君の理想まであと1つ!



※ヒロイン不在です。


High×Jokerと、プロデューサーのとある打ち合わせの最中。
プロデューサーは、1人のメンバーの異変に気付いた。
…いつもであれば、一番活発に発言してくる四季が、変に大人しいのだ。

「…四季くん、今日はなんだか静かですね…何かあったんですか?」

力なく座っている四季に、プロデューサーが心配そうに尋ねると、隼人と春名が顔をあわせてぶはっ、と吹き出した。
夏来は心配そうに、旬は呆れ顔で、それぞれ四季を見る。
プロデューサーは、その様子に首をかしげた。

「…人が真剣に悩んでるのに、ひどいっすー!!」
「あはは、聞いてあげてよ、プロデューサー」

不満そうに口を尖らせる四季を、隼人が笑いながらフォローした。

「学校で何かあったんですか?」
「……今日、クラスの気になってる女の子が…なまえちゃん、って言うんすけど。そのなまえちゃんが、好きな男のタイプの話をしてて…思わず、聞いちゃったんっすけど…」

四季はしょんぼりとした口調で続ける。

「それで、聞いてたら…『かっこよくて』『優しくて』『嘘をつかなくて』『一緒に居ると楽しくて』『賢い人』って言ってて…ゼツボー中なんっす…」
「…な、なるほど。それで…」

プロデューサーもその可愛らしい悩みに思わず吹き出しそうになるが、すんでのところで耐えた。
本人はいたって真剣なのである。

「『一緒に居ると楽しい』はちょー自信あるっす!『優しさ』もクリアできる自信あるっす!なまえちゃんのためだったら、なんだってできちゃうし!なまえちゃんに『嘘』だってつかないっす!!……だけど、だけど!!!『賢い人』だけは、どうあがいても無理っす……!!!」

絶望のどん底、と言った風に、四季は机に突っ伏した。
その様子を他のメンバーは笑ったり、呆れたりしながら見ていた。

「『かっこよさ』はどうしたんです?」

と旬が呆れながら言うと。

「アイドルやってるくらいなんだから、クリアできてるんじゃねーの?なまえちゃんの好みかどうかは知らないけど」

と春名が軽く返した。

「うううう〜〜〜〜〜!!!ハルナっちひどい…!」
「あーごめんごめん」
「大丈夫…シキは…かっこいい…よ」
「ナツキっちの優しさが身にしみるっすーーー!!」

そんなHigh×Jokerのメンバーのやりとりを微笑ましく見守りつつ、プロデューサーはひらめいた、という風に口を開いた。

「ふむ…でも、逆に考えれば『賢さ』を手に入れることができれば、完璧にそのなまえさんのタイプ、ということですね」
「まぁ一応そういうことになるよな」

隼人が頷くと、プロデューサーは四季の隣に行き、四季の肩を叩いた。

「5つ中4つをクリアできてるんですよ!80%はクリアできてるんです!残り20%、あとは賢くなるだけじゃないですか!」
「え…」
「『かっこよさ』は天性のものもありますし、『優しさ』や『嘘をつかない』こと、『一緒に居ると楽しい』も、人格の根幹に根付くものですから、持っていない人がそれを望んでも、なかなか身に付くものではありません。けれど『賢さ』は努力すれば、その5つの中で一番たやすく手に入るものなんです!四季くんなら、きっとできます!!」
「……そ…そっかーー!!オ、オレ、勉強頑張るっすーーーー!!」

そういうと立ち上がって、四季は吠えた。
そんな四季を見て、プロデューサーは満足げにうんうんと頷いた。

「プロデューサーすげー…」
「まったく…四季くんは単純で羨ましいです。そんなにうまくいくわけないでしょう…」
「まあ、勉強のモチベーションになるならいいんじゃないか?」
「はは、いつまで続くだろーな」
「ずっと続いてくれるといいですね。というか、春名さんも人の事笑ってる場合じゃないでしょう」
「はいすいません…」
「シキ…がんばって…」

その後しばらく、S.E.Mや他ユニットのメンバーに、熱心に勉強関連の質問をする四季の姿が目撃され…
四季の情熱の理由は、事務所メンバーの全員が知るところとなり、大人たちに生暖かく応援されるのであった。

そして、その直後の定期テストで奇跡的な点数を叩き出し、呆れていた一部のメンバーも、その情熱を認めざるを得なかった――

「これで!なまえちゃんの理想の男になれたっすよねー!?オレ、告白してくるっすーーー!!!」




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