「お姉さん。起きて。…起きてってば、」
肩を揺すられ目を覚ませば、ガランとした車両。向かいの窓ガラスには、起き抜けのぼけっとした顔の私が写る。それに追い討ちをかけるよう流れた終点のアナウンスと、少し心配そうにこちらを見下ろすお兄さん。
ようやく事態を飲み込んだ私は、勢いよく立ち上がった。
「ぅおっ!」
『やばい!寝過ごした、!』
一体、ここはどこなんだ。
慌てて下車して駅名を確認すると、今まで降りたことのない地で落胆した。
仕事終わり、終電に飛び乗った私は疲れてそのまま眠りこけてしまい、1度も起きずに終点まで来てしまったのだ。
一刻も早く家へ帰りたかったのに、なんてこと…
「実は俺も寝過ごしちゃったんすよね。」
一部始終を見ていたお兄さんが、苦笑いしながら私の方に歩み寄る。
『あ、そうですか…。お互いやらかしちゃいましたね。』
こんなところからタクシーで帰るとなると、いくら掛かるのか。いっそビジネスホテルかどこかに泊まった方が安いのか。
1人悶々としながら改札を通り抜けると、同じく隣を歩くお兄さんが立ち止まった。
「あ、居酒屋発見。」
お兄さんが指した先には、見慣れたチェーン店の看板。まだ光ってる所を見ると、営業しているようだ。
…なんか、お腹すいた。
「始発の時間までよかったら一緒に飲みませんか?」
「……え?』
「俺もどうせ帰れないんで。こっからタクシーとかいくらかかるのかわかんないし。これもなんかの縁ってことで!」
くしゃりと笑った顔に、何も考えず思わず頷いてしまった私。やばい、と思った時にはすでに遅くて、じゃあ行きましょう、と歩き出したお兄さんの後ろを慌ててついて行った。
何やってんだ、私は。
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