とある昼下がり。
「んんーーーーー！！」
PCから体を離して伸びをすると、肩や首がバキバキと鳴った。
うー…まだ全然書類の処理終わらないけど、ここらへんでいったん休憩しよ！
お腹も空いたし！
…でも時間ないし、コンビニ行くのも面倒だから、いつものゼリーでいっかなー。
そう思って、事務所の冷蔵庫からゼリーを取り出そうとしていると、スーパーの袋をぶらさげた冬馬がやってきた。
「まーたゼリーで飯済ませようとしてんのかよ」
「うっ！バレたかー」
「ちゃんと飯食べろよ」
「時間がなくて、つい…」
たはは、と笑ってごまかすと、冬馬は呆れ顔でため息をついた。
冬馬たちに、何度か同じ注意はされてて、わかってはいるんだけど…
不健康なプロデューサーでごめんよ。
「そんなことだろうと思って…材料買ってきたから、今から作ってやる」
「えっ、いいの！？」
「プロデューサーに倒れられたら、俺たちが困るからな」
そう言い終わると、冬馬はぷいっと後ろを向いた。
…なにこのツンデレ！
「と言っても、簡単なやつだけど…」
「冬馬の手料理ならなんでも嬉しいよー」
「…そうかよ」
お、ちょっと照れてる。
冬馬はほんとわかりやすいなぁ。
「仕事まだ終わってないんだろ？出来上がったら持ってくから、仕事してていいぞ」
「え、やだ、せっかくだから冬馬の料理見てたい」
「…んな大したもんじゃないっての」
そんなことをブツブツ言いながら、冬馬は料理をはじめた。
どうやらパスタのようだ。
邪魔にならないように、距離を置いて座り、冬馬の様子を見つめる。
なんだかんだ言いつつ、手際いいよなぁ。
動きに迷いがない。
あ、何かに使えるかもしれないから写真も撮っておこう。
ふふ、いいねぇ、かっこいい姿だわ。
そうだ…Jupiterに料理系のお仕事も持ってきたいな。
冬馬が作って、北斗がサポートと解説して、翔太が食べる…みたいな？
冬馬は勝負事が好きだから、対決系でもいいかもしれない。
よーし、今度企画書作ろ！
とかなんとか考えているうちに、いい匂いが漂ってきた。
ぐるるる、と私のお腹の虫も待ちきれないようだ。
「よし、完成だぜ！」
「わーい！」
どん！と私の前に置かれたのはナポリタン！
うーん、具材が大きめ＆多めで、ベーコンが厚い！THE男の料理って感じだね！
よだれ出そうだよー
自分の分も作っていた冬馬が座るのを待って、手を合わせる。
「いただきまーす！」
「おう」
用意してくれた粉チーズをかけて、くるくるとフォークで巻いて、口に運ぶ。
「おいしーー！私、冬馬の家の子になるわ」
「ぶっ、なんだそれ！」
「だってそしたら、毎日こんな美味しいもの食べられるんでしょ？」
「それはまぁ…そうかもしれねえけどよ。それにしたって“子”って…せめて恋人とかよ…」
「えっ」
「えっ…いや！！な、なんでもねえよ！！！」
「そお？」
「いいから食べろよ！仕事あるんだろ！」
うっかり口を滑らせた（？）冬馬がナポリタンより真っ赤だ。あはは。
…にしても、絶対自分で作るより美味しいわ…餌付けされちゃう。
これは元気出るね！！
そして、私はぺろりと平らげてしまった。
ゼリーだけのつもりだった胃袋も喜んでるわっ！
「ごちそーさまでした！ふーお腹いっぱいー」
「お粗末様」
「美味しいご飯をありがとーね」
「…このくらいなら、また作ってやる」
おぉ、また冬馬のデレが来た！
このチャンスはちゃんと生かしますよ！
「ほんと？じゃあ次は、オムライス食べたーい」
「早速リクエストしてくるのかよ！」
「うへへーだって冬馬の作るオムライスが食べてみたいんだもん」
「…しょうがねえな」
「わーい、やったー冬馬だいすきー」
「なっ！そういうことを軽々しく言うな！」
「なんでー？事実だもんー」
「っ…！！」
再び真っ赤になる冬馬。
ふっふっふっ、御しやすいのぅ。
しかし…よそで悪い人に騙されないか、お姉さんちょっと心配ですよ？
「まぁまた気が向いたらでいいからさ、その時はお願いね。あ、お皿は後で洗っておくから、水につけておいて」
「今日は俺、夕方からの仕事だけだし、片付けまでやっとく。あんた、忙しいんだろ？」
「それはまぁ…でも、そこまでやってもらうのは、さすがに気が引けるよ…」
「いいから。その分俺たちに仕事持って来てくれよ」
「はは、なるほど、了解しました。じゃあ悪いけど、仕事に戻るね！ありがとう、冬馬」
「おう」
よし、仕事のつづき、頑張るぞー！！
新しく作りたい企画書も増えたしね！！
冬馬のご飯パワーで、その日の仕事はすいすい進んだ。
ちゃんとご飯食べるって大事だなぁ。
またご飯作ってくれたらうれしいなー
…なんて思っていたら。
その日以来、冬馬は頻繁にご飯を作ってくれるようになった。
胃袋を掴まれるって、こういうことだろうか。
そんな今日も冬馬はご飯を作ってくれるそうだ。
今日のご飯も楽しみなぁ。
あと、とっておきの発表もしなくっちゃね。
…Jupiterの料理番組決まったよ、ってね！