思い出と約束を重ねて



打ち合わせのために事務所にやってきた、Beitの3人。
早めに打ち合わせが終わり、休憩のためにお茶を入れようとすると、ピエールが『ご自由にどうぞ』と書いてある段ボールを見つけ、興味津々で箱の中を覗いた。

「恭二、みのり!これ、なに?」
「どうした、ピエール?…これって駄菓子、だよな?」
「そうだね…でも、なんだか偏ってるような…」

箱の中身をいくつか手に取り不思議そうに見る3人に、プロデューサーが声をかけた。

「それね、全部知育菓子なんだよー」
「チイク、ガシ?」
「えーと…遊び感覚で作れるお菓子、かな。主に子供向けのもので、工作や科学の実験みたいなことができたり…作業の中で創造力を育てられる、みたいな」
「コーサク…実験…?」

説明をされたものの、ピエールの頭上に「?」が浮かぶ。
うまい説明が思いつかないプロデューサーは「じゃあ」と、提案をした。

「試しにやってみたらどうかな?もう打ち合わせは終わったし、この後時間があるなら。どれでも好きなのやってみていいよ」
「ホント?ボク、やってみたい!やっていい?」
「もちろん、いいよ!」
「俺も付き合う。こういうの、やったことないし」



まずは一通り見て見よう、ということで、箱の中身を全部出してみた3人。
カラフルで楽しそうなパッケージが机の上に並ぶ。

「うわー懐かしい!このCM有名だったよねー!」
「そうそう、魔女が出てきて、テーレッテレー!って…」

みのりとプロデューサーがそう盛り上がっていると、恭二が首をかしげた。

「…なんすかそれ?」
「マジョ、出てくる?魔法かける?」
「うっ!ピエールはともかく、恭二が知らないとは…!」
「これがジェネレーションギャップ…!」

ぐぅぅ、と精神的ダメージを負ったらしい、みのりとプロデューサーが胸を抑えて呻いた。


…なんて会話を繰り広げつつ、3人は挑戦する商品を決めた。

「ボクは、これでたこ焼き、作る!楽しみ!」
「俺はプロデューサーとも盛り上がったこれにするよ。『大人の』っていうのが気になるし」
「俺はこれで…これなら、そんなに難しくないかなって」
「ふむふむ、恭二のはあれだね、お祭りでいう『型抜き』的なやつね」


トップバッターは、その恭二だ。
挑戦するのは、恐竜の化石を取り出すチョコレート版型抜きである。

「まずは普通に袋から出せばいいんだよな…?」
「うん。あ、そこで割らないようにね」
「さすがにそれは…」

そう言いながら袋を開け、出てきたものを確認する恭二。
すると…

「ええと…これは?リストにないぞ」
「このシークレットじゃない?わーさすが恭二。もってるぅ!」
「どういう意味だよ…って、これ、この中で一番難しいってことだよな…」
「恭二、ファイトー!」

ピエールの応援に後押しされ、恭二は慎重に作業を進めていった…が。

「……あ!」
「ありゃあ…尻尾割れちゃったね」
「あと少しと思って油断した…」
「残念…」
「はは、お疲れ様」

恭二を労いつつ、プロデューサーはチョコの欠片をひょいと摘まんだ。

「じゃあこれは食べちゃお〜」
「そっか、お菓子だもんな」
「そうそう。遊べて食べられる。それが知育菓子ってこと〜」
「おおー!ボク、ちょっとわかった気がする!」

話しながら、もぐもぐと欠片を分け合う4人。
4人で食べるとあっという間になくなってしまったのだった。



「じゃあ、次は俺がやってみようかな」

みのりが作るのは『大人の』と書かれた、練って作るお菓子である。

「『大人の』って、何がなんだろうな」
「味じゃないかな〜?『プレミアムな味わい』って書いてあるし。さらになんとカルシウム入りだって」
「企業も色々工夫してるんだね」

話ながらみのりは袋を開け、トレーを準備した。

「うーんと…まずは、1番の粉をここに入れて…」
「お水は用意してありまーす」
「ありがとう、プロデューサー。ここに水を入れて、よく混ぜるっと…」

くるくるとかき混ぜる様子を、キラキラした目で見るピエールに気付いたみのりは、がばっとプロデューサーを見た。

「プロデューサー!」
「大丈夫、写真は撮ってるよ」
「ありがとう!あとで送ってね!!」
「もちろん。さっきの恭二のも撮ってるから、SNSにも使わせてもらうからねー」
「げ、マジか」

