Wink☆Wink



珍しく、事務所でゆっくりと…半分寝て過ごしていた翔太のもとに、なまえがやってきた。
なまえは、駆け出しではあるが、翔太と同じ315プロダクション所属のアイドルだ。

「ねーねー翔太くん、どうしたらウィンクって出来るの?」
「どうって…片目を閉じるだけでしょ?」

睡魔と仲良くしようとしていた翔太が、めんどくさそうに返す。

「それができないから聞いてるんだよぉ!お手本!お手本見せて!」
「えー…めんどくさい」

翔太がもぞもぞと抱えていたクッションに顔を埋めると、不服そうになまえは唇を尖らせた。

「減るもんじゃないじゃん〜!」
「やだーなんかが減る」
「えぇ〜…うーん…じゃあ、帰りに肉まん奢るから!スーパーアイドル御手洗翔太先輩のウィンクが見たい!」
「…もー、しょうがないなぁ」

ねえねえ〜〜〜、と体を揺さぶってねだってくるなまえに根負けして、翔太はしぶしぶ顔を上げた。

「ちゃんと見ててよね」
「うんうん!」

キラキラとした目で、見つめてくるなまえに少し呆れつつ、翔太はぱちっと目を開けた。
そして。

「まず右目でしょ」

パチン☆

「それから、左目」

パチリ☆

音が聞こえてきそうなほど見事なウィンクに、なまえは感嘆の声をあげながら、パチパチと手を叩いた。

「おぉ〜〜!!さすが翔太くん!!文句なしのウィンクだね!!」
「なまえさんもやってみてよ」
「私はできないんだってば…」
「いいからいいから、ほら」
「えー…」

なまえは不満そうだが、自分がやってもらった手前、断ることが出来ず…

「せーのっ!」

という翔太の掛け声にあわせて、なまえなりのウィンクをした。

…翔太から見たら「ぎゅむっ!」と両目を瞑っただけだったが。

「あはははは!!!」
「うっ、もーーー笑わないでよーーこっちは真剣なんだからね!!」

大笑いする翔太に、拗ねた表情を見せるなまえ。

「表情筋がかたいんじゃないのー?」
「そういう問題なのかな…」

「揉めば柔らかくなったりするかな…」と呟きつつ、なまえは自分の顔をむにむにと揉んでみた。
翔太は、ポチポチとスマホを弄って解決方法を探してみることにした。
なまえは内心(翔太くん、なんだかんだ言って面倒見がいいからなぁ。相談してよかった!)と笑っていた。

「んーと…片目ずつ手で押さえて練習するといいって」
「むーそりゃ手で押さえたら、できるけどぉ…」
「練習あるのみだよ。たぶん」

書いてある一通りのことを翔太が読み上げると、なまえはため息をついた。

「やっぱりウィンクを普通にできるあたり、翔太くんは天性のアイドルってことなのかな…」
「ふふん、まあね」
「むーくやしーー!」

得意げに笑う翔太に不満げななまえ。
自分と張り合おうとしているんだろうか?となんだか面白くなって、翔太はニヤっと笑った。

「まあ大丈夫だよ、ウィンクできなくてもなまえさん可愛いし」
「……へっ?」
「ウィンクできないアイドルも、それはそれでおもしろ…じゃなかった、可愛いんじゃない?愛嬌があって」
「それって全然褒められてる気がしないんですけどー!!」

翔太に可愛いと言われて照れかけたのも束の間、からかわれてることに気付いたなまえは、憤慨した。
それを見て、楽し気に笑う翔太。

賑やかな空気が、事務所に流れていった。



「ちーっす…って、北斗、どうしたんだよ、変なところにつっ立って」
「ん?ふふ、あの2人を見守ろうと思って」
「はぁ?…翔太と…なまえか」
「もう少し、そっとしておこう」
「お、おう」




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