いつだって1人じゃない



「神谷に」
「カミヤに」
「神谷さんに」
「かみやに」

「「「「散歩番組へのオファー!?」」」」

おお…ハモった。すごい。

Café Parade全員が揃った打ち合わせの場で、幸広くんに来た仕事の相談をすると(同じユニット内なので、情報共有についてはセーフってことで!)案の定本人以外が立ち上がって声を上げた。


なお、本人は「そんなに驚くことかい?」と、通常運転だ。
それでこそ幸広くん、である。

「しかもその日、私が地方出張だから付き添えなくて…平日だから巻緒くんと咲ちゃんは学校があるし、荘一郎くんとアスランくんも別の仕事が入っているっていうね。どうしたらいいと思う?」
「社長は?」
「海外で仕事なんだって。賢くんも、抜けられない授業があるらしくって」
「他ユニットの方々にまで迷惑をかけられないですしね」
「さすがに、スタッフさんたちも慣れているでしょうし…大丈夫じゃないですか?」
「いえ、念には念を入れておかないと…なにせ神谷ですから」
「みんな心配性だなぁ。俺なら大丈夫だよ」

本人を置いてけぼりにしつつ、みんなでああでもないこうでもないと相談する。
「できるだけ目立つ服装で」「GPSトラッカーを複数持っていく」「スマホに位置情報アプリを仕込んで、定期的にみんなで確認する」などなど…

不安だとあれこれ言いつつも、毎回違うゲストが散歩をしながら、訪れた街の人たちと交流するという内容だから、幸広くんにぴったりな番組だと思ってる。
断りたくはない。
なので、出来る限りのフォローをするっきゃない…!



…長い話し合いの甲斐あって、なんとか方針、というか準備するものは洗い出せた!
みんなに相談してよかった!
私としては、覚悟が決まった、という感じだ。
あとは準備を万端にして、最終チェックはアスランくんにお願いをして…!
既に把握してもらってはいるようだけど、スタッフさんにも出来る限り、幸広くんの迷子癖はしっかり伝えておこう。

「幸広くん!」
「なんだい?プロデューサーさん」
「当日付き添えなくて申し訳ないけど!頑張ってきてね!!あとちゃんと帰ってきてね!!」
「ははっ、もちろんだよ」



〇〇〇



そして、本人以外がやきもきしながら1日を過ごしつつも、無事番組収録は終わり――
放送はリアルタイムでみんなで見られることになったので、事務所に集合した。

幸広くんと荘一郎くんが用意してくれた紅茶とお菓子をお供に、TVの前で姿勢を正す。

この番組は収録で、本人もこの場にいるのだから、緊張するようなことはないはずなんだけど…
何とも言えない緊張感がこの場に漂う。
みんなも真剣だ。

せっかくだからネタバレ禁止ということで、幸広くんには「当日あった事を誰にも内緒にしておいてほしい」と伝えてある。
幸広くんは笑って快諾してくれたので、みんな中身を知らないはず。

…私は多少、当日のSNSチェックで目撃情報を目にしたりしてしまったが。
それでは中身は全然わからなかったし。うん。




開始まであと少し。
なんだか無性に喉が渇いて、幸広くんの紅茶を飲み干した。

…するとほどなくして、TVから軽快なBGMが流れ、番組のロゴが表示される。

自己紹介と、この回に回る場所の簡単な説明が入り…
画面の中の幸広くんは、笑顔で踏み出した。

「では、行きましょう!」



〇〇〇



EDが流れ出すと、みんなの緊張がふっと緩んだ。

「散歩番組のはずだし、ここ最近で一番ハラハラして見てしまったわ…」
「う、うむ…我もだ」
「なんだかどっと疲れましたね」
「当日も、ずっとソワソワしちゃってたよねー」
「無事終わった連絡をもらった時は、ほっとしました」

みんなして、笑いながら頷きあう。

「1時間番組ですけど…だいぶ編集されてますよね?」
「そうだねえ、確かこの日は8時集合で20時解散だったから…」
「は、半日…!?スタッフさんの苦労が偲ばれる…!!」

付き添えなかったから、収録直後にお礼の連絡はしたけど…
改めて、連絡しなくては…!!

「でも、すっごくかみやらしさが出てて素敵な番組だったと思うな!」
「そうですね、困っているおばあさんを助けたり、迷子になったと思ったら意外な名所にたどり着いて、さっきのおばあさんのご家族に会ったり…」
「この番組はたまに見ますが、かなり異色の回になったでしょうね」
「さすが我が同胞団の長、カミヤだ!」
「ありがとう、みんな。番組には収まりきらなかったけれど、とても楽しい収録だったんだ」

そこから、幸広くんの思い出話に花が咲き。
番組には入りきらなかった色んな話を聞くことができた。
幸広くんが撮った写真を見せてもらったりもした。
許可はもらってるそうだから、あとで事務所のSNSにあげようっと。

今度はみんなで、その街に行ってみようという話にもなったし、充実した時間になったと思う。
…あと、重ね重ね、スタッフさんには感謝を伝えておこう。




そして――
我々の感想と同じく、放送は好評だったらしく。
幸広くんは、2回目のゲストに呼ばれたのだった。

…次はちゃんと付き添えるようにスケジューリングしますから!!

………体力もつけておかないと、かも…

「神谷さんの収録、過去最高の移動距離でした!」とスタッフさんに言われたことを思い出し、私は再び覚悟を決めたのだった――




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