「うー…」
闇の中から、ゆるゆると覚醒する。
…重たい。全身が、重たい…
やっとの思いで瞼を開き、起き上がると、体のアチコチが軋んだ。
「あ、起きた?Good morning、なまえちゃん!」
「ん…おはよ…」
「…と言っても、もう3時だけどネ!」
「え!!」
部屋に居た類にそう言われて時計を見ると、確かに時計の針は3時を差していた。
外は明るいので、深夜3時なわけはなく…
「起こしてくれてよかったのに…」
「You were enjoying a good sleep. 昨日無理させちゃったしね☆」
「……ソウデスネ」
悪戯っぽく笑う類。
おかげさまで、喉やら腰やら、痛いですもの、えぇ…
まだうまく働かない頭で、順番に記憶をたどる。
昨日は、仕事が終わってから、事務所のみんなで類の誕生日をお祝いして、二次会と称してS.E.M.と私の4人で飲んで…
お祝いだし、明日はオフだし、無礼講だー!と大いに騒いで、なんとか帰ってきたと思ったら、玄関に入った途端、類に襲われ…
汗でべちゃべちゃだから待って、と言ったら、場所がお風呂場になっただけで…ベッドに移動してからも…って、わあああ…
そこからは記憶が曖昧だけれど、とにかくいつにも増して、類が甘かったように思う。
言葉とか目線とか…その、いろいろ。
「The bath is ready!ゆっくり入ってくるといいよ!」
「うん、そーする…」
「お風呂まで連れて行ってあげようか?」
「のーせんきゅー」
「Oh…つれないなぁ」
昨日それですごい目に遭ったんだもの。私だって学習しますよ。
類の提案を断って、のろのろと立ち上がると、類が「ごゆっくり〜☆」と着替えまで用意してくれた。
げ、元気だなぁ…
服を脱いでお風呂場に入ると、なんと私の好きな入浴剤も準備されていた。まさに至れり尽くせりだ。
ここまでしてもらうと、なんだか申し訳ない。
原因は類にあるとはいえ、長時間寝入っていた分、あとで何か穴埋めしないとなぁ…
そんなことを考えながら身体を洗っていたら、赤い跡があちこちにあるのに気付いた。
もしかして、と鏡を見ると、首や鎖骨周りまで、すごいことになっていた。
…その跡を見ていると、昨夜の熱までぶり返してきそうだ。
いやいや!と慌てて頭を振って、冷静になる。
これ、半袖着れなくない…!?今日中に消えるといいけど…
もしかして、至れり尽くせりだったのって、これが原因じゃあ…
さすがに、類もそれなりに大人なので、いつもはここまでされないんだけど…なんだったんだろう、昨日は。
誕生日のお祝いでテンション上がってたのかな…?
あれこれ考えながら、ようやくお風呂から上がると、今度は飲み物とドライヤーを構えた類が待っていた。
「Please have a seat. さ、座って座って!」
「そ、そこまでしてもらわなくても…」
「俺がやりたいんだよ☆ね、いいでしょ?」
「そこまで言うなら…」
「Yeah!さぁどうぞ、Princess!」
座らされて飲み物を手渡され、それを飲み干すと髪を乾かしてくれた。
確かに、喉は乾いてたからありがたいけれど…なんだろう。なんというか…類からハートが溢れている感じ。
いつも愛を振りまいているタイプではあるけれど…今日は3割増し。いやもっとかも。
髪を乾かしてもらったら、次は「お腹空いてない?」と言われ、頷くと類特製のブランチが出てきた。
…類ってば、どうしちゃったの?
