天使の警告 悪魔の誘惑



Wの2人と事務所に帰る途中、いつものようにコンビニに寄ることになった。
その悠介と享介は、2人でお菓子を楽しそうに物色中である。
…私は、間近に迫る健康診断に備えて、付け焼刃ではあるがダイエット中なので、食べ物は見ないように…と、雑誌コーナーを眺めていた。
あれ、この雑誌チェックしてたっけ…事務所戻ったら確認しなきゃ。

しばらくすると、2人がこちらにやってきて、私を引っ張った。

「監督ー!こっち来て!」
「えー?」
「ほら、早く早く!」

2人に連れられ渋々向かうと、そこはデザートコーナーだった。
そして目に入ってきたのは、私の大好物のプリン…!
しかも、期間限定商品が最後の1個…!!

うぅぅぅ、2人にも健康診断だから…って伝えてあるのに!何の嫌がらせだ!
すると、悠介と享介は私の背後にまわり、左右から囁いてきた。

「ダメですよ、健康診断に向けて、ダイエット中ではないですか。去年の結果を忘れたのですか?」

と、エンジェル享介が私を諌めるが…

「えーラス1だよ?期間限定だよ?この機会を逃したら、食べられないかもしれないよ?1つくらい、へーきへーき!」

と、デビル悠介が私を惑わしてきた…!

うぅぅぅぅぅぅ…さてはこれがやりたくて、私を呼んだね…!?
前にやったお仕事が見事に生かされていて、プロデューサーとしては喜ばしい限りですけどね、こんなところで使わないで!!

くっ……テレビでも『売り切れ続出!』と話題で、プリン好きの私としては、ぜひとも試したい商品ではある。
しかし、去年健康診断の結果を見て真っ青になった私としては、今このタイミングで食べるわけには…!
どうしたら……!!!


――しばらくの葛藤ののち。

「………デビルに負けた」

そう呟く私の手には、ぷるぷると揺れるプリン。いいんだ。これくらい、いいんだ。
大丈夫、夕飯減らすから。早く寝てしまえばいいんだ。

「やった〜オレの勝ち〜♪」

欲望に忠実ですいません。ていうかこれに勝ち負けとかあったの?
賭けとかしてたらキレるぞ。
じとーっと2人を恨みがましく見つめると、享介が笑って言った。

「大丈夫、カロリーは消費すればいいんだから!」
「次のオフ、監督も一緒にサッカーしようぜ!」
「……お手柔らかにお願いします」
「監督もついていけるメニューを考えておくから、任せてよ!」

享介のセリフは頼りがいがあるけど…なんだかんだスパルタだからなぁ…筋肉痛が怖い。
でも自分だけでやるよりは、きっとマシだよね。

色々と観念して、レジに商品を持って行こうとすると、悠介がひょい、と私の手からプリンを取った。

「これはオレに奢らせて!」
「え?」
「へへ、オレが監督のこと惑わせちゃったからさ!」
「…いいの?」
「もっちろん!…オレの方選んでくれてうれしかったし!」

優しい悪魔もいたものだ。
少し照れつつ、笑ってこんなことを言われては、さっきのデビル悠介を許してしまう。
…つくづく甘いなぁ、私。
もっと自分にも、担当アイドルにももっと厳しくしていかないと…!


……とりあえず、明日から。




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