みのりが作業に戻り、2番目の粉を入れ混ぜていくと…

「色が変わってきたね」
「これが、もうちょっと経つとね〜…」
「わぁ!ふわふわになった!」
「へえ」

恭二とピエールのピュアな反応に、みのりもプロデューサーも満足げだ。

「次はソースかな…これも混ぜて…トッピングをかけて…よし、これで完成かな」
「これは、どうやって食べる?」
「これはね、こっちのふわふわにソースをつけて…はい、あーん」
「ありがとう、みのり!あーん!」
「…はい、OKですバッチリ撮れました」
「ん〜〜!!おいしい!」
「はい、次は恭二だよ」
「えっ!?自分で食べますよ」
「いいからいいから」

みのりの圧に負けて、恭二も照れながら口を開けた。
もちろん写真はバッチリである。

「次はプロデューサー!あーん」
「いやいや、先にみのりさんが食べてくださいよ…あ!いいこと思いついた!」

みのりに対して『恭二からあーんをさせつつ、写真を恭二視点で撮る』という『あーんさせている風写真』を思いつき、プロデューサーが提案すると、みのりはノリノリで快諾した。
恭二は若干ノリについていけないながらも、プロデューサーの指示通りに動いた。

「ふふふ〜〜!いいのが撮れた〜!!」
「見せて見せて!……いいね!さっすがプロデューサー!」
「ボクも見たーい!」

みんなが盛り上がっている間に、恭二は残りのお菓子をかき集めた。
そして、プロデューサーに差し出す。

「プロデューサー。あと少ししか残ってないけど、ほら」
「え、恭二があーんしてくれるの?じゃあそっちの視点の写真ももらっちゃお〜!」
「マジか…」
「ほらほら、照れてないで目線はこっちで〜…OK、撮れたよ〜!」
「ちゃんと食べろよ」
「むぐ!……なるほど、これが大人の味…!」




そして「最後はボクの!」とピエールが掲げたのは、本物そっくりのたこ焼きが作れるお菓子である。

裏面に書いてある工程の数が、前の2つと段違いである。

「これはなかなかに難しい…というか簡単だけど、手間がかかるやつか〜」
「タコから作るのか?…すげえな、これ」
「ボク、がんばる!」
「俺たちも手伝うね」

トレーを切って準備し、まずは中に入れるタコ作りである。
粉に水を入れて練ると、粘土のようになった生地を、型に押し付けタコの吸盤を再現し、たこ焼きに入れる用に切っていく。

「んしょっ…どう?タコ、見える?」
「見えるよ、ピエール!すごいね!」

プロデューサーも写真を撮っているが、写真撮影をするみのりの手が止まらない。
見慣れた光景ではあるが、プロデューサーと恭二は目を合わせて笑った。


作業は続き…マヨネーズやソースも、同じく粉に水を入れて混ぜて作っておく。

生地も粉と水を混ぜて、型に流し込み、そこに先ほど作ったタコを入れ、電子レンジで30秒ほど温める。
ピエールは、慎重に電子レンジをセットした。

「うまくできるかな?ドキドキ、ワクワク!」

ピエールがワクワクを抑えきれない様子で、レンジを見つめる。
レンチンが終わったものを取り出すと…

「わぁ〜!」
「生地がふっくらしてそれっぽくなってきたね〜!」

出来上がったものを作っておいた舟のお皿に盛り付け、ソースを塗り、マヨネーズをかけて…

「かんせーい!!」
「わぁ〜ほんと本物っぽい!ミニチュアのたこ焼きって感じ!」
「ボクも写真撮りたい!」
「カエールも一緒に撮ろうか」
「うん!」


そして撮影も終わり、実食タイムである。
まずは功労者のピエールから口に運ぶ。

「たこ焼きの味、する!…でも一瞬でなくなっちゃった…」
「はは、このサイズだもんねぇ」
「プロデューサーさんも、どうぞ!」
「ありがとー…んむ。確かにたこ焼き味!」
「はい、みのり!」
「あーん」
「恭二も!」
「お、おう」

これも作業時間の割に一瞬で食べ終わってしまったが、ピエールが満足そうだったので、3人はほっこりとピエールを見つめた。

「チイクガシ、楽しかった!またやりたい!」
「よかったよかった。まだあるから、また時間ある時にやっていいよー」
「今度は本物のたこ焼きも作ろうね」
「うん!」
「そっすね」

Beitとプロデューサーの4人は、こうしてまた思い出と約束を重ねたのだった――




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