人生で一番、というレベルで切羽詰まっていた私は、レッスン終わりの輝さんに突撃した。
「輝さん、助けてくださいーーーー!!!」
「うぉっ!?どうした、プロデューサー!?」
「実は…!」
かくかくしかじか。
私は、一族の主である祖父に強引にお見合いを進められていて困っていることを輝さんに説明した。
じーちゃんは、私を地元男性と結婚させて、仕事を辞めさせて、田舎に連れ戻す気だ。
そんなの絶対お断りだ!!
それでじーちゃんと電話口で喧嘩になって、つい勢いで「恋人ならいるわよ!!」なんて言ってしまった。
そしてヒートアップしてしまい「会わせてあげるわよ!!!」と啖呵を切ってしまったのだった。
…………『恋人』なんて、私にとって幻の生き物なんだけどね…はは…
「なるほどなぁ」
「…そんなわけなので!!輝さんに助けていただきたく!!」
「助けって…俺は何をすればいいんだ?」
「肩書振りかざしたりとか、嘘ついたりとかがお好きじゃないことは重々承知の上なのですが!!人助けだと思って!私がプロデューサーを続けるためにもどうか!!」
私は手を合わせて、輝さんに拝み倒す。
「合コンをセッティングしてください!もしくは、私の恋人のふりをしてもらえないでしょうか!!」
「合コンって…」
じーちゃんは学歴とか権力とかに弱い。
東京の弁護士先生が恋人、なんて言ったら黙るに決まっているのだ。
…なので、輝さんにお願いしている次第です。
「弁護士のお友達を紹介していただけると大変に有難く…もちろん、私も全力で綺麗どころ揃えますので…!ああでも、私選んでもらえないと意味ないし、スピード感的に速攻で話を合わせてくださる方でないと難しいけど…」
女友達のあてならあるのです。
…でも、あの子たちがいる合コンじゃ、私はまず候補から外れてしまうのでは…?
「まあ落ち着けって。とりあえず、合コンはなしだ」
「うう、そうですよね。すみません」
輝さんの人間関係を壊してはいけないもんね…
「それに恋人のふりもなあ…嘘ついたってすぐバレると思うぞ」
「うううう、じゃあいっそ、本当にしてください」
なんてね…冗談です…………………と、続けようと思ったら。
「そうだな、まずは(仮)ってことでどうだ?」
「えっ!?」
「すぐ(仮)も外してみせるけどな。この後、空いてるか?」
「え?空いてはいますけど…あれ…?」
お、おお…?
どういう流れなんだろう、これは…
まぁ、とりあえず、相談に乗ってくれる…ってことだよね、うん。
「じゃ、一緒に飯に行こうぜ。それから…そうだな、着替えながら考えておくから、待っててくれるか?」
「え、は、はい…」
狐につままれたような状態のまま、輝さんとご飯に行くと…夜景が見えるレストランという、とっても素敵なシチュエーションで。
「俺はプロデューサーの…なまえのことが好きだ。俺の、恋人になってください」と、告白を、されたのだった。
なんで…?と聞くと輝さんは笑った。
「ハハ、本当はもうちょっとアイドルとして成長してから、と思ってたんだけどな。プロデューサーがいなくなったら、元も子もないからな。予定がちょっと早まっただけだって」
なんで、わざわざこんなところに連れてきてまで、と聞くと、輝さんはまた笑った。
「プロデューサー、なんだかんだ言って、こういうの好きだろ?俺も、せっかくならちゃんと告白したかったしさ」
…………その通りですよぉぉ…っっ!!
普段の私は、乙女チックなんて程遠いタイプなのに。
輝さんには、全部バレていたらしい。めちゃくちゃ恥ずかしい。
「あ、なまえの今の顔、すっげぇ可愛い」
「!!!??」
――そんなこんなで、じーちゃんの強引さのおかげもあって、私は幻の生き物だった『恋人』という存在を得たのだった。
そして、満を持してじーちゃんに輝さんを紹介すると、婚約したわけでもないのに大騒ぎになってしまったのであった――