可愛いのは君のほう



とある日。お弁当を食べようとしていたら、ピエールがやってきた。
みのりさんも恭二もいないらしく、一人だった。珍しい。
…あ、護衛さんはいるみたいだけど。

「プロデューサーさん、おひるごはん?」
「うん、そうだよー」
「お弁当?一緒に食べてもいい?」
「もちろんだよー。ピエールのお昼ご飯はなぁに?」
「今日は、新しくできた、パン屋さん!お好み焼きパン、おいしそう!」

そう言って、嬉しそうにビニールを掲げたピエール。
なるほど、コナモノパンか。

「そのお弁当は、プロデューサーさんの手作り?」
「うん、そうだよー…と言っても、残り物とか作り置きを詰め込んでるだけで…あ、おにぎりはちゃんと今日朝作ってきたけどね」

そう言って、ころんとおにぎりを見せると、ピエールの目が輝いた。

「おにぎり、カワイイね!」
「え、そう?…小さいからかな?私、手が小さいから…」

何の変哲もないおにぎりなので、たぶんサイズ感のことなんだろう。
私は身長が低いうえ、どうやら同じくらいの身長の人に比べても手が小さいらしいので、どうしてもおにぎりを握ると小さくなる。
おにぎりは、数を握ればいいだけのことだから、別にいいんだけど…手袋とかね。大人用のだとぶかぶかなのよねー…

「手、ちいさい…そうなの?」
「うん、ほら」

私はわかりやすいように、ピエールの掌に私の掌をあわせた。
すると、サイズの違いが如実にわかる。
…私の手が小さいことを差し引いても、ピエールの手、思ったより大きいかも。

「ホントだ!プロデューサーさんの手、小っちゃくってカワイイ!」
「か、可愛くはないと思うけど」
「ううん、カワイイよ!」
「あ、ありがと…そういうピエールは、案外大きいんだね」

ピエールはストレートに褒めてくれるから、照れてしまう。
第一、可愛いのはピエールの方だよ。
可愛いって言ってるピエールが可愛いよ。

「ボク、男の子だから!」
「あは、そうだね」

確かに、事務所ではかわい…華奢な方ではあるけれど、しっかり男の子の手をしていた。
手が大きいと背も高くなるらしいから、ピエールはもっと大きくなるんだろうなぁ。
可愛さからかっこよさに変化していくのか…楽しみな気持ちが大きいけど、やっぱりちょっと残念な気持ちも抱いてしまう…
…ピエールが大きくなった時のBeitのことまで考えてみたりして。
そんな妄想から帰ってきてもまだ、ピエールはじっとおにぎりを見つめていた。

「…おにぎり、食べる?あげるよ」
「!!…いいの?」
「うん、多めに作ってきてるから大丈夫だよ」

事務所で食べてると、誰かしらに食べられちゃうことが多いんだよね…成長期の男子が多いから…
欲しいと言われて、あげないというわけにもいかず、結局自分の分が足りなくて間食が増えてしまい、出費もかさみ…
そんなわけなので、最近は多めに作ってきて、余ったらおやつや夜食代わりにしているのだ。

「やふー!アリガトウ!プロデューサーさん!!代わりにボクのパンもあげる!」
「ありがとう、でも大丈夫だよ。元々多めに持ってきてるから。ピエールはたくさん食べて大きくなって」
「ホントに、いいの?」
「うん、安心して!あ、中身は何がいい?梅干しとたらこと…そうだ、ピエールの好きなツナマヨあるよ」
「!!」
「ふふ、どうぞ」

ピエールのわかりやすくて可愛い反応に微笑ましさを感じながら、私はツナマヨのおにぎりを差し出した。
おにぎりだと、作業しながらでも食べられるから、ウィンナーとか卵焼きとか、おかずを埋めて作っちゃうことも多いんだけど…
今日は、比較的時間があったから、まともでよかった。

「アリガトウ!いただきます!」
「どうぞどうぞ」
「……わ!プロデューサーさんのおにぎり、すっごくおいしい!」
「そ、そうかな?ありがとう」
「コンビニのおにぎりと、ぜんぜん違うね!かわいくておいしい、すごい!」

今までここまで褒め倒されることがなかったので、反応に困ってしまう。
特にテクニックとかないし、普通のおにぎりなんだけどな。

「うーん、保存料とか入ってないから、かなぁ」
「ボク、プロデューサーさんのおにぎり、大好きー!また食べたい!」
「え、そんなに?うん、わかった。また作ってくるね」
「やふー!アリガトー!約束、ね!」
「うん、約束」

可愛いピエールがそんなに喜んでくれるなら、おにぎりくらい、いくらでも作ってあげちゃうよー!
あ。事務所のみんなで、おにぎりパーティーをしてみても面白いかもね。
家によっておにぎりも色々あるっていうし。
…でもお米何キロいるのかな、というか炊飯器がいくつあっても足りなそう…

そんなことを話しながらピエールと食べたお昼御飯は、いつもの自作のお弁当なのに、なんだかとっても美味しいものに感じられたのだった。




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