暇を持て余した従姉の遊び



※響也の扱いがひどいのでご注意下さい。



暇を持て余した、とある休日。

(なーんか楽しいことないかな〜〜〜〜…)
と、なまえはぼんやり空を見上げると、先日田舎にいる母から聞いた話を思い出した。

――そうだ。横浜に転校してきたという従弟たちに、会いに行ってみよう。

思いついたら、即行動。
なまえは、そのまま横浜行きの電車に乗り込んだ。


「ひっさしぶりー、ヘタレ響也!」
「げ!!!!!なまえ!?なんでここに…」

公園での練習中、突然現れた従姉に驚く響也。
そのリアクションに満足したように、なまえはニコニコと会話を続けた。

「今日も元気にヘタレてる〜?」
「あのなぁ!久しぶりに会ったと思ったらいきなりそれかよ!マジ性格わりぃな…!」
「あっ、かなでちゃんもいる〜お久しぶり〜!ますます可愛くなったねっ!」

響也の抗議もどこ吹く風で、なまえはその後ろにいたかなでにも声をかけた。

「わぁ!なまえ姉久しぶり!なまえ姉も綺麗になったね〜!都会の人って感じだぁ!」
「ふふ〜そんなことないって〜」
「そっちから振っておいてガン無視かよっ!!!」

そう響也が突っ込んだところで、女同士の会話に突入したなまえとかなでの前では無力だった。


しばらくすると会話がひと段落したのか、なまえが響也に向き直った。

「響也は相変わらず、元気にヘタレてそうね〜」
「またそれか!お前は相変わらずムカつく奴だなっ!」
「まっ、年上に向かって口が悪いこと!お姉様は悲しいわっ!」

わざとらしく、しくしくと泣いてみせるなまえ。

「なにがお姉様だ!!」
「あら、少なくとも従姉ってことでお姉様なわけだし、『お義姉様』になら、なろうと思えば…」
「気色悪いからやめろ!!!」

最後まで言わせないとばかりに言葉を遮る響也。
もともと、律となまえは何故かはわからないが気が合うようだし、あの兄なら、言いくるめられて気づいたら…、なんてことになりかねない。

「あっははっ!やっぱり響也はおもしろ〜い♪」
「お前のは『オレで遊ぶのは面白い』だろうが!!」
「あれ〜、バレてたの〜??」
「あ〜の〜な〜〜!!!」
「ふふふっ」

響也となまえの会話のテンポのよさに、隣にいたかなでは笑みをもらした。
なまえが大学進学で地元を離れ、東京に行くまでは毎日のように見ていた光景だ。
なまえがこういった態度を取る相手はとても少ないことも、響也が本気で嫌がってはいないことも、かなでは知っているのだ。

「なに笑ってんだよかなでっ!」
「だって、響也も嬉しそうだし。変わらないなぁ、って」
「どこが嬉しそうなんだよどこが!!!」

お前も敵か!と言わんばかりの響也に、かなではますます笑みを深くした。
それを見て、なまえも笑う。

「あはは、2人も変わんないよね〜ほんと!でもちゃんと、変わるとこは変わってるみたいでお姉さんは安心ですよ。うんうん」
「何がだよ、意味わかんね…!」


ひとしきり笑った後、かなでが飲み物を買いに行ってくるね、とその場を離れた。
なまえはかなでに小銭を渡して、近くにあったベンチに腰をかけた。

「響也〜ちょいちょい」

そう言って手招きをすると、響也が身構えて後ずさった。
どれだけ警戒してるんだ、となまえは苦笑してしまう。
…小さい頃に、面白がってプロレス技の実験台にしていたせいだろうか。

「な、なんだよ…」
「そんなに身構えなくてへーきだってば。ほら、隣に座る!」

しぶしぶ、というか、恐る恐る、というか。
警戒は解かないものの、響也が同じベンチに座ると、なまえはずずいと間を詰めて、響也に耳打ちした。

「かなでちゃんとは進展あった?」
「うぐっ………!!!!」
「あらら……って、まぁ予想済みだけど。ん〜…そうだなぁ」

もったいぶって、なまえは話し出す。
そして、びし!と響也に指を突きつけた。

「ずっと一緒で、安心してたわけよね…まぁ律は別として。地元にいるときは、周りはみんな、響也とかなでちゃんが幼なじみで、ず〜っと2人一緒なのを見て知ってたわけだからねー。変なお邪魔虫も沸かなかったわけよね。でもいざ横浜来たら、かなでちゃんの方がしっかりしてるわ、気付いたら周りはライバルだらけだわ…ってとこ?」
「な、ななな、なんでわかるんだよ!?」

