遠いお星さまじゃなくて〜秋月涼◆〜



今日は、友達に招待してもらって、人生初のライブにやってきた!

その友達――涼くんとは、幼稚園と小学校が一緒だった幼馴染だ。
私が中学入学と同時に遠くに転校してからは、ほとんど会えていなかったんだけど…
メールや電話でのやりとりは続いていた。

涼くんは、女の子としてアイドルデビューした…と思ったら、今度は男の子アイドルとして再スタートをしていた。
波瀾万丈、って涼くんみたいなことを言うんじゃないかな。


そんな涼くんに「よかったらライブに来ない?」と誘ってもらって…冬休みに入っていることもあり、両親もOKしてくれたので、東京までやってきた。
一緒に着いてきてくれたお母さんは、また別の用事があるので、ライブは1人で参加する。
しかも、チケットを用意してもらったから、関係者席なんだよね…!

涼くんのライブをみるのも、そもそもライブに参加するのも初めてだ。
ドキドキしながら、案内してもらって、席に座る。

色々調べたり、涼くんに聞いたりしてみたけど、関係者席はあまり立ったり、コール?をしたりはしないみたいだから、初心者の私にはありがたいかも。

F-LAGSのTシャツ着てきたけど…上着を脱ぐのはまだ早いかな、どうだろう…?
うーん、慌てるのも嫌だし、脱いでおこう!
あとはペンライトとフラッグと、タオルはすぐ出せるようにしたし…
そうだ、オペラグラスの倍率調整しておかないと…!

ふと周りを見ると、続々と席が埋まっていく。
みんな、F-LAGSのグッズをたくさん持っていて…とても楽しそうだ。
…このみんなの笑顔を作ってるのは、涼くんたちなんだと思うと、なんだか誇らしい。


しばらくすると、会場が暗くなった。
…いよいよ始まるんだ…!!!



――アイドルって、ライブって、生ってこんなにすごいんだ……!!

涼くんたちのライブは、テレビとかでは見たことがあったけど、生は全然違って…!
ファンの人たちの歓声が響き、ペンライトが音楽にあわせて揺れる。

涼くんも、同じユニットの兜さんと九十九さんもすごい。
3人の息もぴったりだ。

けれどやっぱり、私の視線は涼くんに釘付けだ。
ペンライトを振るのも忘れてしまう。

涼くんが楽しそうで、かっこよくて、キラキラ輝いていて…なんだか泣きそうだ。
一緒だったときは、しょっちゅう女の子同士だと間違われていたけれど…
最後に会った時から、ずっとずっと、かっこよくなってる気がする。



あっという間に数曲終わり、MCもどんどん進んでいく。
ライブってこんなにお休みなしにやっていくんだ…本当にすごい…

終盤の曲の最中に、涼くんと目が合った気がした。
こんな距離だけど…目が合った涼くんはふわっと笑ってくれた。
…心臓がぎゅってなる。息が止まりそう。

こんなにすごいライブをしている涼くんと友達なのが誇らしい気持ちなのと同時に、遠くに感じてしまって、少し寂しい。
そして、こんなにたくさんの人が涼くんのことを好きなんだって思うと…複雑な気持ちも生まれてしまう。


「皆さん、今日は来てくれてありがとうございました!改めて…メリークリスマス!」

気付けばアンコール曲も終わって、涼くんがそう言ってステージから去っていった。

ライブの余韻が抜けずにふわふわしていると、スタッフの人が声をかけてくれて、涼くんたちの控室に案内してくれた。

ほんとに来ちゃってよかったのかな…と、ドキドキしながら目の前のドアをノックし…覚悟を決めてドアを開いた。

「わぁ…なまえちゃん、久しぶり!今日は来てくれてありがとう」
「りょ、涼くん…!こちらこそお招きありがとう!」

さっきまでステージにいた涼くんが、目の前にいる。
終わったばかりでまだ少し赤い頬と、額に浮いた汗にドキドキする。

「ライブ、すごかった!涼くん、ダンスとか、歌とか、すっごくかっこよかった…!」

…すごいすごいって、我ながら語彙力がない。
でも、今の私の気持ちを伝える言葉が思いつかない。

「えへへ、そんなに褒められると照れちゃうな」

そう言いながら、頬をかく涼くん。
…ステージ上とは違う笑顔に、少しホッとする。
大人っぽくはなったけれど、すぐ近くで、よく見ていた大好きなあの笑顔。
さっきまでは遠くに感じていた涼くんが、近くに感じられる気がした。

「あのね…!私、涼くんに話したいことがあるの。今日の感想も、それ以外にも、いっぱい…!」
「…僕も、なまえちゃんに話したいことがあるんだ。明日、楽しみにしてるね!」
「うんっ!ゆっくりお話ししようね…!」

明日は涼くんもお休みらしく、一緒に遊ぶ約束をしている。
でもさっきのライブを見てしまったら…疲れているところに、申し訳ない気持ちもする。
そう言うと、涼くんは「大丈夫だよ!せっかく来てもらったんだからなまえちゃんと過ごしたいな!」と言ってくれた。
…涼くんは優しいなぁ。
少しは、期待してもいいのかな、なんて淡い期待も浮かんでしまう。



しばらく話していると、涼くんはプロデューサーさんに呼ばれた。
そうだ、私もそろそろ帰らないと邪魔になっちゃうよね…!

「今日は、お疲れさま!ライブ、すーーーっごく、かっこよかったよ!!…また明日ね!!あと、メリークリスマス!」

改めてそう伝えると、涼くんは嬉しそうにはにかんで「メリークリスマス!」と返してくれた。



そうして、私はライブ会場を後にした。

…明日が来るのが、楽しみだけど…少し、怖いような。
でも、絶対…私の気持ちを、伝えるんだ…!!

決意を新たに、私はクリスマスの星空を見上げた――


***


「……涼、もしかしてさっきの人が…」
「そっ、そうです…!」

ライブが終わり、片付けも終わってそろそろ解散という時に、一希さんから声をかけられた。

多くを語らない一希さんの言葉に、頬が熱くなる。
僕、そんなにわかりやすかったかな…!

「今日のライブは大成功じゃったけぇ、きっと明日もバッチリじゃ!」
「う、うん…ありがとう!」

大吾くんの励ましを受け取り、僕はドキドキする胸を押さえて深呼吸をした。

なまえちゃんがライブに来てくれることになってから、そわそわしていた僕を心配してくれた一希さんと大吾くんには、理由を話した。
明日のことも話しているから、2人とも応援してくれた。
ありがたいなぁ…


さっき少しだけだけど、久しぶりになまえちゃんと顔を合わせて話すことができて、嬉しかったな。
前に会った時よりもずっと可愛くなっていて、ドキドキしたし、「かっこよかった」って言ってくれて、すごく嬉しかった…!

そんななまえちゃんがわざわざ東京まで来てくれて、僕たちのライブに来て、明日時間も作ってくれた。

…だから、僕もずっと言いたかったことを、伝えたい。


今日のライブと同じくらい、緊張するけど…男らしく、頑張るぞー!

決意を新たに、僕はクリスマスの星空を見上げた――



Merry Christmas with 315Production!!





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