お見合い狂想曲〜桜庭薫編〜



人生で一番、というレベルで切羽詰まっていた私は、レッスン終わりの薫さんに突撃した。

「薫さん、助けてーーーー!!!」
「ぐっ…!君は、僕に怪我をさせる気か…!」

文字通り突撃したら、薫さんがよろめいてしまった。
つい勢いで…失敗失敗。てへ☆

「そ、そんな滅相もない!!つい勢いがつきすぎただけなんですって…ていうか聞いてくださいよ!!」
「はぁ…」
「そんなめんどくさそうな顔しないで!」

薫さんの返事を待たず、私は一族の主である祖父に強引にお見合いを進められていて困っていることを説明した。

じーちゃんは、私を地元男性と結婚させて、仕事を辞めさせて、田舎に連れ戻す気だ。
そんなの絶対お断りだ!!
それでじーちゃんと電話口で喧嘩になって、つい勢いで「恋人ならいるわよ!!」なんて言ってしまった。
そしてヒートアップした末に「会わせてあげるわよ!!!」と啖呵を切ってしまったのだった。

……まぁもちろん『恋人』なんて、私にとって幻の生き物なんですけど、あはは!


「だからなんだ。僕には関係ない。君に付き合うだけ時間の無駄だ」
「何言ってるんですか、関係大アリですよ!!」

私は、冷ややかな視線しかくれない薫さんにまくし立てた。

「地元に帰らされたら、私、DRAMATIC STARSのプロデューサー辞めなきゃいけないんですよ!?そうしたら、さらなる時間の無駄だと思いません?!だって薫さん、新しいプロデューサーとやってくのにも絶対時間かかるだろうし!」
「…おい」
「だから協力してくださいよぉぉぉ!!ちょっとだけ、ちょーっとだけ恋人のフリしてくれるだけでいいですから!!!」

じーちゃんは学歴とか、権力とか、そういうものに弱い。
東京のお医者様が恋人、なんて言ったら黙るに決まっているのだ。
まぁ薫さんは現役のお医者様ではないけれど…その辺はノープロブレム!

そう言って薫さんにすがって、お願いして、土下座までしても、薫さんは超塩対応だ。
正直予想通りではあるけど、酷い…
さすがの私だって、心が折れちゃうぞ…!


「…百歩、いや一万歩譲って君に言う通りだったとしても、だからといって恋人のフリをするのは僕である必要はないし、そもそも僕に協力を頼むのは人選ミスだろう。天道か柏木に頼め」
「いやそれも少し考えましたけど!でもどうせなら、あわよくばと思っているので、薫さんに頼むんです!!何卒!!」
「あわよくば…?」
「勢いで本当に恋人にしてもらえないかなって!私、薫さんのこと好きですし!あ、さすがに恋人がいらっしゃるなら、略奪なんてことまでは考えてないですけど…薫さん、彼女いらっしゃらないですよねー?」
「………はぁ」

どさくさ紛れに勢いで告白して、えへへーと笑うと、対照的に深い深いため息をつかれた。
…くそぅ。でも好き。

「一生に一度のお願いです!どうかお願いします!」
「君は小学生か…」

ぱん!と手を合わせて拝む。
…相変わらずの態度だが、私は知っている……薫さんはなんだかんだ言って、押しに弱いことを…!

「薫さんを、DRAMATIC STARSをプロデュースするのは…皆さんをトップアイドルにするのは、私じゃなくちゃ出来ないんです!こんなことで、諦めるわけにはいかないんです!だからどうか…!」

私の出来る限りをもってして訴える。
…すると。

「…………………3時間だ」
「へ?」
「3時間だけなら、君の言う茶番に付き合ってやる」
「ホントですか!!!わーーい!!任せてください、もう私の地元方面でのお仕事とってきてあるので、それのついでにちゃちゃっとお願いします!あ、それとお詫びにちょっと大きい案件仕掛けてるので、楽しみにしててください!」
「……君の性格には呆れかえるばかりなのに、プロデューサーとしての手腕は申し分がないのが腹が立つ」
「へへー褒められちゃった」
「褒めてない」



――そんなこんなで、なんとか薫さんに協力してもらって、じーちゃんに薫さんを紹介したら。
婚約したわけでもないのに大騒ぎになってしまって…
それを抑えるのに、約束の3時間を超えてしまい、薫さんには散々な言われようだったけど。

まぁ、薫さんのお小言は嫌いじゃないし、この勢いでいけばワンチャンある気がしてきたので、これからも本当に嫌われない程度に、薫さんにちょっかいかけようと思います!!




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