「ねぇ、なんだか昨日からおかしくない…?」
「え?Same as always!おかしくなんてないよ?」
「いや、いつにも増して…甘いというか…」
「Well…昨日、birthdayを祝ってもらって、改めて、俺ってなんてhappyなんだろう、って思ったから、かな?なまえちゃんのことも、もっともっとhappyにしてあげたい、って思ったんだ☆」
目の前に座る類は、ニコニコと上機嫌だ。
類の感情表現はストレートだから、いつも私は照れてしまう。
「そ、それは…ありがとう。でも…こんなに跡残すのは、やめてほしいなぁ…」
「Oh, sorry、次からは気をつけるよ。でも、たまにはこうやって、なまえちゃんは俺のものってappealしておかないとネ!」
「そんな心配してもらわなくても、私のことを好きなんて変わり者は、類くらいだから大丈夫だよ」
「No!そんなことないよ!You have a great charm!なまえちゃんは自分の魅力がわかってないよ!」
「え、えぇ〜…」
「…昨日もたくさん、なまえちゃんの可愛いところ、教えたでしょ?」
そう言って妖しく光る類の目に見つめられて、ぶわ、と顔に熱が集まる。
「や、やめて!わかりました!わかったから、この話終わり!」
「Why?もう1回、初めから伝えてもいいのに」
「大丈夫です、間に合ってます」
慌てて話をそらすように残りのパンをほおばると、類に笑われてしまった。
「…ごちそうさまでした。ありがとうね、類」
「You're welcome!」
「さてと…類に色々やってもらったから、今度は私がお返ししないとね。何かしたいことある?」
「Let me see…dinnerはなまえちゃんの手料理が良いな☆あとでLet's go shopping together!…それまでは、2人でイチャイチャしよう!」
「い、いちゃいちゃ…」
昨日のアレコレを思い出し、顔が赤くなり、思わず体が強張る。
正直、もう体がもたないよ…!
…そんな思いが伝わったのか、類は苦笑した。
「そんなに激しかった?」
「…えぇ、それはもう…」
「あははっ、Sorry。But、今はそういうのじゃなくて、ゆっくり過ごしたいんだ」
そう言って立ち上がると、類はゆっくりと私の手を引いて、ソファーへと移動した。
手を繋いだまま2人でくっついて座ると、類は満足げに微笑んだ。
「大勢でlivelyに過ごすのも、もちろん大好きだけど…たまには、なまえちゃんと2人っきりでゆっくりするのもいいよね♪」
「類がそんなこと言うなんて、珍しいね」
「I want you all to myself!俺だって、たまにはなまえちゃんを独り占めしたいのさ☆」
「あは、そっか。ありがとう」
繋いだ手を握り直されたので、私もしっかりと握り返し、頭を類の肩に乗せると類は嬉しそうに笑ってくれた。
少しは、類に気持ちを返せてるかな?
私は、類ほど感情表現が豊かではないから、時々不安になってしまう。
…けれど、きっと類にはそれもバレてるんだろうな。
「ねぇ、夕飯は何が食べたい?」
「そうだなぁ…今日はJapanese foodsな気分かな!」
「和食ね。昨日結構食べたし、飲んだし、胃に優しいものがいいかもねー…それじゃ、まずお魚を見て、それに合わせて他の献立考えようか」
「うんうん!一緒に考えよう♪」
それからその日は1日中、類のことだけ考えて…2人で、まったりと過ごした。
・・・・・・・・・
そして、眠る前にベッドに入ったところでようやく。
「隣に居られるだけで幸せ。大好き」と精一杯の気持ちを伝えると、類は珍しいものを見た、というように目を丸くして。
それから、ふるふると幸せを噛み締めるように顔を緩ませた。
「Thank you so much!もちろん、俺もだよ」
そういうと、おでこに柔らかいキスをくれた。
「これからもずっと一緒に、excitingでamazingな毎日を過ごそうね!それでたまには、今日みたいにゆっくりイチャイチャしよう?」
「ふふ、うん、末永くよろしくね」
「こちらこそ♪」
同じベッドの上だけど、昨日とは違って穏やかに微笑みあう私たち。
私たちを繋ぐ熱が変わっても、気持ちはいつも同じだから。
「Good night, sweet dreams!」
「類もね。おやすみ」
隣に大好きな類を感じながら、私は瞼をゆっくりと閉じた――