特別なプレゼント〜伊瀬谷四季◆〜



※四季姉捏造注意※



「――315円のお返しと、こちら次回使える割引クーポンとなります。ぜひお使いください。ありがとうございましたー!」

と言って事務的にお釣りを渡すと、目の前の人物はレジカウンターに身を寄せ、声を潜めて話かけてきた。

「…あとちょっとで終わりだよね?近くのカフェで待ってるから!」

と、ブンブン手を振って店を出て行った。
一緒に居た男子たちも、同じように手を振ったり、ぺこりと頭を下げたりして、店を出ていく。

営業スマイルのまま小さく手を振り返していると、と隣にいた同僚に冷やかされた。

「相変わらず仲いいねえ」
「そうですか?普通だと思いますけど…姉弟なんですし」

そう、さっきの人物は私の弟、伊瀬谷四季。
そして一緒に居たのは、四季と同じバンドのHigh×Jokerのメンバーだ。

「いやー、うちの妹が思春期の頃なんて、ひどかったぜ…」

同僚が長くなりそうな思い出話を始めたところで、新しいお客さんが来たので、これ幸いと「いらっしゃいませー!」と話を切り上げた。
悪い人じゃないんだけど…話がどうにも長く、愚痴が多くなりがちだからなー。

さて、バイトの時間はあと少し!
お客さんの波は落ち着いてきたし、これなら定時であがれるだろう。
帰ったら家でクリスマスパーティーするんだー楽しみ!!



そして、予定通りにバイトからあがってカフェに向かうと、大きな荷物を抱えた5人が待ってくれていた。

今日は両親不在なので、珍しくうちでパーティーをすることになったのだった。
旬くんの家は広いらしくて、しょっちゅう遊びに行かせてもらってるんだから、そっちでやればいいのに、とちょっと思いつつ…
どうやら、クリスマスもバイトの予定しかない私に気を遣ってくれたっぽいので、ありがたく参加させてもらうことにした。


家に着くと早速、どっさり買い込んできたピザやチキン、お菓子や飲み物が広げられた。
もちろん、ドーナツも大量だ。
……ケーキもあるのに、この量なんだ…とちょっと引…じゃなくて驚く。
春名くんの胃袋は一体どうなってるの…?
とは言え、他は誰も驚いてないから、いつもの光景なんだろう。

「それじゃ、クリスマスパーティースタートっすー!」
「かんぱーい!」

いつにも増してテンションの高い四季が、パーティーのスタートを告げた。
みんな楽しげに話しながら、食べ物をつまんでいき…あっと言う間に、あんなにあった食べ物がどんどん無くなっていく。
さすが現役男子高校生だ。

ふと時計を見ると、そろそろ時間だ。
そう思ってテレビをつけると「さっすが姉ちゃん!」と四季にサムズアップされた。
もちろん、録画もしてある。
四季ほどではないかもしれないけど、私もHigh×Jokerのファンだからね!

番組が進み、自分たちの出番になると、一気にそちらに集中する5人。

「やっぱ先輩たちマジメガかっこいいっすー!」
「この時の演奏はバッチリ決まってたよな!」
「うんうん、かなりいい感じだったよな」
「そうですね、この時は納得のいく演奏ができたと思います」
「…みんな、最高だった、よね」

なるほど、確かにみんなかっこいいし、息がぴったりあってる感じがする。
…ここでワイワイと過ごしているみんなとは、ギャップがあって面白い感じ。
本人たちには言わないけどね!



あらかたの食べ物がなくなると、プレゼント交換の時間になった。
うちでクリスマスパーティーをすることになった時点で、私を含め6人でプレゼント交換をしたい!と四季に言われて…
私が入るとプレゼント選びが難しくなるでしょ、と遠慮したのだけれど、どうしてもやりたいと駄々をこねられたので、承諾した。

決められた予算内で、5人の誰に当たってもいいもの…ということで、かなり悩んだ結果、手袋にした。
High×Jokerカラーの、真っ赤なチェック柄のやつ!
四季以外のみんなは、楽器を弾くから手は大事だよね、と思って。
四季は楽器弾かないけど、自転車通学だから、使うタイミングはあるし。

プレゼント交換は、みんなで円になってプレゼントを回して、曲が止まったタイミングの時に持っていたものをもらう、という定番の方法をとることになった。
私の分は空席に置いてもらう形で、私が背を向けて曲を止める係。責任重大だ。

「じゃあ姉ちゃん、曲よろしく!」
「はいはーい。いっくよー!」

私がスマホに入ってるHigh×Jokerの曲を流し始めると、背後でがさごそとプレゼントを回している音が聞こえてきた。

「ナツキ、早く早く!」
「わ、わ…」
「なんかコレ、めっちゃ重いんだけど!?」
「こっちのは大きさの割に軽いですね」
「あ!これは中身わかっちゃったかもっす!」

なんて最初は騒いでたけど、前奏が終わって歌部分になると、合唱が始まった。
こうなってくると、止めるタイミングがわからないんだけど…!!

