クリスマス、かー…
仕事を終え、会社を出た私は、輝くイルミネーションを横目に、はぁ、と白い息を吐きだした。
…代わりに肺に入ってくる空気が冷たくて、心まで冷たくなりそうだ。
私も、恋人である類も、クリスマスと言っても普段通りに仕事があるから、デートはおろか、会う予定すらない。
アイドルである類は、普段通りどころか、年明けまで予定がびっしりだそうだ。
私もそれなりに忙しいとは言え、年末年始はお休みをもらえるんだけど…大丈夫かなぁ、類。
イルミネーションの下に集う恋人たちに、恨めし気な視線を送ってしまいそうになる。
今まで、そんなにクリスマスを意識したことはなかったけど…イベント大好きな類に、すっかり染められたらしい。
電話をしたのは一昨日だけど。
最後に会ったのは、いつだっけ…
こんなことで寂しい、会いたいとワガママを言えるほど、子供でもなくて。
…でもやっぱり寂しくて。
こういう時に一緒に住んでたら、顔を合わせることくらいはできたのかな…
私と類の家は、気軽に寄るには、ちょっと距離がある。
あまり他人との共同生活に向いてない私だけど、類と一緒に居られるんだったら…
類と一緒に居るときに、我慢しなきゃ、とかあんまり思わないから大丈夫な気もするし…
悶々とそんなことを考えながら、1人寂しく家へと歩く。
どこもかしこもクリスマスで溢れる街に、寄り道をする気にもなれなくて、私はまっすぐに家を目指した。
夕飯は…家にあるもの適当に食べればいいかな…
…そんな風にくさくさしながら歩いていたのだけれど。
……あれ?
うちの電気がついてる…?
遠くに見える、マンションの一室。
ぽつぽつと明かりがついている中、明かりがついているはずのない部屋に、明かりがついている。
あそこは私の家だ。
…泥棒…なわけ、ない、よね…?
もしかして、類…?
類には鍵を渡してあるし、私が居ない時に来てもいいよとは伝えてある。
でも、しばらく忙しいっていってたし…
慌ててスマホを見るけど、何の連絡もない。
……確証は何もないけれど、私の足は、自然に駆け出していた。
「はっ…はぁっ…」
ヒールでマンションまでダッシュした上に、エレベーターが降りて来るのを待てなくて、部屋のある5階まで駆け上がる。
おかげで、息が上がりきってるけど、私の足は止まらなくて。
部屋について、ピンポンを連打する。
ガチャガチャとノブを回すけど、さすがに鍵はかかってた。
急いで鍵を取り出そうとするけど、焦って手がもたついて…ああもう!!
――そして鍵が出せたのと、扉が開いたのが同時だった。
「…なまえ?…よかった、thiefかと思ったよ…っ、What's!?」
「類だぁ…!!」
私は、思いっきり目の前の類に抱き着いた。
「本物だぁ…!!」
類の匂いだぁ…
なんだか感極まって、泣きそうになる。
「What happened?とりあえず、中に入ろう?」
「うんっ…!」
――落ち着いてから、話を聞いたところ。
類は予定していた仕事のうち1つがだいぶ早く終わり、もう1つにスケジュール調整が入ったらしく、奇跡的に今晩の予定がなくなったらしい。
「最初は家に帰ろうかと思ったけど、やっぱりなまえに会いたくてね!せっかくだからsurpriseにしようと思って、連絡しなかったんだけど…」
でも次からやめておくね!と、私のあまりの息の上がりっぷりと乱れっぷりを見た類は苦笑しながら言った。
…う、ちょっと恥ずかしい。
真冬とは言え、厚着してダッシュしたせいで汗だくだった私は、先にお風呂を済ませ…
類の用意してくれたご飯に舌鼓を打った。
デパ地下で適当に買ってきてくれたらしいけど…さすが類だ、どれも美味しかった。
もちろんケーキも、可愛くて、美味しかった!
それから…いつ渡せるかわからなかったけど、用意しておいたクリスマスプレゼントを、類に渡した。
「Sorry,Christmas presentは用意してあるんだけど、家に置いてあるから…next timeに渡すよ!」
「ううん、謝らないで。会いに来てくれただけですっごく嬉しい」
「Oh…今日のなまえはvery straightだね。そんな風に言ってくれるなんて、俺も嬉しいな」
「クリスマスに類が隣にいないのって、こんなに寂しいんだーって思ってたところに、類が来てくれたから…なんていうか、気持ちが溢れてる、というか…」
言ってて恥ずかしいな、と思ったけど。
「…そっか。ふふ、俺も、なまえのこと大好きだよ!」
瞳をキラキラさせた類が、ぎゅううと私を抱きしめてくれたから、どうでもよくなった。
少し苦しいけど、とっても幸せだ。
こんなに近くに類がいるんだもの。
「素直な私から、もう1つ伝えたいことがあるんだけど、いいかな」
「What?」
「あの…ね。私今日すごく、すごく嬉しかった。帰ってきて、類が居てくれて、類と会えて。だから、私、類と一緒の家に住みたい」
多分、類にこんなに素直な気持ちを吐き出すのは、初めてのことだ。
類は黙って、私の言葉を聞いていてくれた。
「仕事の都合で類の生活時間が不規則なのはわかってる。家にあんまり帰って来れないのも。家にいる時間が長いんだから、家事は私がやるし。だから…少しでも一緒にいられる時間を作れるように、一緒の家に住んでくれませんか?」
これが、私のワガママだってことはわかってる。
でも、言わずにはいられなかった。
私は、もっともっと、類と一緒に居たい。
類の目を見て言い切ると、類は一呼吸置いて…ふっ、と笑った。
「あーあ!なまえに先に言われちゃった!」
「え…」
そしてまた、ぎゅっと抱き締められた。
「俺も!俺も、なまえと一緒に住みたいな。少しでも長く、なまえと居たいよ。きっと迷惑かけちゃうと思うけど…でも、それでも」
そこまで言うと、腕が緩んで、今度はこつんとおでこを合わせてきた類。
その頬は朱に染まり、瞳はキラキラと輝いていた。
吐息がかかる距離で、類は言葉を続ける。
「…俺と一緒に居てくれる?」
「もちろん!」
「やった…!大好きだよ、なまえ!!」
ちゅっちゅっと類から可愛らしいキスをされる。
それがくすぐったくて、嬉しくて、幸せで…
その気持ちを込めてお返しをすると、甘い声で名前を呼ばれて…それを合図に、キスが深くなっていった――
Merry Christmas with 315Production!! 