくりご飯を食べることもできていなかったから、それだけで楽しい。
しかも、今日は少しではあるけれど、圭さんがおかわりしてくれた!
やったー!!
「ごちそうさま」
「お粗末さまでした!」
いつもより、圭さんも食べてくれた気がするけど…やっぱり、お鍋は余ったので、明日の朝に回った。
それよりもケーキ食べなきゃですからね!
お鍋を片付けて、いそいそとケーキを取り出す。
イチゴがたっぷりのショートケーキのホールケーキ…と言いつつ、手のひらに乗るくらいのサイズのもの。
1人で食べるにはちょっと大きめだけど、多分、一般的な2人分にはちょっと少ない。
でも、今の私たちにはこれくらいで十分だと思う。
「綺麗に切り分けられそうにないので…ちょっとお行儀悪いかもしれませんが、直接2人でつついてもいいですかね…?」
「うん、2人きりだし、気にしなくていいと思うよ」
「よかった!それじゃ、圭さんからどうぞ」
「用意してくれたのはなまえさんだから、君からどうぞ」
「いえいえーお疲れの圭さんからお先にどうぞ」
「うーん…それじゃ…あーん」
「えっ!!」
ささやかな押し問答のあとの、圭さんからの提案…
フォークに乗せられたケーキが私が口元に運ばれる。
初めてのことに困惑していると、圭さんが軽く首を傾げた。
「…だめかい?」
「いえ、そんなことは!決して!!」
圭さんがそんなことしてくれるんですか!
結婚式のファーストバイトみたいじゃないですか…!
…そんな風に思ってるのは私だけかもしれないけど、でもありがとうショートケーキ、ありがとうクリスマス!
「そ、それじゃあ…いただきます…うん、美味しいです!」
少し緊張して口を開けると、圭さんが優しく食べさせてくれた。
…普通に食べるより美味しいかも…なんちゃって。
「ふふ、幸せそうだね、なまえさん」
「はいっ」
「ほら、もう一口」
「えっ、あ、はいっ」
もぐもぐ…
なんだか圭さんが楽しくなってきているみたいだ。
嬉しいけど、私ばっかり食べるのもなぁ…
「圭さんも食べてくださいよー」
「君が幸せそうに食べるのを見ていたら、お腹がいっぱいになってきちゃったな」
「えぇっ!?ダメですよ、せめて一口は食べて欲しいです!」
「それじゃ、僕にも食べさせてくれる?」
「は、はい」
それじゃあえーと…あまり多すぎないように…でもイチゴは食べて欲しいから…
……このくらい、かな?
…ファーストバイトって、花嫁から花婿に食べさせる時は、豪快な一口のイメージだけど、圭さん相手にそんなことは出来ないからなぁ。
フォークにケーキを乗せて、圭さんの口元へとそっと運ぶ。
「あーん……どうですか?」
「うん……甘いね。美味しいと思うよ」
「よかったー!」
「でも、僕はもう食べるのには満足しちゃったな。だからなまえさん、はい」
そうして、私の口元に楽し気にケーキを運ぶ圭さん。
そして残りのケーキは、全て私のものになった。
お、お腹いっぱいだー…普通の1ピースのケーキでよかったかも…
「ふふ、楽しかった」
「美味しかった」じゃなくて「楽しかった」なんですね、圭さん…
まぁ、喜んでもらえたなら、いいか。
いつもより食べてもらえたし!
…ファーストバイトごっこも出来たし。なんてね。
「なまえさんも楽しそうだね」
「はいー素敵なクリスマスになりました!」
その後、プレゼントの交換をしたりして、2人でベッドに入った。
その日の夢は、真っ白な衣装を着て…遠い未来の予知夢だったらいいな、と思える幸せな夢だった――
Merry Christmas with 315Production!! 