I admire you.〜天ヶ瀬冬馬◆〜



今日は、クリスマス特番の音楽番組の日。

…い、いよいよ本番当日になっちゃったぁ…!

クリスマス当日の、生放送。
アイドルになって、初めての大仕事です…!!
実は、数日前から緊張していて…胃がキリキリしてます…

それというのも、自分たちの持ち歌のパフォーマンスだけならまだしも、番組内企画として、他のアイドルユニットの人たちと合同でパフォーマンスするコーナーがあって。

私たちは、なんとあのJupiterのメンバーと、男女1人ずつのペアでクリスマスソングのデュエットをするのです…!
失敗したら、Jupiterの皆さんにも迷惑がかかってしまう、責任重大なお仕事なのです…!
特に、私は恐れ多くも、Jupiterのセンターである天ヶ瀬冬馬くんとペアで…

…企画発表後に、軽い気持ちでエゴサとかするんじゃなかったよぉ…!!



「う、うぅー…」

楽屋で準備を終えても、緊張は増すばかり。
お腹痛いし、手は震えるし、膝にも力が入らないよぉ…

「なまえ、大丈夫?もうすぐリハ始まるよ」
「すごい顔色してるよ…本当に体調はなんともないの…?」

一緒のユニット2人は、それぞれ私を心配してくれる。
ごめんねぇ…ありがとぉ…うぅ。


しばらくするとそこに、Jupiterの3人がいらっしゃいました。
まずは、合同部分のリハからなのです…!

「あ、なまえさんたちだ!やっほー」
「おはようございます。今日はよろしくお願いいしますね」
「よう…って、なまえ、体調悪いのか?」

あぅぅー…冬馬くんにまで言われてしまいました…

「おはようございます…違うんです、数日前から、ずっと緊張しててー…」
「数日前!?あんた、ちゃんと飯食ってるのかよ」
「あ、はは…」

…正直に言ったら絶対に怒られちゃうから、内緒です。
ちゃんと水分は取ってるし、ゼリーはなんとか食べられてるから…ダイジョウブ、ダイジョウブ。

気付けば、デュエットするメンバーとそれぞれ話し始めていて、私は冬馬くんと2人になっていました。

冬馬くんは、北斗さんや翔太さんとは違って、あんまり女子と接するのが得意じゃないみたいで…初対面の時は、とてもギクシャクしていたけれど。
みんなのフォローもあって、何回か一緒に練習していくうちに、仲良くなれた…と、思います。

冬馬くんは、向上心があって、自分に厳しくて…それでいて、私が躓いていたところに、アドバイスもくれて。
かっこよくって、アイドルの先輩として、とっても尊敬できる人です。

そんな冬馬くん、そしてJupiterだからこそ…
そのファンの人たちにも、こんな子とコラボするなんて…って、がっかりさせないようなパフォーマンスをしなきゃ。
そんな思いがぐるぐると胸を渦巻いて、私の身体を固くさせてしまうのです。

「無責任なことは言えねえけど…あんたはあれだけ頑張ってたんだから、いつも通り全力でやれば大丈夫だろ」
「え…」
「…デュエットの時なら、なんかあっても俺がフォローするし」
「…冬馬くん」
「だ、だから!…そんなに気負うなよ」

冬馬くんは視線を逸らしながらも、緊張でガチガチな私を安心させるように、ぽん、と頭を撫でてくれた。
は、はわぁ…か、かっこいい…!
ほっぺたが、熱くなってしまいます…!

「…あ、ありがとう、ございますっ…!」

すると、遠くからスタッフさんから声をかけられた。
ついに、リハが始まってしまうようです…!
あわわ…

「よし、まずはリハだな。リハだからって手は抜かねーから、しっかりついて来いよな、なまえ!」
「は、はいっ!!」

冬馬くんに引っ張られるように、リハをしていたら…手も、膝も、震えがいつの間にか収まっていて。
胸のドキドキは収まらないけど、さっきまでの不安と焦りに追い立てられるようなものではなくなって…
今のドキドキは、楽しさと、期待で弾むような、そんなドキドキです。

そのドキドキは、自分たちのユニットのリハの時も続いていて…
気付けば、あっという間に本番がはじまりました。




今日の番組は、私たちのユニットの出番が序盤にあって、中盤に企画コーナー、そしてトリがJupiterのみなさんです。
番組は順調に進行して…ステージの裏側で、じっと自分たちの出番を待ちます。

…すぅ…はぁ…

ゆっくりと、深呼吸…すぅ…はぁ…
…緊張が完全になくなることはないけれど…でも、大丈夫。
きっと、上手くやれる。
さっきの冬馬くんの言葉が、勇気をくれた気がします!

「よぉ、大丈夫か?」
「と、冬馬くん!」
「さっきも言ったけどよ…なまえの全力をぶつけてくれば、大丈夫だっての」

Jupiterの出番はだいぶ先なのに。
わざわざ、声をかけにきてくれたんだ…!

