未来永劫



※玄武が成人してます。




常日頃「アイドルはギャップが大事」と言っている番長さんこそ、ギャップのある人だと俺は思う。
俺が知っている中で一番、と言っても過言ではないだろう。

単に、プロデューサーとアイドルとして関わっている頃は…外柔内剛、勇壮活発、人心収攬。
そんな雲の上の存在であり、理想の大人だと思っていた。

しかし、恋人として接するようになった今は…
天真爛漫、純情可憐、一笑千金。
そんな言葉が似合う可愛らしい人だと、日々思う。

そのギャップを知るたびに、心を鷲掴みにされているのだから、確かにギャップは大事なんだろうな。
さすがなまえさんだぜ。



「玄武くーん、今日の夜ごはんはなぁに?」
「今日は鯖の味噌煮だぜ、なまえさん」
「わ、やった!玄武くんの作る鯖の味噌煮大好き〜♪」

なんと形容すべきか…ふにゃり、と言ったところか。
そんな風に笑うなまえさんと、こうして一緒に暮らしていること、未だに夢なんじゃねえかと思う。

一度目の告白は、アイドルとプロデューサーと言う関係から断られた。
二度目は年齢…年の差というより、俺が未成年であることを理由に断られた。
三度目は、成人してから告白したが…「私は玄武くんの思うような人間じゃないから」と断られた。

けれど、初志貫徹、そして遮二無二…我武者羅に想いを伝えると、なまえさんはついに俺の想いを受け入れてくれた。

そうして手に入れたなまえさんの隣、恋人という名の居場所は…何にも代えがたいものだ。




「いっただきまーす!」

料理が出来上がり、2人で食卓を囲む。
それだけでも幸せなのに、俺の作った飯を、美味そうに頬張るなまえさんがいる。
大慶至極…それがこの上なく、幸せだ。

そして食事が終わって出演したテレビ番組を確認していたら、なまえさんが俺の膝の上に座った。
俺も特に何も言わず、後ろから抱き締める。
これが2人で過ごす時の定位置となったことも、幸せの1つだ。
…夏は「暑いから」と嫌がられるので、なまえさんと暮らすようになってからは、夏があまり好きではなくなったかもしれない。

「玄武くん、最近色気がすごいね…テレビからも伝わってくるみたい」
「そうかい?そうだとしたら、なまえさんのおかげだけどな」

そう言いながら、白い首筋に口づけると、なまえさんが「ひゃあっ!」と面白い声を上げた。
「もうっ!」と唇を尖らせて、ぱしっと足を叩かれたが、全然痛くなかった。


腕の中の小さな存在。
なまえさんのギャップも、こんなにも可愛らしいところも、俺しか知らない。
俺たちより少しだけ先になまえさんと出会ったアニさんがたはもちろん、俺と同じ年月、プロデュースしてもらっている相棒でさえ、だ。

日々魅力的な仲間たちに囲まれていることに、嫉妬することもあるが…プロデューサーではないなまえさんは、俺しか知らないという優越感で帳消しだ。

「明日、私の方が早く出ていくけど、玄武くんはゆっくり寝てていいからね。今日の収録も結構ハードだったんだし」
「いや、起きるさ。なまえさんを送り出してから、二度寝すりゃいい」
「んーわかった。でも、朝ごはんは私が作るからね」
「ああ、頼む」

いまだに、毎朝起きると、なまえさんが隣にいることを確認してしまう。
…それに、きっとなまえさんも気付いているんだろうが、何も言わないでいてくれていた。

なまえさんがいることを確認できるたびに、安堵し、幸せを感じ…そして、それ以上を求めてしまう、己の欲深さも知る。
俺なんかがこれ以上を望んでいいのか、なんて思っちまう時もあるが…なまえさんならきっと受け止めてくれるだろう、という淡い期待もある。

なぁ、なまえさん。
これ以上の関係を望む俺を、どうか受け入れてくれ。


少し前から、デスクに忍ばせている小さな箱の出番。
男・黒野玄武、一世一代の大勝負は、もう間もなくだぜ――!




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