図星を指されるなんてレベルではなく、まるでずっと見られていたかのような分析に、響也は顔を青ざめる。

「いやぁ、なんとなく?」

(…な〜んて、実はさっき律に会ったし、お母さん経由で色々話聞いてんだけど。ここは面白いから黙っておくに限る!)
とは言え、響也のパターンはわかりきっているので、当てずっぽうでもこのくらいの分析はできたのだが。
なによりかなでちゃんは可愛いから、十分起こり得る状況だと思う。

そんなことを考えているそぶりは見せずに、しれっと話し続けるなまえ。
そして、ニヤリと笑って追い討ちをかける。

「幼なじみって立場に甘えてると、泣きをみるよぉ?」
「〜〜〜〜〜〜!!!!」
「ふふ、頑張れ青少年!若いうちなら、多少の過ちは許されるよ!多分ね!でもかなでちゃん泣かしたら、私がガチで響也を泣かす!!いや泣かすどころじゃ済まないね!」
「なんだそれ!そしてそんな変なアドバイスはいらねぇっ!!」
「ふーん………具体的なアドバイスが欲しいの?お姉さんが教えてあげようか?」

なまえが声のトーンを落として、上目遣い気味に響也の顔に自らの顔を近づけると、今度は顔を真っ赤にする響也。
そんな反応がなまえを加速させるということを学習しないところが、実に響也らしい。

「な、なななな…」

(フフ…今だっ!)
なまえはポケットからスマホを取り出し、慌てる響也を捉えた!

カシャシャシャシャシャ!!!!!

「あーーーはっはっはっ!!!!顔真っ赤!!!!!何想像しちゃってんのよ、スケベ〜〜〜!!!」

なまえは大笑いして涙を流しながらも、撮った写真を確認し、「バッチリ撮れてる〜♪」と上機嫌だ。
その一連の流れについていけなかった響也が数テンポ遅れて、ようやく声にならない声を上げた。

「〜〜〜〜〜〜〜っ………!!!」
「初めてはかなでちゃんのためにとっておきなよ♪」
「ふ…ざけんなーーー!!!!お前今写真撮っただろ!!!しかも連写!!!!!!消せ消せ消せ今すぐ消せ一刻も早く消せーーー!!」
「やぁだ♪」

掴みかかってこようとする響也をあざ笑うかのように、スマホを胸ポケットにしまう。
ここなら、落とさない限り絶対に取られない確信があるのだ。

「ふふふ、取れるもんなら取ってごらんなさ〜い!」
「ちくしょーきたねぇぞ!!!!マジありえねえ……!!!」
「知能犯と言って欲しいわ〜♪別に、触られたって通報したりしないわよぅ?取ってみる〜〜〜?」

わざとらしく胸を張ってみせると、響也は悔しそうにうめいた。

「うぐぐぐ………」
「そんなに胸を見つめるなよ、青少年ー」
「ちっがーーーーーう!!マジでお前性格悪すぎる!!データを消せぇぇ…!!」
「んふふ〜やーでーすー!」

これで、今日の目的は充分果たせたっ!!とご満悦のなまえ。
対照的に、怒り心頭の響也。
やられたことに加え、どうにも手が出せず、どうしようも出来ない悔しさで地団駄を踏み鳴らす勢いだ。

「あっ!かなでちゃん戻ってきた!ねーねー聞いて!響也ったらね〜〜〜」
「え、なになに?どうしたの?」
「だぁぁぁーーーー!!!やめろぉぉぉおお!!!!」
「あははーたっのし〜♪響也の気苦労は、まだまだ続くのでありました。ちゃんちゃん」
「お前のせいだろーがーー!!!もう帰れーーーーーーーーーー!!!!!」




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