この合唱を止めてしまうのはもったいない気もするけど…今の目的はプレゼント交換だし…!
そう思って心を鬼にして、曲を止めた。

「はい、ストーップ!!」
「わー!!」
「いいところだったのにー!」
「ほら、ここで終わりですよ」
「じゃあ…俺はこれ、かな?」
「オレはこれだな!」

私のところに置かれていたプレゼントは、夏来くんが用意してくれたものだった。
可愛い猫のマグカップだ。

「可愛いー!ありがとう!!」
「…どう、いたしまして」

夏来くんはそう言ってはにかんだ。
うっ…こんなに近くでイケメンのはにかみ笑顔を浴びると浄化されそう!!

そして私の選んだプレゼントは、隼人くんに渡った。

「わーあったかそう!大事にします!」

と、キラキラした笑顔で笑う隼人くんも可愛い。
High×Jokerのみんなといると、弟が増えたみたいで楽しいんだよね。

そんなプレゼント交換でひと盛り上がりし…
私は片付けをざっとすると、一足先に離脱して、お風呂に入ってきた。
もっと一緒に騒いでいたいけど…明日のバイトは早番だからなぁ。
それと、このまま泊まるみんなの朝ご飯も準備してあげたいし。


自分の部屋でそろそろ寝ようかな…と思って、大事なことを思い出した。
そうだった!

もう一度リビングに戻って、ちょいちょいと手招きして四季を呼ぶ。

「なになにー?」
「はい、クリスマスプレゼント」
「えーっ!用意してくれてたの!?」

四季は、さっきのプレゼント交換で終わったものと思っていたらしい。

「そりゃー用意するよ、実の弟は別枠でしょ」
「う〜〜〜姉ちゃんありがと!!開けていい!?」
「どうぞどうぞ」

キラキラとした目で袋を開けていく四季。
ふっふっふ、絶対四季が大喜びする自信があるよ!

「あーっっ!!!これ、抽選で外れて買えなかったくまっちのスウェットセット!!」
「ふふふ、私もこっそり応募してたのが当たったんだよーあ、四季の分のつもりで買ったやつだから、遠慮はいらないよ」
「ありがとーーーー!!!姉ちゃん大好き!!!」
「わっ!」

嬉しさのあまりすごい勢いで抱き着いてきた四季をなんとか抱き留めて、よしよしと頭を撫でる。

「ふふっ、はいはい。もう遅いんだから、うるさくしないの」
「はーい…あとでみんなに自慢しよっと!」

そう言って、四季はスウェットセットをぎゅーっと抱きしめた。
生まれたときからの付き合いなわけだから、反応は完全に予想通りと言えば予想通りなんだけど、こんなに喜んでもらえると、私も嬉しい。



「あのさ!実は俺も、姉ちゃんにプレゼント用意してるんだ!ちょっと持ってくる!」

…考えることは一緒だったのね。さすが姉弟。
四季は急いで戻ってくると、可愛らしくラッピングされた箱をくれた。

「ね、開けてみて!」
「ん」

なるべく急ぎつつ、丁寧に包みを開けると、小さな瓶が出てきた。
マニキュアかな?と思ったけど、透明だし、中にはお花が入ってる…

「ネイルオイルだよ!事務所で、コスメとかに詳しい人に聞いてきた!いい匂いもするんだよ」
「へぇ〜可愛いし、爪ツヤツヤになりそう!ありがとう、四季」
「へへっ!どういたしまして!」

今度は照れ隠しにわしわしと頭を撫でたけど、それでも四季は嬉しそうに笑った。

「…それじゃ、私はそろそろ寝るから…四季たちも、あんまり遅くならないようにね。みんな風邪ひかないように、変なところで寝落ちしないでね…あと、ご近所迷惑にもならないよーに!」
「はーい!おやすみ、姉ちゃん!」
「うん、おやすみ、四季」


そうして私は、階下に賑やかな気配を感じつつ、眠りについたのだった――



Merry Christmas with 315Production!!





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