「ありがとうございます…!私、冬馬くんのパートナーとして、精一杯頑張りますっ!」
「いや、その前に自分たちのユニットの出番だろ」
「あっ、あはは、そうでした!」

嬉しくて、つい気持ちが先走り過ぎてしまいました。

「あの、えっと…私、Jupiterの皆さんと一緒にお仕事できて、すごくすごく勉強になったので…貰ったものを、出しきってきます!冬馬くんたちに少しでも追い付けるように!!」
「お…おう」

テンションのままに、前のめりで伝えると、冬馬くんに苦笑されてしまいました。
…い、いけない。もうちょっと落ち着かないと。

なんて思っていたら、スタッフさんから声がかかりました。
…いよいよ、本番です…!

「それじゃあ…いってきます!」
「ああ、全力ぶつけてこいよな!」
「はいっ!!」

ステージに駆け出す私たちを、冬馬くんは力強く送り出してくれました。
この勢いで、ステージを盛り上げてみせます!!




「冬馬くんってば、なまえさんにすっごい優しいよねー?」
「はぁ!?んなことねえよ!普通だろ!」
「…俺たちはもしかしたら、大変な相手に塩を送ってしまったのかもしれないね」
「フン…上等だぜ!」

――なんて会話が繰り広げられていたことを、私は知らないけれど。

私たちのユニットのパフォーマンスは、過去一番の出来だったと思います!
クオリティはもちろんだけど、歌って踊っていて、とっても楽しかったんです!
きっと、私だけじゃなくて…同じユニットの2人も、Jupiterのみなさんからいい刺激を貰えたからだと思います。

パフォーマンスを終えてステージ裏に戻ると、冬馬くんが無言で手を挙げていました。
なんだろう…?タクシーはここには入れないよね…?なんてキョロキョロしていたら「…ハイタッチだよ!」とツッコまれてしまいました。
あ、ああ…なるほど!!

ハイタッチってなんだか男の子っぽくてかっこいいな、と思いながら、冬馬くんの手を叩くと「お疲れ、デュエットもこの調子で頼むぜ」と言ってくれました。

それがとっても嬉しくて…
私はそのテンションのまま、控え室に戻り、急いで着替えて…企画のコーナーを迎えました。



「お、来たか…っ!」
「よろしくお願いしますっ!」

…あれ?なんだか、冬馬くんの反応がおかしい…ような。

「わ、私なんか変ですか!?」

おかしいな、メイクさんにも衣装さんにも、プロデューサーさんにもチェックしてもらったんですけど…!

「ち、ちげーよ!…なんか、見違えたっつーか…」
「そ、そうですか…?」

なんだか冬馬くんがぶつぶつ言ってるみたいだけれど、うまく聞き取れない…なんだろう?
ひとまず、変じゃないならよかったです。

スタッフさんから呼ばれると、冬馬くんは下を向いて首を降って、気持ちを切り替えるように「…っしゃ!」と小さく呟きました。
そして、顔を上げたかと思うと、強い瞳で私を射抜き…

「行くぜ、なまえ!」
「はいっ!」

私を眩いステージの上に、エスコートしてくれたのでした。



私と冬馬くんが歌うのは、恋人たちの甘いクリスマスを歌ったラブソング。
練習しはじめたときは、なかなか息が合わなかったり、視線を合わせるだけでお互いに照れてしまったりしたけれど…
今日は大丈夫、私たちの息はぴったりですっ!

今だけ、ステージの上では、冬馬くんは私の大切な恋人。
私の素敵な王子様です!
2人で過ごせるクリスマスは楽しくて、幸せで…ずっとこの時が続けばいいのに、という恋人たちの想いを、歌声に、視線に、仕草に乗せます。
…この時が続いてほしいという気持ちは、演技だけじゃないけれど。


…あっという間に1曲歌い切ってしまいました。
名残惜しい気持ちでステージの裏に引っ込むと、また冬馬くんが手を挙げたので…今度は迷わず、ハイタッチしました!
パンッと重なる手が、気持ちいいです…!

Jupiterは次の出番まであまり間がなく、終わってから慌ただしく着替えに戻っていってしまったので、ゆっくり話す時間がないのが残念です。
番組が終わるまで待ってたら、遅くなっちゃうかな…

私も含め、私たちのユニットは全員が未成年だから、プロデューサーさんが遅くならないうちに車で送ってくれることになっています。
でも、Jupiterのパフォーマンスは生で見たいし、せめて一言だけでもお礼が言いたいんです…!

そうプロデューサーさんに伝えると少し悩んだ後、Jupiterに迷惑が掛からないようにという条件付きでOKしてくれました。
…そうですよね、Jupiterも北斗さん以外は未成年だし、きっと挨拶したいって人がいっぱいいますよね。
出来れば、直接お話しできますように!



そして。
Jupiterのパフォーマンスをスタジオの端で見させてもらったけど…
とっっっても、素敵なパフォーマンスでした。
3人から目を離せなくて…きっと、見てる人はみんな、Jupiterの虜になっちゃうに決まってます!

あんな風に、魅力溢れるアイドルに私もなりたい。
Jupiterに、少しでも、追いつきたい。

それで…また一緒にお仕事がしたい、です。

そんな想いを抱きながら、私は冬馬くんたちのパフォーマンスに釘付けになったのでした――



Merry Christmas with 315Production!!




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